1998年に発売され、オーソドックスながら軽快なネイキッドスタイルと空冷4気筒として最大排気量を誇る1,250ccエンジンを搭載し、高い人気を博したXJR1300。そのXJR1300のニュージェネレーションモデルとして2015年、新たにXJR1300Cが誕生した。スタイリング表現にこだわりを求めるヨーロッパのユーザーの声によって企画された、ヨーロッパの香り漂うスポーツヘリテージモデルである。
※ 現地名称はXJR1300ですが、弊社ではXJR1300Cで発売致します。
2005年以降、ヨーロッパで静かに人気が広がっているこのカテゴリーは、最新技術で先鋭化していくスーパースポーツを肯定する一方で「鉄パイプフレームに空冷4気筒エンジン」のような伝統的な基本設計に重きを置き、現代的なコンポーネントによる機能や性能と最新のデザイントレンドをアレンジし取り入れて、「クラシック」の新たな方向性を見い出した。
XJR1300Cはそうしたライフスタイルの中心に「モーターサイクル=バイク」を据えて楽しむ、新しいユーザー層からの支持を得て登場したのである。
意図的に旧車のデザインを施したりかつての名車のスタイリングをなぞるのではなく、スポーツヘリテージモデルとして独自の世界観を追求。コンセプトからスケッチ、クレイモデリング制作までをヨーロッパで行ない、それを基礎として日本とヨーロッパのデザイナーが「ヤマハらしさ」「日本独自」のアイデアを出し合い、独自の“空冷4気筒モデル”を具現化した。
真っ先に目に飛び込んでくる、フレームの一部がタンクに食い込むように見える新デザインのフューエルタンクは、容量14.5ℓの樹脂製。オールドレーサーをモチーフとしたスリム&コンパクトな形状に給油口をオフセット配置するなど、ハンドメイドの往年のロードレーサーの雰囲気を醸し出している。
なおこの樹脂製フューエルタンクは溶接跡の無い滑らかな表面も特徴で、この独特な造形と表面の質感を表現するために、樹脂原料を入れた金型を加熱しながら回転させ、冷却後に成型品として取り出す回転成形方式で製造されている。
新デザインのシートは、ショートでコンパクトなタンデムシートが特徴のシングルシート風デザインを採用。ハーフパンチ加工が施されホールド性に優れる表皮を、レトロ&オーセンティックな縫製ラインの立体デザインで仕上げたことで、無駄を削ぎ落としたスリムな外観と、スポーツライクな走りにマッチしたライディングポジションを得ている。
フューエルタンクとともに目を惹くサイドカバーは、1970年代のプロダクションレーサーを想起させるボルトオンの楕円形ゼッケンプレート風のアルミ製。エアスクープ状の曲面とフィルター風のスチールメッシュを備える円形ホールを3つ設けたプレート面は、表面にはバフ掛け&アルマイト処理を施し、パフォーマンスイメージと素材感を強調している。
また、XJR1300Cではこれまでフレームを覆っていたカバーパーツ類を廃止し、フレームそのものの機能美を強調したデザインとしている。フレームは現行XJR1300のダブルクレードルフレームを基本的に継承しながら、ショート化した新作シートに合わせてリヤフレーム長を約10cm短縮した。
長い時間をかけ熟成された市販空冷4気筒モーターサイクルとしては最大排気量となる4ストロークDOHC・4バルブ1,250ccエンジンを搭載し、低速域からの幅広いトルク特性と優れたパワーフィーリングをもたらしている。
エキゾーストは1番・2番と3番・4番のエキパイを集合させ、それがサイレンサー部で1本に集合させる4−2−1タイプ。現行XJR1300と同様にエンジン回転数、使用ギアから最適値を演算してモーター駆動によりバルブを駆動し、排気管内の圧力をコントロールし排気効率を上げることで優れたトルク特性を生み出すEXUPシステム、優れた環境性能を実現する排出ガス浄化AIシステムとAIシステムで浄化した排気ガスをさらにクリーンに処理するO2センサー付き三元触媒を装備している。
また、外観に関してはクロームメッキの現行XJR1300に対し、往年のレーサーのスパルタンなイメージとエンジンの存在感を強調するために、エキゾーストパイプ及びサイレンサーを艶消しブラック塗装とし、サイレンサーエンドキャップとバフがけのステンレス製サイレンサーバンドによって、ソリッド感溢れる引き締まった外観とスパルタンなイメージを印象づけている。
跨がるライダーの視点(ライダービュー)では、スリムなタンクからはみ出た幅広い並列4気筒のシリンダーヘッドカバーがエンジンの存在感を強烈に訴え、まるでエンジンにそのもの跨がるかような印象である。
フロントサスペンションの43mm径インナーチューブは、バネレート・減衰特性などスペックは現行XJR1300を踏襲しながら、従来のクロームメッキに比べ低フリクションで作動性の良いDLCコーティング(diamond-like carbon)を採用。DLCはVMAXにも採用されている仕上げ方法で、質感漂う外観を印象づけている。
リヤも現行XJR1300と同仕様の、オーリンズ製サスペンションを採用。伸び側減衰力と圧側減衰力の相互関係を最適化、加速時の沈み込みを抑えて良好な駆動力を得やすく、リニアでダイレクト感あるハンドリング特性を引出すポイントとなっている。
ハンドルにはマッスルイメージを印象付ける、軽量で強度バランスに優れたテーパー形状のアルミ製を採用。ポジションは現行のXJR1300比でややアップライトに設定されており、新作シートと相まって自由度の広いライディングポジションを提供する。
このほかコンパクトで優れた照射性を備えながら、180mmの小径レンズで小型化することで、相対的にエンジンの塊感と存在感を強調するマルチリフレクターヘッドライト、軽量化を求めるロードレーサーを印象づけるヘッドライトステーのサークル状ホール、新デザインの文字盤にリブ構造を織り込んだ2段階テーパー形状としてメカニカルでコンパクトな印象を持たせたメーターボディなど、外観だけでなくライダービューからも細部にわたってヘリテージレーサーを印象づけるデザインとしている。