2018.08.16

プロライダーにとってYZF-R6は強敵か?それとも…

YZF-R6



全日本選手権のST600参戦2年目となる南本宗一郎選手(AKENOSPEED・YAMAHA)と、今年からJ-GP2参戦を開始した井手翔太選手(HiTMAN RCKOSHiEN YAMAHA)は、新型YZF-R6で戦っている。
その第一印象を聞くと「速い。でも想像以上に扱えなかった」と口を揃えたが、2人にとってR6はどういった存在なのか? それを解き明かしながらR6の魅力に迫った。

 
 

― 足りないものをたくさん教えられました。嫌になるくらい ―

 

 
全日本ST600にエントリーする南本選手は、2018年、旧型R6から満を持して登場した新型R6に乗り換えた。「ポテンシャルは上がりました。特に重量ですが、数字上はそんなに変化がないはずですが、押し引きがすごく軽くなって軽快感が増しています。それにタンク形状が抜群でホールド性が上がりライディングも楽になりました」
 
しかし課題は次々と湧いてきた。「上半身の筋力が圧倒的に足りない… 無理するので体力も続かず思うように戦えません。セッティングの方向性も昨年まで乗っていたYZF-R25とは大きく異なります。R25は最高速を求めていましたが、R6で必要なのはコーナーを速く走ること。そのためには突き詰めた足回りが必要ですが、僕にはそのセッティングがうまくできなくて… 正直、苦しんでいます」
 
一方の井手選手は「J-GP2で走らないかと誘われた時、“僕でいいのかな?”と思ったのですが、憧れの中須賀克行さんに近づきたいという想いがあったし、やっぱりうれしくて参戦を決めました。昨年までのJP250の時と同じ気持ちではいけないと思っていましたが、実際は浮かれていましたね」
 
初対面は3月上旬だったが、井手選手の浮かれた気分をR6が粉砕したのは言うまでもない。「昨年までのR25の乗り方が抜けきっていなかったこともあるのですが、想像を超える難しさでした。身体もできていないので重いし、止めて曲げて開けるという基本ができず、タイムもでない状況。不安が募りました」
 
 
 

― 逃げずに、すべてを受け止め前を向いた ―

 

 
R6と彼らが出逢って数ヶ月、状況は少しずつ変化している。
 
「バイクは速い。でも僕が速く走らせていないだけ。ではどうすれば速く走れるのか? R6は技術、体力、セッティングなど、僕に考える機会を与えてくれました。しんどいですが少しずつできることが増え、ライバルとバトルもできるようになり楽しくなっています(井手選手)」
 
「R6は突き放してばかりではなく教えてくれる。特にセッティングは、変更に対しての応答が顕著でとてもわかりやすく、少しずつですが方向性が見えてきました。ようやく自分の手の中に収めつつあるし自信もついてきて、レースが面白くなりつつあるんです(南本選手)」
 
結局のところ2人にとってR6はどんな存在なのか? 「試練を与えるのですが、ただ這い上がってくるのを待ってのではなく、寄り添い一緒に成長してくれるバイク。目標地への架け橋みたいな感じですかね」
 
勝利がすべてのプロライダーにとってR6は簡単なバイクではない。辛い、苦しい、しんどい… そうした弱音にも聞こえる言葉の先に、楽しい、おもしろいがついてきている。R6は、プロライダーにとって超えるべき壁であると同時に、まるで人情味溢れる教師のようにライダーたちを目的地へと導いているのかしれない。
 
 
 


 


〈PROFILE〉
南本宗一郎選手(AKENOSPEED・YAMAHA)

2000年生まれ、大学1年生の18歳。今年でST600参戦2年目。現在まで新型YZF-R6とともに3戦を戦いランキングは6位。YAMAHA FACTORY RACING TEAMのライダーになることを目標として、今年はさらなるステップアップのためにもチャンピオン獲得を目指して奮闘中。

 


〈PROFILE〉
井手翔太選手(HiTMAN RCKOSHiEN YAMAHA)

2002年生まれの16歳。2018年からJ-GP2に新型YZF-R6で参戦を開始。ここまで3戦を終えたがリタイアが重なりランキングは15位。憧れのライダーは全日本最高峰7冠の中須賀克行選手、そして将来の目標はYAMAHA FACTORY RACING TEAMのライダーになること。