2019.07.19

History of R6 – 2008 YZF-R6

YZF-R6



この記事は、モーターサイクルマガジン「ヤングマシン」の編集部より、当時の取材記事や写真が特別に提供され作成されています。

 
 

わずか2年でフレームから刷新。さらなる先鋭化を果たす

 
 
<コンセプト&アウトライン>
より戦闘力を高め、ライバルを突き放す

 

 
2006年モデルでスタイリングをはじめ、エンジン、シャシーとも大胆に刷新されたYZF-R6。
同じ年、スズキはGSX-R600を、翌2007年にはホンダがCBR600RR、カワサキがニンジャZX-6Rをフルモデルチェンジしており、600ccクラスのスーパースポーツはますます熱を帯びてきた。
 
そんな中、ヤマハは前回のモデルチェンジからわずか2年後の2008年、再びYZF-R6に大掛かりな手を加える。
スタイリングは先代のアイデンティティを踏襲しながら、“マス・フォーワード・ムーブメントとミニマムイメージ”をテーマに新デザインを採用。
サイドカウルにあったエアインテーク状の造型が省略されたのをはじめ、アグレッシブなイメージを受け継ぎながらも全ての外装パーツが新作に置き換えられた。
 
同様に、2006年モデルと同じように見えるアルミツインスパーのデルタボックスフレームも、剛性と強度バランスの一新をコンセプトに新作となっている。
シートレール(リヤフレーム)は量産2輪車初となるマグネシウム製で、これはヤマハ独自のCFマグネシウムダイキャスト技術によるものだ。
 
先代で新作となった599cc水冷並列4気筒エンジンは、2007年モデルのYZF-R1で採用されたYCC-I(ヤマハ電子制御インテーク)を新採用。
また、エンジン内部については、新作ピストンによって圧縮比を12.8:1から13.1:1へと高め、それに伴いクランクシャフトおよびコンロッドの軸受けの材質変更など細部を見直している。
 
この4代目YZF-R6が登場する前年の2007年は、7月に国内の馬力自主規制が撤廃されており、二輪業界にとって記念すべき年となった。
これを受けてヤマハは、2009年にYZF-R1の国内仕様を投入する。各種規制の関係で最高出力はフルパワーの182psから145psへと低減していたが、R1が正規ラインナップで買えるとあって日本市場は大いに盛り上がった。
 
 
 
<エンジン>
可変ファンネルを採用。圧縮比はヤマハ市販車中最高値に!

 

 
3代目でボア×ストロークをφ67×42.5mmとしたYZF-R6の水冷並列4気筒エンジン(ちなみに当時の国内4メーカーの600ccスーパースポーツは、全てのこのボア×ストローク値を採用しているのが興味深い)。
 

 
2008年型で新採用されたYCC-I(ヤマハ・チップ・コントロールド・インテーク)は、エンジン回転数やスロットル開度に応じてエアファンネル(吸気管)の長さをロングまたはショートに切り替えるシステムだ。
それぞれの吸気管長で生まれるトルクとパワー曲線を相互に補完するのが目的で、これによって低中回転域のトルクを向上し、高回転域でのパワーを増長。加えてパワーバンドの拡張に成功するなど、エキサイトメントな走りをさらに際立たせている。
 
エンジン内部については、新作ピストンの採用によって圧縮比を12.8:1から13.1:1へと高めている。
これはヤマハ市販車史上において最高値であり、かなり振り切ったマシンであることが容易に想像できるだろう。
この高圧縮比化に伴い、クランクシャフトおよびコンロッドの軸受けベアリングの材質と寸法を変更したほか、吸排気バルブスプリングを疲労強度に優れる素材に置き換えたり、硬度に優れる表面処理を施したカムチェーンを新たに採用するなど、細部を見直している。
 
その他の補機類については、3代目で新採用した電子制御スロットルのYCC-Tについて、制御機能を高めてスムーズかつコントロール性のいい特性を引き出している。
さらに、2番と3番エキパイをつなぐ連結パイプの穴径を拡大してパワーおよびトルク特性を向上。サイレンサーの形状変更によるコンパクト化などを実施している。
 
 
<シャシー>
剛性バランスを改めた新作フレーム。シートレールはマグネシウム製に

 

 
世界初となるオールキャスト製フレーム(シートレール、スイングアーム含む)の2代目から、一部にプレス材を採用する3代目へと進化してきたYZF-R6のシャシー。
4代目となる2008年モデルは、見た目の印象こそ前作から変わっておらず、継続採用かと思っていた人も多いことだろう。だが、実はゼロベースで見直された完全な新作なのだ。
 
基本骨格は踏襲しつつ、鋳造部材の剛性を見直し、プレス材の形状と板厚を変更。これによって得られた高次元な剛性バランスによって、操縦安定性が大幅に高まっている。
 

 
また、4代目で注目すべきはシートレールである。前作もダイキャスト製だったが、2008年モデルでは材質をアルミからマグネシウムへと変更している。
これはCFマグネシウムダイキャスト技術の成せる業で、車両の重心から離れた部分を軽くすることができ、その結果としてマスの集中化を促進することに成功している。
 
さらに、スイングアームおよび倒立式フロントフォークの剛性バランスを最適化したり、新設計のアルミ鍛造アンダーブラケットの採用、さらにリヤショックブラケットの軽量化などを実施。外観の印象が3代目と似ているのであまり変わっていないように見えるが、実は大幅に進化しているのだ。
 
こうした細かい積み重ねの甲斐があって、翌2009年にはカル・クラッチローがスーパースポーツ世界選手権でチャンピオンを獲得。
これはヤマハにとって2001年以来の快挙である。2010年にはエアクリーナーとサイレンサーを変更するなどマイナーチェンジを実施。
この4代目は2017年にフルモデルチェンジするまで9シーズンも生産が続けられたのだ。
 

主要諸元 ヤマハYZF-R6(2008年式)
全長(mm) 2040
全幅(mm) 705
全高(mm) 1100
軸間距離(mm) 1380
キャスター角 24°
トレール(mm) 97
シート高(mm) 850
車両重量(kg) 166(乾燥)
燃料タンク容量(ℓ) 17.3
エンジン種類 水冷並列4気筒
弁形式 DOHC4バルブ
排気量(cc) 599cc
内径×行程(mm) 67.0×42.5
圧縮費 13.1
最高出力 129ps/14500rpm(ラムエア作動時は135ps)
最大トルク 6.71kg-m/11000rpm(ラムエア作動時は7.05kg-m)
変速機形式 6段リターン
変速比・1速 2.583
変速比・2速 2.000
変速比・3速 1.667
変速比・4速 1.444
変速比・5速 1.286
変速比・6速 1.150
1次減速比 2.073
2次減速比 2.813
前ホイールトラベル 115
後ホイールトラベル 120
タイヤサイズ前 120/70ZR17
タイヤサイズ後 180/55ZR17

 

 
 


 

〈文責〉
ヤングマシン編集部

大屋雄一(おおや・ゆういち)

 

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