近年、アメリカにおけるクルーザーのトレンドの1つに「カスタマイゼーション」がある。これは長いフロントフォークと力強さを強調するエンジン廻りの造形、極太のリアタイヤ、美しいフィニッシュを見せる装飾品のような各部の仕上げを特徴とし、長距離のツーリングよりは街中を流して「見せる」ような使われ方である。
この様な流れに呼応して長年のヤマハクルーザーシリーズ開発で培った技術を織り込み、乗りやすく信頼性の高いメーカーカスタムとしてこれまでにないアーティスティックなデザインによる個性的なスタイルと軽快な操縦安定性、そして心地よいエンジンフィーリングを実現したのがXV1900CUである。
1900cc空冷4ストローク・4バルブ/2プラグOHVの48度Vツインエンジンは、XV1900Aと同形式ながらFI(フューエルインジェクション)や、燃料タンク裏側のスペースをクリーナーボックスの一部に活用した脈動効果による吸気効率の向上などによる味付けの違いで最高出力72.4kW(97PS)を4,250r/minで、最大トルク167.2N・m(17.0kgf・m)を2,500r/minでそれぞれ発揮、大排気量Vツインならではのパルス感溢れるフィーリングでダイレクト感溢れるパワーと厚みのあるトルクを発揮している。
またシリンダーフィンの縦リブを極力廃した空冷ならではのすっきりしたエンジンの造形で、ヘッド側7枚、ボディ側13枚のフィンの表面を一枚一枚NC加工することでフィン全体が波うった輝きを見せ、Vツインの力強さを強調するテーパー形状のクロームメッキプッシュロッドカバー、バフ掛けによりアルミの輝きを際立たせたヘッドカバーやクラッチカバーなど、きめ細かな手作業によってメカニカル感とジュエリー感覚の品質感を漂わせせている。
右側に配された2-2マフラーは、内部構造を2-1-2として合部分には排気デバイスのEXUPバルブを装備。FIセッティングとともに優れた低中速域のトルク特性を引き出しながら、パルス感ある「サウンド」の輪郭をあらわにすることにこだわった。
このほか3軸配置のクランク〜メインシャフト軸間を拡大し、ウェイトを左右ふたつに分割してそれぞれクランクと同軸、クランク軸に近接することで偶力発生を最小限に抑えエンジンのコンパクトを図ったバランサー、シリンダーヘッドにエンジンオイルを循環させ冷却する油冷システムなどXV1900Aの良さを継承している。
ヘッドパイプ部からタンクレール部とエンジン懸架部の2つを新たに設計。残る4つはXV1900Aと同一としながら、全く新しいキャラクターを持つフレームとなっている。エンジンはリジッドマウントで、ヘッドを4ヶ所で懸架することで優れた車体バランスを実現した。
フロント廻りにはヤマハ一般市販モデル初のヨーク角を設定。ヨーク角とは二輪車では通常、ステアリング軸とフロントフォーク軸が平行になっているが、ここに傾斜角を付けた場合の角度をヨーク角と呼び、フォークブラケット側のオフセットをトップブリッジ側0mm、アンダーブラケット側30mmとすることでキャスター34度に6度のヨーク角をプラスし最適化。
これにより102mmのトレール量を確保しながらフォークをステアリング軸側に近づけることでフロント廻りの慣性モーメントを低減、CFアルミダイキャスト技術による新設計リアアームとともに1,799mmのロングホイールベースを実現しながら、走行中の舵角変化からの影響を受けにくい自然な操縦安定性と優れた直進安定性を実現している。
カスタムスタイルを提唱する「Take off Movement」「Black art」「Strong rider attitude」の3つのデザイン要素の調和をテーマとして、ワイヤーハーネスが見えないハンドル廻りの処理や溶接跡が見えない15.5リットル容量フランジレスタンクに座面にくぼみを設けたシート、ハブ部星型形状の5本スポークキャストホイールなどの外観面の特徴と、ショックユニット横向き配置でマス集中に貢献するリアサスペンション、カーボンファイバー繊維入り2次駆動ベルト、優れた環境性能を実現するラムダセンサー採用三元触媒、クラスを超えたワイドなフロント120mm幅タイヤと扁平率40%リアタイヤなど機能面の充実を具現化したものとなっている。