2018.11.29

リターンのススメ

YZF-R1YZF-R6



― 「行くとこまで行って、ある意味はじけた」 ―

 
「R1か… リッターバイクでサーキット走行の経験はあまりないし… スキルはR6レベル。大のオトナがアクシデントなんて目も当てられない…」
 
これは、あるサーキット走行会に誘われた桐島ローランドさんの心の声である。
 

 
「話をいただいたときは、“どうしよう”というのが本音でした」と当時を振り返る。この弱気な発言には他にも理由があった。「10年もサーキット走行から離れている」ということ。さらには「この10年間、バイクにもほとんど乗っていない」ということが迷わせた。
 
桐島さんは16歳で免許を取得、最初のバイクはFZ400だったそうだ。バイクを離れた時期もあったが、その後はスタイルを重視しクラシックバイクを中心に乗っていた。そして2002年、満を辞してリッターバイクを購入。「もっと気持ちよく走りたいという願望があってリッターバイクを買ったんです。でも、ツーリングの行程で走る峠、普段の街中ですら自分にスキルがないことを痛感しました。思いついたのがサーキット走行会。すぐにパソコンを叩いて調べ、参加するようになりました」
 

 
「好きこそ物の上手なれ」とはよく言うがメキメキと上達し、YZF-R6を購入したのはすぐだったと言う。サーキット専用にモディファイし、月に2-3回のペースで貪るようにサーキットに通った。
「せっかく上手くなったから」ということで、2004-2005年には「もて耐」に出場するなど、新たなバイクライフは順風満帆だった。
「僕が子どもの頃はサーキットを走るなんて夢のまた夢だったけど、走行会も3本走って2万円くらい。これで夢が叶うわけで、ちっとも高いとは思いませんでした。楽しいだけでなくいいこともたくさんあって、スキルは上がるし限界を理解できるので、公道では安全運転も心がけるようなったのです」
 
さらに桐島さんのバイク熱は加熱していった。目をつけたのは大自然、オフロードだ。2005年にモンゴルラリーに出場すると、2007年には世界で最も過酷なレースの一つパリ・ダカールにチャレンジして完走。「趣味や遊びを超越した領域へ行ってしまったかもしれない」と振り返るが、まさにバイク好きの想いが沸点に到達した瞬間だった。
 
 
 

― 「バイクは変わった、僕らもまた戻れるよ」 ―

 
「ダカールで燃え尽きてしまいました… ちょうど同じ頃にリーマンショックも重なって、仕事も大変になりサーキット走行も2008年を最後に遠のいてしまったんです。さらに震災もあったでしょ。四苦八苦しながら乗り切って仕事は落ち着きましたが、その後もバイクには戻らず、今度は家族との時間を大切にするようになりました」
 
ふと気づくと10年という月日が経ち、「子どもたちも成長して、最近は一緒に遊ぶ時間が減ってね。時間はあるのにのめり込むものがなくなっていたのです。それでカートやゲームなどいろいろやってみましたが、結局ハマるものは見つかりませんでした。暇を持て余す感じでしたね」
 

 
そして冒頭の話が浮上した。
「知り合いがいるダイネーゼさんから走行会に誘われたんです。バイクも用意してくれるというので何かと思ったらR1。名前を聞いた途端にビビってしまいましたよ。もう10年前の僕ではないわけで、普通、躊躇しますよね」
 
それでも根はバイク好き、ワクワクする気持ちが不安に勝り参加を決断した桐島さんは、「決して速いわけではないですよ」と前置きしながら「普通に走れました。膝も擦ったしね。腕が錆びていなかったと言いたいところですが、10年のブランクを感じさせないくらいR1が進化していて、思ったよりも簡単で、ドキッとすることもなくて、10年前に戻れた感じでした」と大満足。
 

 
これがきっかけで、バイク熱が再燃したのはいうまでもない。
 
「追い討ちをかけるように仲間たちが最近、林道を走りはじめたりしているんですよ。それで僕もオフロードバイクを購入しちゃって、年末あたりから林道に行こうと思っているし… 実はつなぎも注文してあって、春になったらサーキット走行も再開します。体力は確かに衰えたけど感覚は戻ってくることがわかったし、バイクも助けてくれる。それから… 過去のように熱くなりすぎず、ゆっくりリターンしたいと思います」
 
これから季節は長い冬に入り、バイクシーズンはいったん落ち着くこととなる。
「僕みたいにバイクが好きだけど、乗っていない人ってたくさんいると思う。もう無理だって。でもこれから少し時間もあるから、ゆっくりとリターンを考えてみてはどうですかね。やっぱり面白いから。もう一回遊んでみるものいいもんです」と桐島さん。
 
春に向けバイクたちが手ぐすねひいて待っている。もちろんR6もR1も。
 
 
 


 


〈PROFILE〉
桐島ローランド

1968年横浜生まれ。NYU(ニューヨーク大学)写真科卒業後、1991年よりNYでフォトグラファーを始める。帰国後は雑誌、広告、TV-CM、PVなど幅広く活躍。バイクの免許は16歳で取得。その後、もて耐2年連続完走、パリダカ完走。
最近は大型ロードバイクがメイン。英国一周など、グランドツーリングを行いつつ、オフロードでラリーも楽しんでいる。
今年10年ぶりにサーキットへリターンを果たした。