2019.04.26

History of R6 – 2003 YZF-R6

YZF-R6



この記事は、モーターサイクルマガジン「ヤングマシン」の編集部より、当時の取材記事や写真が特別に提供され作成されています。

 

車体に加えエンジンもほぼ新作
強敵に対抗すべくフルモデルチェンジ

 

 
<コンセプト&アウトライン>
トータル性能を格段に向上し
過熱するミドルSS戦線に挑む

 
YZF-R6の記念すべきデビューイヤーである1999年シーズン。
この年からFIM公認となったスーパースポーツ世界選手権において、ヤマハのニューカマーはいきなりマニュファクチャラーチャンピオンを獲得。
翌2000年はドイツ人のイェルグ・トイヒャートがライダースチャンピオンに、さらにマニュファクチャラーでも2連覇を達成した。ヤマハはこのクラスナンバー1の地位をさらに盤石なものとするべく、2001年に重要なマイナーチェンジを実施する。
まずエンジンは、鍛造ピストンのハイトを0.5mm高いものに、コンロッドは0.5mm短いものに変更。加えてエキパイやバッテリー、CDIユニットなど補機類を軽量なものに換装している。
一方、車体ではテールランプのLED化に伴い、シートカウルのデザインを変更。さらにステムシャフトとナットをアルミ製としたり、R1タイプのミラーや新型メーターの採用、ハンドルバーの角度の見直しなど変更点は多岐にわたり、その結果1.5kgもの軽量化を達成している。
レースのほうは惜しくもライダースチャンピオンこそ逃すものの、マニュファクチャラーでは見事に3連覇を達成した。
 
2003年は600ccスーパースポーツにおけるビンテージイヤーといっても過言ではないだろう。
まずホンダは、前年からスタートしたモトGPクラスのワークスマシン、RC211Vを彷彿させるスタイリングのCBR600RRを投入。
カワサキはニンジャZX-6Rをフルモデルチェンジし、倒立式フロントフォークやラジアルマウントキャリパーなど最新装備を惜しげもなく導入する。
イギリスのトライアンフは、水冷並列4気筒を搭載するTT600をフルモデルチェンジし、ネーミングをデイトナ600に改めた。
こうした背景からも、当時のミドルクラスにおけるスーパースポーツの過熱ぶりが伝わってくるだろう。
 
YZF-R6は2003年、初のフルモデルチェンジを実施する。
基本コンセプトを維持しつつ旋回性能と動力性能の両方を高めるため、シャシーは全面刷新、さらにエンジンも約90%のパーツが新作となった。
フレームに関してはシートレールやスイングアームまでが全てアルミ鋳造製となり、これは量産2輪車では初のことだ。
エンジンについては、欧州の排ガス規制ユーロ2をクリアする関係で、最高出力は120psから117psへ、また最大トルクも微減となっているが、ラム圧併用時の最高出力は123psを公称。
付け加えると、乾燥重量は168kgから162kgへと6kgもダウンしており、トータルでのパフォーマンスは大幅にアップしていると言っていいだろう。
 
 


 
<エンジン>
90%のパーツを新作。燃料供給はFIに

 
リッターあたり200psという、まさに鳴り物入りで登場したYZF-R6。
その599cc水冷並列4気筒エンジンは、ボアφ65.5mm×ストローク44.5mmをはじめ、圧縮比12.4:1や燃焼室形状など基本スペックはそのままに、2003年モデルでは構成部品の約9割を新作に置き換えている。
主な狙いは吸排気効率の向上とポンピングロスの低減にある。
 
最も大きな変化は、燃料供給がキャブレターからフューエルインジェクション(FI)になったことだ。
FI化は旗艦モデルであるYZF-R1が1年早くに実施しており、この2002年型R1と同じフリーピストン(サクションピストン)併用式のFIシステムを採用することに。
なお、スロットルボディ径は負圧キャブCVKD時代のφ37mmからφ38mmへと拡大された。
これに伴いエアクリーナーボックスは容量を7.3lから7.6lへとアップ。さらにFIとの最適化を図るため、吸気通路系の膨張容量や絞り面積を見直し、さらなる性能向上を達成した。
 

 
エンジン内部では、シリンダー一体型のアッパークランクケースに革新的な技術が採用された。
従来はシリンダーに圧入したライナーにメッキを施していたが、新型ではダイキャスト製シリンダーの内壁に直接メッキ処理を行う直メッキシリンダーを採用。
ライナーレスとすることで放熱性と剛性が向上した。加えてロアクランクケースでは、ポンピングロスを減らすために各気筒間をつなぐ通路面積を拡大している。
 
カムシャフトはハイリフト化(7.8mm→8.2mm)され、クランクシャフトはバランスの最適化によりジャーナルへの負担を軽減。
またピストンリングについては、ランド剛性アップのほかトップリングの肉厚およびテンションの見直しなどにより、リング挙動の安定化を促進している。
 

 
排気系も一新された。エキパイは4in2in1レイアウトのステンレス製で、管長やバイパスパイプの位置を変更。
サイレンサーボディはアルミ製となり膨張室比を変更、インナーパイプはチタン製となった。ユーロ2をパスするためキャタライザーを追加していながら、トータルでは1kgもの軽量化を達成している。
 
