2019.05.31

History of R6 – 2006 YZF-R6

YZF-R6



この記事は、モーターサイクルマガジン「ヤングマシン」の編集部より、当時の取材記事や写真が特別に提供され作成されています。

 
 

過熱する600戦線をリードすべく最先端技術を投入した第3世代

 
 
<コンセプト&アウトライン>
兄貴分・R1を追い越す進化

 
600ccクラスの量産市販車によって争われるスーパースポーツ世界選手権。
FIM公認となった1999年からマニュファクチャラーで3連覇、さらに2000年にはライダースチャンピオンも獲得するなど、ツイスティロードでのエキサイトメントな走りだけでなく、サーキットにおいても戦闘力の高さを世界中にアピールしたYZF-R6。
2003年に初のフルモデルチェンジを実施して第2世代となり、2005年にはフロントフォークを正立式から倒立式へ、フロントキャリパーのラジアルマント化やスロットルボディ径の拡大に伴う最高出力の微増(117→120ps)などの大掛かりなマイナーチェンジを実施している。
そして2006年、2度目のフルモデルチェンジで第3世代へと進化した。
 

 
刷新されたスタイリングは、今日まで続くレイヤードカウルの走りとも言えるもので、プレスリリースにはウイングレットやサイドスポイラーなど、4輪のレースシーンでメジャーな空力パーツの名称が次々と登場する。
極端に短いミッドシップレイアウトのマフラーに代表されるように、マスの集中化を念頭においてデザインされており、乾燥重量は先代の162kgから161kgへとわずか1kgしか軽くなっていないが、見た目にはそれ以上の軽量化を果たしているような印象を受けるだろう。
 
第3世代のYZF-R6における最大のポイントは、よりショートストローク化された新型エンジンに組み合わされる電子制御スロットル“YCC-T(ヤマハ・チップ・コントロールド・スロットル)”だ。
これはモトGPレーサーYZR-M1の先進技術をフィードバックしたものであり、2輪の量産市販車が採用するのはこれが初となる。さらに、スリッパークラッチやチタンバルブ、圧側の減衰力を高速側と低速側の2系統で調整可能な前後ショックユニットなど、技術面において兄貴分のYZF-R1を追い越していた部分も多く、当時のスーパースポーツ世界選手権がいかに白熱していたかがうかがい知れよう。
なお、同じ年にスズキはGSX-R600をフルモデルチェンジ。さらにイギリスのトライアンフは、デイトナ600を4気筒600ccから3気筒675cc化するなど大胆に刷新し、新たにデイトナ675を発表している。
 
 
 
<エンジン>
レッドゾーン1万7500rpm!世界初の電スロも採用

 

 
リッターあたりに換算すると200ps、レッドゾーンは1万5500rpmからと、高出力高回転型として登場したYZF-R6の水冷DOHC4バルブ4気筒エンジン。
第3世代では全面的に刷新され、ボア×ストロークは先代のφ65.5mm×44.5mmからφ67mm×42.5mmへと、さらにショートストローク化された。
最高出力は7psアップの127psとなり、その発生回転数は1万3000rpmから1万4500rpmへ。ちなみにレッドゾーンは1万7500rpmからで、タコメーターは2万rpm(!)まで刻まれるなど、かつての250cc4スト4気筒のレーサーレプリカを彷彿させる超高回転型となった。
 

 
シリンダーヘッドは吸気ポートをよりストレート化するために、バルブ挟み角を従来の28°(吸気側14°、排気側14°)から23.75°(吸気側11.5°、排気側12.25°)へと狭めている。
バルブはクロムナイトライドコーティングを施したチタン製となり、バルブ径は吸気側はφ25mmからφ27mmへ、排気側はφ22mmからφ23mmへとそれぞれ拡大している。付け加えると、軽量なアルミリテーナーを採用するのもこの2006年型からだ。
 

 
ショートスカートのアルミ鍛造ピストンは高さが37.5mmしかなく、ピストンピンの小径化と合わせて1セットあたり13gもの軽量化を達成。圧縮比は12.4:1から12.8:1へと高められている。
ジャーナル径をφ30mmからφ31mmへと拡大したクランクシャフトは、慣性重量を26%も減らし、超高回転に対応している。カムチェーンテンショナーはセミ油圧式に変更され、6段のクロスミッションに組み合わされるクラッチはスリッパータイプとなった。
 

