2019.04.05

バイクにとって、自身にとって、
最適なタイヤを使っているか?

YZF-R1YZF-R6



現行YZF-R6は、2017年6月に発売し今年で2年を迎え、初期モデル購入オーナーの皆さまにとっては、あるタイミングが近づいている。
そう、足まわりの要、タイヤの交換だ。今回は、R6標準装備タイヤのひとつ「BATTLAX HYPERSPORT S21」のサプライヤーであるブリヂストンモーターサイクルタイヤ株式会社の佐藤潤代表取締役社長に、タイヤ選びや交換時期などの基礎知識とともに、「S21」の後継モデルについてお話をうかがった。

 
 

― タイヤ選びで大切なこと ―

 
YZF-R6の標準装備タイヤのひとつが「BATTLAX HYPERSPORT S21(以下S21)」であるが、このアップデート版となる「BATTLAX HYPERSPORT S22(以下S22)」が発売されたことはご存知だろうか。現行R6を発売初期に購入された方は今年で納車から2年を迎えるが、「一般的には2年、長くとも3年での交換を推奨しています」と佐藤潤さんが言うように、タイヤ交換の時期が近づいている。
 

 
すなわち、R6発売から3シーズン目に入り、S22が発売された直後の今年は、タイヤ交換のベストタイミングと言えるのだ。しかし佐藤さんは、「タイヤライフはとても大切ですが、2年が経ち、S22があるからといって右から左に交換するのはよくありません」と警鐘を鳴らす。
「実は愛車のタイヤが自身のバイクライフに合っているのかを知ることが大切なのです。S21、そしてS22がスポーツタイヤであることを念頭に、ぜひ自身のタイヤを確認してください。どうバイクを楽しんできたかはご自身が一番理解していると思いますが、タイヤの状態から本当に適したものを履いていたのかが見えてくるはずです」
 
例えばトレッド(路面との接地面)がフルに摩耗していればタイヤを使えている証であり、S22に履き替えてもよいし、R1の標準装備タイヤであるさらにハイグリップな「BATTLAX RACING STREET RS10(以下RS10)」という選択肢も見えてくる。
 
逆にフルバンクできていない場合は、バンクする必要のない環境で乗っている、もしくはそのスキルを持っていないことも考えられる。
「スーパースポーツ(以下SS)でも高速道路を多用するツーリングが中心の場合、SSというだけでスポーツタイヤを選択すべきではありません。その場合はむしろツーリングタイヤを選ぶべきで、用途、スキルに合ったタイヤを選択することが、豊かなバイクライフには大切なのです」
 
 
 

― 劣化状況の把握は最優先事項の一つ ―

 
「交換タイミングは走行距離や頻度、保管状況、タイヤ特性などの要因で変わりますが、皆さまは愛車のタイヤの劣化状態を把握できているでしょうか?状態を把握し交換時期を判断することは、バイクを安心して楽しむために必要なスキルです。目安の2年が経っていなくとも、溝が減っていなくとも劣化がひどい場合は交換する必要があります」。
そこで佐藤さんに、代表的な2つの劣化状況と、それによって発生するネガティブサインについて解説してもらった。
 
 
1)摩耗による劣化
 

 
「タイヤにはその外周に4~6個の△マークがあり、その延長線上にある溝の中にスリップサインとなる突起があります。これが見えてくると交換時期と判断できます。二輪では残りの溝の深さが0.8mmになると見えるようレギュレーションで決められており、1箇所でも確認されると車検に通りません。
トレッドを満遍なく使っている場合は、ハンドリングの変化はほとんどありませんが、ゴムが薄くなるためギャップ吸収性が低下し、同じ空気圧でも頼りなく感じられます。一方、摩耗でタイヤのプロファイル(形)が変わることがあります。例えば、高速道路を中心に使う場合。これはセンター摩耗により、トレッドの中心が平らになるため、ハンドリングが重くなるなど操縦性安定性が悪化します」
 
 
2)長期保管による劣化
 
「ゴムが硬化しサイドウォールにヒビ割れが発生します。タイヤはブレーキングで潰れるなど屈伸運動をするためどんなものでも多少のヒビ割れは発生しますが、このヒビが大きいほど劣化が激しいと判断できます。
こうした劣化が起こると、硬いものがゴロゴロと転がっている感覚になり、接地感やグリップ感が希薄になってタイヤからのインフォメーションが少なくなり、またライトなウエット路面など、コンディションが少し悪いだけで、不自然なスライドが発生するようになります。
徐々に劣化していくため中々体感しづらいと思います。もしトレッドにヒビが発生し始めている場合は、硬化がかなり進んでいます。走行する場合は充分に注意し、販売店様に相談されることをお薦めいたします。」
 
