既成概念を取り払い随所に独自技術を織り込んだ、ヤマハのクルーザー造りの集大成モデルとしてセンシャル・パフォーマンス&エキサイトメントをコンセプトに生み出されたXV1900A。2013年モデルではクルージング性能を向上させるためアシスト&スリッパークラッチを新たに搭載した。
2013年モデルで新たに搭載された新機構「アシスト&スリッパークラッチ」は、装置を構成するボスクラッチとプレートプレッシャーに斜めにかみ合うカムを設け、相互に組み合う力でクラッチの圧着力をアシスト、反対に滑る方向に動くと意図的にスリップさせることを可能にしている。
組み合う力をアシストすることでクラッチのスプリングレートを従来より低く設定、クラッチレバーの操作荷重が現行比で約20%低減を実現。クラッチのオン/オフが連続する市街地走行での疲労低減、半クラッチ操作を容易にしてなめらかな感触が得られるなど、快適性向上に寄与している。
またバックトルク発生時には半クラッチに近い状態を生み出すことで、挙動の変化や急激なエンジンブレーキの発生を抑え、さらに快適な走行性を保つことが可能となった。
低振動と心地よいパルス感を両立する空冷4サイクルオーバーヘッドバルブ(OHV)形式の鋏角48度、ボア×ストローク100×118mmで1854cc(113キュービックインチ)の排気量を持つ「心臓」を搭載。左右2つに分割したウェイトを3軸配置のクランク〜メインシャフト軸間に配置する小型バランサー、シリンダーヘッドの油冷システム、1シリンダーあたり4バルブ・ツインプラグ配置と天面に2つの凹面を持つピストンで、2つの火炎伝播による燃焼方法を用いるなど数々の最新テクノロジーが搭載されているエンジンに、今回新しいクラッチ機構が加わった。
また、縦リブを極力廃し一枚一枚にNC加工を施した10mm間隔のヘッド側7枚、ボディ側13枚のシリンダーフィン表面は、光の加減や向きでフィン全体が波うった輝きを見せ、Vツインの力強さを強調するテーパー形状のクロームメッキプッシュロッドカバー、手作業によるバフ掛けを行なったアルミ製のヘッドカバー、クラッチカバーなどと共にメカニカル感溢れる空冷ならではのエンジン造形と、きらびやかな美しさ・高い品質感をもたらしている。
ダウンドラフト型のツインボア・フューエル・インジェクションを採用する吸気系は、吸気スロート径30.5mmのスロットルボディをVバンク間へクロス状に配置。ダクトは前後2分割式としてエア・クリーナーボックスのフィルターを集約、3.5リットルとコンパクトな容量ながら吸気効率と効果的なスペース確保の両立を実現、優れたドライバビリティと、環境性能を両立させている。
低中速でのトルクアップと2,500〜3,500r/min域での優れたトルク特性を引き出すヤマハ伝統のEXUPを、垂直軸作動のコンパクトな設計で精悍なスタイルの2into1マフラーのエキゾーストパイプ集合部分に装備。さらにサイレンサーの第1膨張室内に配置されたラムダセンサー付き三元触媒、フューエル・インジェクションとの相乗効果でEU-3をクリアする優れた環境性能を達成している。
独自のアルミ鋳造技術により各アルミ材の肉厚を精密に制御し強度・剛性バランスの最適化を図り、ヘッドパイプ廻りをボックス型としたアルミ鋳造ダブルクレードル型フレームは、エンジンの搭載をヘッド懸架4ヵ所のリジットマウントとして優れた車体バランスを実現、Vツインエンジンのダイレクト感を一層楽しめる特性となっている。
ディメンションはスポーツバイクに匹敵する前後重量配分約50:50。これは重心位置、キャスター、トレール、駆動ベルトのサイズから強度剛性バランスまで各スペック相互の最適化を追い求め実現している。
燃料タンク造形とのコンビネーションをとり、ボディ全体の骨太感を強調させたインナー径46mmの正立式フロントサスペンションは、良好なクッション特性と余裕あるハンドル切れ角を確保、CFアルミダイキャスト製リヤアームと組み合わされるイニシャルの調整機構を備えたショックユニットを横向きに配置したリヤサスペンションはマス集中と低重心化に貢献し、ナチュラルな操縦性を実現している。
またブレーキはダイレクト感と操作フィーリングに優れるモノブロックキャリパーとフロント298mmのダブルディスク、リヤは320mmのシングルディスクで構成されるUBS(Unified Brake System)を装備。前後が連動して作動することで雨天時など路面が滑りやすい状況でも車体を安定させ、最適の制動力を発揮する。
品質感あふれる溶接跡の見えないフランジレスタイプのティアドロップ型燃料タンクは、ボディに溶け込むように流れる様がモチーフとなっている。燃料タンク上に配した高級置時計のようなスピードメーターは、奥行きのある文字と青の発光指針により夜間は淡い白地に文字が青く照明され、日中と違った表情を演出する。スピードメーター内には左下側に回転計、右下側に燃料計が配される。
この他大きく前側に張り出したフロントフェンダーと流れるようなリヤフェンダー、空気の中を突き進むようなデザインを施したハンドルホルダー廻りに滑らかに流れる様を表現する形状のフートボード、前後異形のホワイトレンズ採用フラッシャー、リヤホイールのダンパーとして高いダンピング特性をもつアイアンラバーを使用しダイレクト感あふれる走行フィーリングを実現した「極太ワイヤースポーク」を彷彿させる12本キャストホイールなど、全身に"ストリームライン"がみなぎるボディデザインをまとっている。
2013年モデルはカラーリングをブラックメタリックXとし、ヘッドライトボディーを同色とすることで重厚感溢れるイメージとなっている。