そのほか、従来と同サイズながら冷却効率を約10~40%も向上させたラウンドタイプのラジエターや、希土類マグネトーの採用によるACM薄幅化、クランクケースカバーの形状見直しによるオイル戻り特性の改善、シフト剛性の見直しおよびシフト系回転マスの低減、樹脂製エンジン系パーツの採用など、変更点は多岐にわたっている。
こうした各部の地道な改良のおかげで、8000rpmからの二次曲線的な加速感や、1万2000rpmからもストレスなく伸びきるフィーリングを実現することに成功したのだ。
 
なお、2005年にはスロットルボディ径をさらに拡大(φ38mm→φ40mm)し、それに伴いエアファンネル径をφ39.4mmからφ41.6mmとするなどのマイナーチェンジを実施。エンジン出力を再び120psへと戻している。
 
 

 
<シャシー>
生産技術の向上を活かしてさらに先鋭化

 
全面刷新されたシャシーにおける中心的存在はメインフレームだ。
デルタボックスⅡと呼ばれていたアルミツインスパーフレームは、2003年型でオールキャスト製の”Ⅲ”へと進化したのだ。これは鋳造条件を精密にコントロールするヤマハ独自の技術によって生み出されたもので、溶接箇所は従来の16か所から2か所へと激減、コストを大幅に引き下げることに成功した。
このデルタボックスⅢは特にねじれ剛性に優れ、従来比で約50%も高められた。これはホモロゲーションモデルのYZF-R7と同レベルであり、さらにエンジンマウント方式が前側3点アジャスト方式からダイレクト締め付け方式になったことと併せて、トータルでの剛性は飛躍的にアップした。
 

 
さらに、別体式のシートレールやスイングアームも高度な鋳造技術であるCFアルミダイキャストによって作られることに。滑らかな曲面形状が特徴であり、最小肉厚はスイングアームで2.5mm、シートレールに至っては2.0mmという薄さを実現している。
 
ちなみに、1998年12月にホンダがVT250スパーダというアルミ鋳造フレームを採用したモデルを発売しているが、シートレールやスイングアームまでアルミ鋳造パーツとした量産2輪車はこの2003年型YZF-R6が世界初となる。
 
ハンドリングを左右するディメンションも見直されている。ホイールベースおよびキャスター角はそのままに、フォークオフセットを40mmから35mmとし、トレール量を81mmから86mmへと増やしている。
また、ドライブスプロケット軸とスイングアームピボットシャフトの距離を96mmから86mmへと10mm接近させ、加速時のチェーン張力における駆動力への影響を低減。併せてスイングアーム長を10mm増やし、路面反力に対するバランスを最適化している。
 

 
φ43mm正立式フロントフォークはKYB製のフルアジャスタブルで、ホイールトラベル量を130mmから120mmへ。ブレーキについてはリヤのキャリパーが2ピストンからニッシン製のシングルピストンへと改められた。
ホイールはハブからスポークまでを一つの連続した構造面として処理する薄肉設計の新型5本スポークで、トータルで4%の軽量化を達成。
そのほか、リヤショックの構成パーツやステップバーをアルミ鋳造から同鍛造品として外観品質の向上を図っている。
 

 
一新されたスタイリングで異彩を放っているのはヘッドライトだ。ガトリングビーム(スタンレー電気の登録商標)と名付けられたそれは、メイン、ポジションバルブとも一般的なフィラメント球ながら、光の広がりが均一な優れた配光特性を有するのが特徴だ。
加えて、後端部の形状を見直した燃料タンクと座面を拡大したシートにより、コーナリング時の積極的な体重移動とニーグリップのしやすさが向上したのも見逃せない。
 
なお、2005年には倒立式フロントフォークやラジアルマウントキャリパーを新採用したり、フロントタイヤを120/60ZR17から一般的な120/70ZR17に変更するなどの大掛かりなマイナーチェンジを実施。
さらに、2004年シーズンにヤマハ入りしたバレンティーノ・ロッシ選手のイメージカラーをまとうテルミニョーニマフラー付きの“YZF-R46”が、世界限定500台で販売されたことも忘れてはならないだろう。
 
 

主要諸元 ヤマハYZF-R6(2003年式)
全長(mm) 2025
全幅(mm) 690
全高(mm) 1090
軸間距離(mm) 1380
キャスター角 24°
トレール(mm) 86
シート高(mm) 820
車両重量(kg) 162(乾燥)
燃料タンク容量(ℓ) 17
エンジン種類 水冷並列4気筒
弁形式 DOHC4バルブ
排気量(cc) 600cc
内径×行程(mm) 65.6×44.5
圧縮費 12.4
最高出力 117ps/13000rpm
最大トルク 6.78kg-m/12000rpm
変速機形式 6段リターン
変速比・1速 2.846
変速比・2速 1.947
変速比・3速 1.556
変速比・4速 1.333
変速比・5速 1.190
変速比・6速 1.083
1次減速比 1.955
2次減速比 3.000
前ホイールトラベル 120
後ホイールトラベル 120
タイヤサイズ前 120/60ZR17
タイヤサイズ後 180/55ZR17

 

 
 


 

〈文責〉
ヤングマシン編集部

大屋雄一(おおや・ゆういち)

 

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