山岳ワインディングから市街の石畳路まで路面を選ばない軽快でスポーティーな走行性、航続距離確保とウインドプロテクションから生まれた個性的なスタイリング。"キング・オブ・ザ・マウンテンロード"を受け継ぐTDM900A。'08モデルとして ABSモデルが誕生、日々の扱いやすさを追究している。
水冷4ストロークDOHC・5バルブ・2軸バランサー採用の897cm3並列2気筒エンジンは、YZF-Rシリーズと同じアルミ鍛造ピストン、メッキシリンダー、浸炭コンロッドを採用、クランク慣性マスの最適化や排気側カムの変更などによってアイドリングの安定性と中低速域でのリニアリティを実現している。
吸気系はFJR1300用の小型38mmスロットルボディをベースに、4ホール2ジェットの低圧噴射方式のインジェクターを設定、各気筒独立のシーケンシャル噴射としたFI(フューエルインジェクション)に7.5リットルの大容量エアクリーナボックスと、回転数に応じてダクト面積を変更するヤマハ初の吸気ダクト可変方式を組み合わせ、スロットル急開時に生じる通路面積急変による特性変動を最小限に抑え、最適な吸入空気量を確保している。
また噴霧粒径特性の最適化と5バルブ燃焼室とのコンビネーションでFI性能を効率的に引き出し、優れたエンジン特性によるドライバビリティの向上とともに、環境問題に対応した排気ガスの浄化を実現している。
排気系は欧州排出ガス基準「EURO3」に対応し、エキパイ・サイレンサー部ともに、エアインダクションシステム及び三元触媒を内蔵したステンレス製軽量マフラーを採用。エキパイと大容量サイレンサーをストレートに結び、中央部を連結して排気脈動特性の向上を図り、ビッグツインならでは心地よいパルス感と歯切れよい排気音を実現している。
この他冷却性能の高い小型ラジエター、6速ミッション、肉厚0.8mmスチール材使用の軽量オイルタンクなど、新世代TDMエンジンコンポーネントとなっている。
マットブラックに染められたアルミ製ダイヤモンド型フレームは、プラケットリヤアーム部に中空鋳造材と、エンジンのフレーム懸架を3点リジット式として、フレーム単体での軽量化を推進。 エンジンマウントはシリンダー搭載角を変更することでクランク軸位置を前方へ移動、さらにフォークオフセット値とフォークピッチを最適化することで前輪分布荷重を49.8%に設定、少ない倒し込みによる素早いターンが楽しめるハンドル廻りの慣性モーメント特性としている。 リアサスペンションはプログレッシブ効果の最適化を図り、「目の字」断面アルミ押出し材を採用した軽量R1タイプのロングリヤアームに、ピギーパック付きのYZF-R1タイプをリンクを介して取り付け、タンデムや荷物搭載等の重量変化時にも許容度の広いナチュラルな走行安定性とスーパースポーツをも凌ぐハンドリングの両立を実現している。
ニューエッジフォルムと呼ぶワイルドな表情を演出する外観は、ライダーが跨って調和のとれるTDM唯一無二のデザイン。 フロントビューはマルチリフレクターヘッドライトと見やすいデジタルとアナログの3連コンビネーションメーターが納められた小型のウインドスクリーン、そしてスリムなツインエンジンによりマッシブスタイルを具現化、スーパースポーツとは一線を画す"Y字シェイプ"を主張している。 さらにリア廻りは、薄く絞り込まれた軽快な造形処理により、ダウンフォースに頼らずに前へ進むイメージを強調。 実用上も、燃料ポンプを内蔵しながら最大容量を確保し航続距離アップを図った燃料タンク、疲労度が少なくリニアな操縦性も実現するリジット式幅広ステップ、YZF-Rシリーズと同様の板厚最適化手法により軽量化を図った前後ホイール、剛性が高くコントロール性に優れるMOSX64型対向ピストン・ワンピースのFブレーキキャリパーなどにより、操る楽しさをダイレクトに感じられるドライバビリティを獲得している。
2009年モデルではABS搭載モデルが設定され、路面状況や天候などの変化にも的確に対応してキング・オブ・ザ・マウンテンロードの名にふさわしい、さらなる安全性を獲得している。