以上、2つの劣化について解説してもらったが、特に劣化進度が早いのが長期保管の場合だ。なぜならタイヤには老化抑制剤が入っており、これが走行することにより表出してヒビ割れを抑制しゴムの柔らかさを維持するが、保管の場合は老化抑制剤が長く表出しないため、走行による摩耗よりも劣化の進行が加速するのだ。
 
長期保管で劣化の進行を遅らせる方法について佐藤さんは「紫外線や雨・風が劣化の原因となるので、遮光カバーを上からだけでなく、タイヤの下からも覆うのがベターです。さらに前後スタンドをかけて両輪を宙に浮かしてエアを抜いた状態にするのがベスト」とのこと。長期保管の際にはぜひ試してほしい。
 
 
 

― 果たして、S22の実力とは? ―

 

 
ここまで、タイヤ選びと劣化について解説してもらったが、R6のキャラクターやオーナーの皆さまの趣向などトータルで考えれば、S21から交換するタイヤとしては、アップデートしたS22がベストチョイスの一つであることに代わりはない。そこで最後は佐藤さんに、S22の実力について話しをうかがった。
 
「R6の標準装備であるS21は、街乗り、ツーリング、ワインディング、そしてサーキットまで、SSを様々な場面で使うために最適なタイヤであると自負しています。そしてこのS21に対して、ドライでは接地感と旋回性、ウエットではコーナーリング性能を高めたのがS22です。
 

 
実はそれぞれのプロファイルはまったく同じですが、ウエット路面については溝の入れ方を変えたことで進化を実現しました。通常、スポーツタイヤはドライのグリップを高めるため、溝と溝の間にあるブロック(ツルツルした部分)の面積を大きくします。
しかしS22はウエットのコーナーリング性能を上げるため、バンクした時に必ず接地する部分に水を掃き出す溝を等間隔で加えました。S21はそこが等間隔ではなかったため微妙なスライドが発生していたのですが、S22ではそれを感じなくなっています。
 

ライダー:和歌山利宏(バイカーズステーション)

 
逆にドライは、溝が増えている分だけグリップが落ちると思われるかもしれませんが、そこはコンパウンドの改良と、溝を起因としてトレッドが潰れ尖る方向にプロファイルが変化することで、旋回性が上がり、S21よりも小さく回れるようになっています。
 

ライダー:宮崎敬一郎(オートバイweb)

 
また、S22はR1オーナーの皆さまにもオススメのタイヤです。R1の標準装備タイヤはRS10ですが、これは前後のトレッドを尖った形状として、素早い倒しこみなどキレのあるハンドリングと、バンクした時の接地面を多くすることによるハイグリップが特徴。ライダーが積極的にバイクを操ることでポテンシャルを発揮します。
 

 
そのためアグレッシブさを求めない、もしくはアグレッシブに走れないライダーには、プロファイルの工夫によって実現する穏やかなライディングを楽しめるS22が適しているというわけです。その工夫とは、尖っているフロントと大きいRのリアの組み合わせにあります。この場合、フロントが先行して倒れ自然にインに向かって向きを変えはじめますが、リアはゆっくりと倒れていくため唐突にバンクせずに、かつ接地感も高く安心感があるためです。
 
最後にライフですが、RS10に対しては長持ちしますし、S21に対しても当社がまったく同じ条件で検証したところほとんど変わりません。ただ、楽しさが上がった分、アクセルを開ける量が増えるでしょうからライフは短くなるかもしれませんね」
 
接地しているのは、前後でわずか名刺2枚分にもかかわらず、バイクの特性や操縦安定性までも変えてしまうほどの影響力を持つタイヤ。実際、R1はその性能やキャラクターをより明確にするため、RS10とともに開発したほど。
ぜひこれを機会に、タイヤの状況を理解し、またご自身にとって最適なタイヤを選び、楽しいバイクライフを過ごしてほしい。
 
 

 
 


 


〈PROFILE〉
佐藤潤

ブリヂストンモーターサイクルタイヤ株式会社・代表取締役社長。
かつては現場・市場を第一に、地方選手権から全日本選手権までロードレース会場をめぐりライダーを支えつつ、販売店を駆け回り、タイヤノウハウの啓発とともに、BATTLAXシリーズ等の販売に従事。その販売本数はゆうに400万本を超えるタイヤのプロフェッショナル。
2005年のMFJ富士スピードウェイ選手権ST600クラスでは、2003年型R6で年間チャピオンを獲得。国際A級ライセンスを持つライダーであり、現在も愛車のYZF-R1でツーリングからサーキット走行まで楽しむバイク愛好家でもある。