2019.05.24

Road to Circuit – Vol.4
身近な玄人・販売店にサーキット走行のイロハを学ぶ

YZF-R1



装具一式を揃え「いざサーキット!」と意気込んだものの、たった一人でサーキットに乗り込むほどの勇気も知識もない… そこで「Road to Circuit」の第四弾では、オーナーにとって身近な支援者である販売店にサーキット走行のイロハについて伺うとともに、富士スピードウェイに行き、体験走行に挑戦する様子をお届けする。

 
 

― 最初の一歩が肝心だ ―

 
念願のレーシングスーツが完成し準備は整った。後はサーキットデビューを残すのみとなったが、実はここからのハードルが意外と高い。装具以外に必要なものはあるのか? 初心者に最適なバイクのセッティングは? タイヤはどうだろう? このほかにもコースの覚え方やライディングフォーム、サーキットの暗黙のルールなど、湧き出てくる疑問に対して、自分があまりにも無知なことに気づく。
 
スーツが届くまで数ヶ月の時間があったが、意外とサラリーマンは忙しく、本腰を入れて勉強というまではいかない。それでも通勤時間などを利用してネットで調べてみたが、情報は出てくるものの結局、何が正解なのかもわからない。
 
一方でもっと根本的な課題も見つかった。自分のバイクはサーキット走行に最適な状態にあるのか? サーキット走行中に故障したら… もし転倒があったら… そうなれば、家族から反対されたり、自分自身が楽しめず、最初で最後のサーキット走行となる可能性だってある。当初は、一人で自走していく予定だったが、諸々を考えるとリスクしか感じなかった。そこで、最初の一歩を確実に踏み出す方法を考えたわけだ。
 
 

 
灯台下暗し、答えはすぐ近くにあった。レースに出場するなどサーキット経験が豊富なパートナーがそばにいたのである。そう、日頃お世話になっている販売店、YSP富士吉田の小沢淳一店長だ。
 
早速、小沢店長に電話をかけると「ちょうどよかった! レースに向け4月に富士スピードウェイでテストをするので、どんなものか一緒に行きませんか? それに3周のサーキット体験走行もあるので、有料ですが走ってみるのもいいかもしれませんよ」と誘ってもらったのだ。
 
 

― サーキット走行の基礎を知る ―

 
「レーシングスーツ、作ったそうじゃないですか? 自走でいらっしゃるんですよね。それなら装備一式を着て来てください。その方が体に馴染みますから」と早速アドバイスをもらって電話を切った。
 
 

 
待てよ、このあいだPRESTOのVOICEでタイヤについての記事が公開されたことを思い出した。BATTLAX HYPERSPORT S22が発売されたと… 体験走行とはいえ万全を期す。ということで迷わずもう一度スマフォを握り、すぐにYSP富士吉田に電話をかけて注文。サーキット体験走行の前日にタイヤを交換してもらい、さらに車両の点検もしてもらうこととした。
 
体験走行前日、YSP富士吉田へ。タイヤ交換と車両点検の間、チャンスとばかりに店長をつかまえサーキット走行について切り出すと、小沢店長も待ってましたとばかりに基本的なポイントを解説してくれた。
 
 

 
【コンディショニング】
・前日はアルコールを取らずに、しっかり睡眠をとる
・普段行わないトレーニングを思い立ったようにしない
・基本的には走行直前には食事を取らない。もし食事を摂る場合は極力消化のよいものとする
 
【所持品(自走の場合)】
・忘れ物を防ぎ、装具に慣れるために一式を着て移動。現地では窮屈になるため、必要と思ったら着替えを持参する
・一般公道とサーキットではタイヤの空気圧が異なるため、調整するためのエアゲージ
・コースコンディションやセッティングなどの記録するための筆記用具
 
