2018.11.02

完全なるブレークスルー、R1はレースマシンになった!

YZF-R1



全日本ロードレース選手権の最高峰クラスJSB1000にYAMAHA FACTORY RACING TEAMからYZF-R1で参戦する野左根航汰選手。今回は、国内トップライダーである野左根選手が感じたR1のポテンシャル、そしてファクトリーマシンとの違い、さらには1000ccの大排気量車を操る上で気をつけていることなどについて話してもらった。

 
 

― R1はレーサーとして創られたマシンだと思う ―

 
野左根選手が初めてR1に乗ったのは2014年、第7世代に当たる現行の一つ前のモデル。J-GP2からステップアップして乗ったR1の第一印象は「改造範囲が広く、レースに特化してモディファイしたR6からの乗り換えだったので、やはり“市販車”という感覚で大きなギャップを感じました」というものだった。
 

 
しかし若手育成を担うユースチーム「YAMALUBE RACING TEAM」に抜擢された2015年、第8世代の現行モデルにスイッチすると状況は一変する。「チームの方針もありほぼストックのR1 でレースをしていましたが、完全にブレークスルーしていましたね。J-GP2時代のR6と同じ感覚で思い通りに走れる。切り返しでの圧倒的な軽快感、パワーがあるのに扱いやすいエンジン特性… 悪いところを探すのが大変なくらいレース向きの車両でした」
 
さらに「R1はストックの状態でバランスができあがっています。中途半端に変更を加えるくらいならストックの方が断然いい。僕もユース時代にちょっと変更を加えたことがあるのですが、結局タイムは変わらず… それくらい完成度が高いのです」
 
 
 

― シビアなファクトリーR1よりも、優しいストックの方が速い! ―

 
そして2017年、ついてYAMAHA FACTORY RACING TEAMからの参戦が決定。マシンもファクトリーR1へと変わった。
「誤解を恐れずに言いますが…」と前置きした上で、「移籍した当時の僕は、ファクトリーマシンよりストックの方がタイムはよかったですね。なぜならファクトリーのR1は、超繊細でシビアなコントロールが求められ、圧倒的に負荷がかかる。中須賀さんのようにある領域に踏み込んでいけることを前提としたマシンです。でもストックのR1はレースマシンとして完成度が高いのに乗り易い。だから未熟な僕にとってはストックの方がよかったというわけです」
 

 
だた、今は野左根選手も進化を遂げ、ファクトリーR1を乗りこなせるようになっている。「さらに戦闘力の高いYZR-M1をテストし、乗る回数も増えて余裕ができことが大きい。一般的な有酸素運動や筋トレも必要ですが、うまくなるにはバイクにたくさん乗ること。走り込んで、身についていく。練習することが大事なのです」
 
 
 

― パワーに頼るのではなく、あくまでも丁寧に ―

 
ところで、国内トップライダーはバイクを速く走らせるためにどんなことを考えているか? 野左根選手に質問をぶつけると「いかに素早く曲げ早く立ち上がるか。いかにアクセルを開けている時間を長くするか。うーん、当たり前のことしか思い浮かばない…」と最初は困りながらも言葉を続けてくれた。
 
「僕が走っているときに大事にしているのは、まず路面からのインフォメーション。ユーズドタイヤとニュータイヤではグリップはまるっきり違ってきますが、制御のセッティングやアクセルの開け方などに繋がってくるため、グリップの良し悪しを感覚として理解しておく必要があります。それから、R1のような大排気量のバイクってミスしてもパワーでカバーできそうって思ってしまいますがとんでもない。速いライダーになればなるほど一つ一つの動作をものすごく丁寧に行っています」
 
例えば鈴鹿の1-2コーナー、野左根選手はまず300km/hから200km/hにブレーキングして、その後はブレーキをリリースしながらギアを3速まで一気に落とす。アクセルは2コーナーの真ん中くらいまで一切動かさず、探りながら開けて曲がれると確信した時に全開にするという。
 

 
「これに体の動き、体重移動もある。それぞれのタイミングやスピードなども含めると結構な操作があり、一つでもミスがあると直後に必ずしっぺ返しがくる。だから、気を抜かずあくまでも丁寧に、です。速く走ろうと思えば思うほど、また、こんなにがんばっているのになんでタイムが上がらないのか… というときがあります。こういった時ほど操作が雑になってマシンに無駄な挙動が出ている。だからすべての操作を丁寧に速く行うことが速く走るために大事なことだと思います」
 

 
ちなみに、予選は毎コーナーで呼吸もしないくらい集中しシフトのタイミングまで神経を張り巡らせて行うらしい。「ただこの時は無意識で手足と体が動いている感じ。レースになるとそこまではやらないし、それを続けると最後まで持たない」のだという。
 
R1を所有するユーザーの皆さん、そしてこれから購入を検討している方、野左根選手の言葉を信じるならば、まずはストックでR1のポテンシャルを堪能してください。そしてしっかり練習し、操作は極力「丁寧」に!
 
 
 


 


〈PROFILE〉
野左根航汰選手(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)

故阿部典史の「チームノリック」出身。2010年にJ-GP3で全日本デビューし、2013年にJ-GP2チャンピオンを獲得。2014年からJSB1000に参戦を開始し、2016年にはポスト中須賀克行として「YAMAHA FACTORY RACING TEAM」へ加入してJSB1000初優勝を遂げるなど活躍。今年は第8戦を終えランキング4位につける。