2018.11.06

プラモデル発売と同時にR1開発陣がマル秘エピソードを披露!?

YZF-R1



― 開発で苦労したトレッドパターンまで忠実に再現 ―

 
ヤマハの誇るスーパースポーツ、YZF-R1Mの1/12スケールモデルがタミヤから発売された。これを記念して9月22日、東京にあるタミヤプラモデルファクトリー新橋店にて開発スタッフによるトークショーが開催された。この発売記念イベントにはヤマハ発動機株式会社の平野啓典さん(YZF-R1開発責任者)と、株式会社GKダイナミックスの坂田 功さん(YZF-R1デザイナー)が登壇。R1開発時の苦労や秘話などを赤裸々に話し、会場に集まったバイクファンおよび模型ファンを大いに喜ばせた。
 

 
YZF-R1のプロジェクトリーダーである平野啓典さんは、現行モデルの開発当時を次のように振り返った。
 
「2018年はYZF-R1にとって20周年という区切りの良い年です。初代(4XV)のころから1000ccという枠の中でワインディングロードでの楽しさを追求し、それはスーパーバイク世界選手権のレギュレーションが4気筒1000ccになって以降も変わらなかった。ところが、リーマンショックのころから海外のスーパースポーツがレース寄りのスペックで台頭しはじめたんです。欧州の雑誌はサーキットでバンバン走らせて採点するので、どうしても相対的にR1の評価が低くなりがちでした。やっぱり悔しいじゃないですか(笑)。そこで、次はサーキットでの速さを徹底的に追求しようと。そうして初代から長年受け継いできたコンセプトを、ワインディングロード主体からサーキットへと大きく方向転換したのが、2015年に発売した現行のYZF-R1なんです。
 

 
キーワードは“ハイテック・アームド・ピュアスポーツ”です。そして、開発中はすべてにおいて“ノーエクスキューズ”を貫きました。直訳すると“言い訳をしない”になります。例えばタイヤ。海外のライバル勢は最初からハイグリップタイヤを標準装着しているので、どうしてもタイム的に勝てない。そこで、仕方ないよね、という言い訳をしないために、ブリヂストンさんと共同でRS10というハイグリップタイヤを開発し、標準装着しました。個人的にまず感動したのが、今回の1/12スケールモデルでこのトレッドパターンが忠実に再現されていたことです。これならブリヂストンさんの担当者も喜ぶんじゃないでしょうか。
 
軽量化にも腐心しました。チタンコンロッドやマグホイール、アルミタンクなどがそうで、これらはすべて内製なんです。タンクについてはレーサー用をアルミで作っていた時期がありましたが、1日に作れるのはぜいぜい1~2個です。R1に採用するとなると年間1万個は作れるだけの設備と技術が必要になります。難しさで言えばマグホイールもそうですね。コーナーの進入でライバルに勝つためにブレーキディスク径を大きくした分、ホイールのリム部分をできるだけ軽くなるように設計しています。スポークはH断面なんですが、こんな細かいところまで1/12スケールモデルで再現されているので非常に驚きました」
 
 

― 細部はもちろん、違和感のないプロポーションに感動 ―

 

 
GKデザインのグループ企業であるGKダイナミックスは、創立以来からヤマハとパートナーシップを結んでいるフリーランスのデザイン会社だ。YZF-R1Mのスタイリングを担当した坂田功さんは、先代のR1も手掛けている。
 
「実は歴代R1の中で、描いたイメージスケッチの枚数が最も少ないんです。それも3枚しか描いていない。R1の顔といえば吊り目2眼というのがお決まりでしたが、現行モデルではガラリと変えました。あの隠れた位置にヘッドライトをレイアウトしたのは、レーサーとのイメージの乖離をできるだけ少なくしたかったからなんです。10年以上前から温めてきたアイデアなんですが、ヘッドライトのレンズに制約があり実現できなかった。ところが、ちょうど現行モデルの開発時期に平野さんが小糸製作所の試作ライトを持ってこられたんです。おっ、これは使えそうだということになり、今回のフロントフェイスが実現しました。初代に迫るインパクトが与えられたのではないかと自負しています。
 

 
それともう一つ、テールカウルの穴について。これはウイングを寄せていったら穴になった、という感じなんですね。その昔、4輪のF1でドライバーが手の甲などで穴を開閉する“Fダクト”という空力デバイスがありまして、それをイメージしているんです。つまり、ストレートで腰を引くと穴がふさがれて最高速に貢献し、コーナリング中はここを風が流れることでダウンフォースを稼ぐと。まぁ、そうなったらいいなぁ、という感覚だったのですが、平野さんにお聞きしたら実際に効果があったらしいんです」
 
「実はそうなんですよ」
と、プロジェクトリーダーの平野さんが続ける。
 
「開発中は雑誌社にスクープされないよう偽装してテストをするんです。例のテールカウルの穴は見えないようにふさいでいました。ところが、最終段階に入ってすべての偽装を外したら、電子制御のパラメータが影響を受けるほどの変化があった。具体的にはウイリーしにくくなる方向ですね」
 

 
GKダイナミックスの坂田さんは、そのテールカウルの穴まで忠実に再現されていたことに感心したという。
「全体のプロポーションにまったく違和感はないですし、設計の段階で苦労したパーツやこだわった部分がそのまま再現されている。プラモデルとは縁がないのですが、これはぜひ作ってみたいと思いましたね」
 
実は初代(4XV)もデビューイヤーにプラモデル化されており、タミヤにとってもR1のスケールモデル20周年にあたる。完成すると見えなくなるエアクリーナーボックスや、冷却系およびブレーキのホース類まで忠実に再現されるほか、アウターチューブをアルミ製としたディテールアップパーツ(別売り)まで用意している。YZF-R1Mの開発に携わった二人が感心するほどの出来映えで登場した、タミヤの1/12スケールモデル。R1オーナーはもちろん、モデラーにとってもチャレンジしがいのある作品と言えるだろう。
 
 


タミヤ 1/12オートバイシリーズ「ヤマハYZF-R1M」
税込価格:4320円

 
‘18年型のヤマハYZF-R1Mを1/12スケールで再現したプラスチックモデル組み立てキット。全長172mm×全幅68mm×全高97mm。エンジンをフレームに対してビス留めとすることで、組み立てやすさと強度を確保している。

 
 

〈文責〉
ヤングマシン編集部

大屋雄一(おおや・ゆういち)

 

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