【走行について】
・初心者である、自信がない、小排気量車で走行する時などは、そのサインとして、また安全を確保するためにも用意されているビブスを着用する。※上記は富士スピードウェイの場合です
・コースに入って数周はタイヤが温まっていないので、特にコーナーの速度を上げない
・タイヤを温めるにはストレートでしっかり開けて、しっかりブレーキをかける
・タイヤを温めるため、待機時間は常にバイクを日向に置いておく
・ストレートでは、後方のことを考えイタズラにラインを変更しない
・オーバーテイクされる時は反応せず、動かず自分のペースとラインで走る
・コーナーでは、前を走るライダーの動きに合わせず、あくまでの自分の走りに集中する
・オーバーテイクはしっかり相手との間隔をあける。コーナーでは必ず相手の視線に入るインで抜く
・ペースやリズムを崩すなど、集中力が切れたり、集中できない場合は走行をやめピットに戻る
・追突される危険性があるため、チェッカーが振られても1コーナーまではスピードを落とさない
 
じっくり心得を教えていただいたが、最後に小沢店長は「スポーツ走行と名が付いているように、200キロのバイクを高速で走らせる行為はまさにスポーツ。相応の体力が必要ですので、ぜひ日頃から体力作りをしてください。そして正しい知識がない場合はバイクやタイヤに触るべきではありません。逆にリスクが高くなる。だからある程度の知識がつき、サーキット走行に慣れるまでは、専門家を頼り、一人ではなく誰かと一緒に行動することをオススメします」と締めくくった。
 
 

― サーキット“プレ”デビュー ―

 

 
翌朝、新品のS22に履き替えたR1を駆り、富士スピードウェイに向かうと、すでに早朝のスポーツ走行を終えた小沢店長が、メカニックを担当する小沢昌路工場長と迎えてくれた。
 
今日はスポーツ走行ではなく、ライセンスの必要のない先導車つきの体験走行に臨むわけだが、サーキット独特の雰囲気に飲まれ、緊張している自分に気づく。そんな様子を見計らって、小沢店長が気を散らすようにたわいもない会話でなごませてくれる。
 
 

 
一方、工場長はせっせと準備に取り掛かる。まずはタイヤの空気圧だ。ライダーの体重やスキル、タイヤ種類によって数値が異なる。
 
 

 
チェーンはクリアランスをチェック。公道走行よりも負荷がかかるため張りすぎは要注意だ。
 
 

 
続いてトラクションコントロールなどR1本体で調整できる制御関係を最適化してくれた。体験走行はサーキットを流すだけで、本来は必要のない作業かもしれないが、事前準備のディテールはわからないことばかり。一つ一つ教えてくれながら、丁寧にこなしてくれたことに安心できた。やはり専門的な知識を持つ販売店に相談したのは大正解だ。
※画像はイメージで、初心者用の最適値ではありません。
 
 

 
そうこうしているうちに、プレデビューの時がやってきた。身支度を改めて整える。
 
 

 
もちろんあの「儀式」もやった。新品のレーシングスーツでの初走行の時は、プロもアマ問わずやっているらしい。一度ゴロンと地面に転がるのだ。転倒などのアクシデントがないようにという、厄払い的な儀式である。
 
 

 
マシンに火を入れる。速いライダーであれば2分を軽く切るコースを体験走行は3分かけて走る。それでも緊張はMAXだったが、小沢店長が一緒についてくれ、ここでも安心をいただいた。
 
 

 
コースに出ると決してスポーツはしていなかったがそれまでの緊張が嘘のようにフッと体が軽くなり、満たされていった。
 
 

 
こうして体験走行はあっという間に終了。安堵感と物足りない思いが同居する。店長と工場長は、仕事のため店舗に戻るというので、お礼と引き続きのサポートをお願いし自分も家路についた。こうしてサーキットデビューを支えてくれる強力なパートナーができた。そして次はいよいよライセンスの取得だ。
つづく。
 
 
Road to Circuit – Vol.1 レーシングスーツを作る
 
Road to Circuit – Vol.2 イクイップメントを揃える
 
Road to Circuit – Vol.3 オレのレーシングスーツ完成