 
さて、注目のYCC-Tについて。先代が採用していたフリーピストン(サクションピストン)併用式のFIは、スロットルボディ内にメインとサブという2枚のバルブがあり、メインの1枚をライダーがワイヤーで直に動かし、サブの1枚はエンジンからの負圧によって自動的に上下していた。
これに対してYCC-Tはバルブが1枚しかなく、それをモーターによって駆動する仕組みだ。バルブの開き具合はライダーのスロットル開度やその速さ、エンジン回転数、ギヤ段数、速度、水温、大気圧、吸気圧などから3つのCPU(トータルの容量は従来の約5倍)が総合的に演算する。
超高回転高出力型でありながら、谷のないスムーズなパワーデリバリーを実現できたのは、このYCC-Tによるところが非常に大きい。
 

 
マフラーは、サイレンサーボディにチタンを採用したショートタイプで、1985年登場のFZ600から続くヤマハの4気筒600ccの歴史の中で初めて排気デバイスのEXUPを採用。
そのほか、空気の流れを30%アップしたラウンドタイプのラジエターや、高性能なオイルポンプおよびウォーターポンプ、ユーロ3をクリアするためのトリプル三元触媒、コンパクトなACマグネトー、アイドルスピードコントロールなど、変更点は多岐にわたっている。
 
 
 
<シャシー>
さらに高剛性化したフレーム。サスペンションも高級化

 

 
2輪量産市販車として世界初となるオールキャスト製フレーム(シートレール、スイングアーム含む)で話題を集めた前作だが、第3世代では性能を追求するためこれにこだわらず、一部にプレス材を採用した。
 
具体的には、フレームについてはモナカ構造としたメインチューブの外側と、同じくスイングアームの外側にアルミプレス材が使われている。これにより前者は縦剛性が48%、横剛性は25%、ねじれ剛性は6%もアップしている。
このハイブリッドタイプのフレームは、先代が“デルタボックスⅢ”と呼ばれていたので“Ⅳ”を襲名するかと思われたが、プレスリリースには単に新型デルタボックスと書かれているのみだ。
 
最新のYZR-M1のディメンションを踏襲し、ステアリングヘッドからスイングアーム、リヤアクスルまでを直線的に結ぶストレートコネクションレイアウトを採用。前作からピボット位置が20mmも高くなっているのがポイントだ。
1380mmというホイールベースや24°のキャスター角は前作から変わらないが、トレール量は86mmから97mmへとより近代的になっている。なお、前輪分布荷重は52.5%だ。
 

 
フロントフォークは2005年モデル、第2世代の後期型で倒立式となり、第3世代では圧側減衰力調整が2ウェイタイプの高性能タイプへと進化した。リザーバータンク付きのリヤショックも同様であり、YZF-R1よりも一足早く採用されたことが注目された。
フロントキャリパーは2005年モデルでラジアルマント化されており、この2006年型では新型のパッドを採用している。
 

 
この第3世代のYZF-R6、スーパースポーツ世界選手権でも、また全日本ロードレース選手権のST600クラスでもチャンピオンを獲得することはかなわなかった。
だが、年代的にはヤマハに移籍したV・ロッシ選手が2年連続でタイトルを獲得した2004~2005年ごろのYZR-M1のノウハウがフィードバックされていると考えられ、新しい潮流を作ったスタイリングも含め、今なお評価の高い1台だ。
 

主要諸元 ヤマハYZF-R6(2006年式)
全長(mm) 2040
全幅(mm) 700
全高(mm) 1100
軸間距離(mm) 1380
キャスター角 24°
トレール(mm) 97
シート高(mm) 850
車両重量(kg) 161(乾燥)
燃料タンク容量(ℓ) 17.5
エンジン種類 水冷並列4気筒
弁形式 DOHC4バルブ
排気量(cc) 599cc
内径×行程(mm) 67.0×42.5
圧縮費 12.8
最高出力 127HP/14500rpm(ラムエア作動時は133HP)
最大トルク 6.73kg-m/12000rpm(ラムエア作動時は6.93kg-m)
変速機形式 6段リターン
変速比・1速 2.583
変速比・2速 2.000
変速比・3速 1.667
変速比・4速 1.444
変速比・5速 1.286
変速比・6速 1.150
1次減速比 2.073
2次減速比 2.813
前ホイールトラベル 120
後ホイールトラベル 120
タイヤサイズ前 120/70ZR17
タイヤサイズ後 180/55ZR17

 

 
 


 

〈文責〉
ヤングマシン編集部

大屋雄一(おおや・ゆういち)

 

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