2019.04.12

History of R6 – 1999 YZF-R6

YZF-R6



この記事は、モーターサイクルマガジン「ヤングマシン」の編集部より、当時の取材記事や写真が特別に提供され作成されています。

 

R1のインを刺せる!
レースも視野に置く超機動600

 

 
<コンセプト&アウトライン>
シリーズ末弟ながら兄貴分とは対照的

 
1997年の秋、ヤマハはミラノショーにおいてエポックメイキングなモデル「YZF-R1」を発表する。GPレーサーYZR500のロングスイングアーム・ディメンションを参考にシャシーを設計し、それを実現するために前後長の極端に短い998ccの水冷並列4気筒エンジンを新開発した。
最高出力150ps、乾燥重量177kg、ホイールベース1395mmという、それまでの大排気量スポーツバイクの常識を根底から覆すほど軽量コンパクトかつハイパワーなこのニューモデルは、究極のエキサイトメントが味わえるマシンとして世界中のライダーを熱狂させた。
事実、初年度の1998年はヨーロッパにおいて600cc以上で最も売れたスーパースポーツとなっており、そのスマッシュヒットぶりが想像できるだろう。
 
ヤマハはさらに1998年の秋、インターモトにおいてYZF-Rシリーズの第2、第3弾として「YZF-R6」と「YZF-R7」を同時にデビューさせる。
YZF-R6は1994年に登場したYZF600Rサンダーキャットの後継機種にあたり、ブランニューの599cc水冷並列4気筒エンジンを搭載。一方、YZF-R7(749cc)は500台のみが限定生産されたホモロゲーションモデルである。
ネーミングおよび排気量からしてR6はシリーズの末弟ということになるが、フラッグシップのR1と決定的に異なるのはレース参戦も視野に入れて開発されたということだ。
 
当時、すでにナナハンクラスは有名無実化しており、スーパーバイク世界選手権のレギュレーションが4気筒750ccを上限としていたため、YZF-R7が台数限定という形で作られたのだ。
その一方で、1990年にエントリーレースとして600ccクラスのマシンを対象としたヨーロッパ選手権がスタート。これが人気を集めたため、1997年からスーパースポーツワールドシリーズとして開催され、1999年にはFIM公認の世界選手権へと格上げとなった。
R6は時期的にもこのレースでの勝利が義務付けられていることは明白であり、まだ出場できるレースがなく、軸足をストリートに置いて純粋にツイスティロード最速を目指して開発されたR1とは対照的だ。
ちなみに2000年には、このスーパースポーツ世界選手権においてイェルグ・トイヒャートというドイツの選手がYZF-R6でシリーズチャンピオンに輝いている。
 
そうした背景もあり、R6には驚くべきスペックが与えられている。その最たるものが120psという最高出力だ。
前作のYZF600Rサンダーキャットが100psだったので実に20psものアップであり、さらに言うとYZF-R1誕生のきっかけにもなったホンダのCBR900RRファイヤーブレード、この初期型である1992年モデルが893ccから124psを発揮していたので、それに比肩するパワーなのだ。リッターあたりに換算すると200ps(!)であり、シリーズの旗艦であるR1を優に超える。
これほどのエンジンを乾燥重量169kg、ホイールベース1380mmという軽量コンパクトなシャシーに搭載しており、「R1のインを刺せるマシン」という表現はまさに的を射ていると言えるだろう。
 
 


 
<エンジン>
R1の思想を受け継ぎつつ、リッターあたり200psを発生

 
改めてスペックを見直してみよう。YZF600Rサンダーキャットが最高出力100psを1万1150rpmで発生するのに対し、YZF-R6は120psを1万3000rpmで、最大トルクを1万1150rpmで発揮する。
付け加えるとレッドゾーンは1万5500rpm(!)からであり、いかに高回転高出力型であるかが分かるだろう。
 
これを実現するために新設計されたパワーユニットは、ボア×ストローク比がR1の0.784に対して0.679と、よりショートストロークに設定されている。エンジンの前後長を詰めるのに有利な主要3軸の三角形レイアウトをはじめ、剛性を確保しやすいシリンダー一体型のアッパークランクケース、メッキシリンダーなど、基本設計は一足先に登場したR1に準じている。
ただし、R1がハイフローポートや長めのボア×ストローク比、小さめのバルブ径などでレスポンスを重視しつつ、5バルブで高回転域でのパワーを引き出しているのに対し、R6は全てが高回転高出力化を目指して設計されている。
最も特徴的なのは走行風で吸気を過圧するラムエアインテークで、その先に続くのはスロットルポジションセンサー付きのケーヒン製φ37mmCVRDキャブと、R1よりもストレートな形状の吸気ポートだ。バルブ駆動は直押し式で、軽量なバルブリフターはφ24mmと大きめ。VXという新素材によるバルブスプリングや中空カムシャフト、鍛造ピストン、浸炭コンロッドなども高回転型エンジンを支える重要なファクターだ。
そのほか、750ccクラスのトルクをも許容する湿式クラッチや水冷式オイルクーラー、軽量コンパクトなスターターモーター、ダイレクトイグニッションなど、ミドルクラスでありながら当時の最新テクノロジーが惜しみなく採用されている。
なお、アルミサイレンサーを組み合わせた4in2in1レイアウトの排気系には、ヤマハお得意の排気デバイスEXUPは採用されていない。それでも低回転域から十分以上のトルクを発生しており、さらに抜けがいい、軽量化に貢献するなどのメリットも見逃せない。
 
 

 
<シャシー>
さらに有機的に進化したデルタボックスⅡフレーム

 
YZF-R1が参考にしたYZR500のロングスイングアーム・ディメンション。これの最大のメリットは、コーナーの立ち上がりなどトラクションが掛かった状態での路面追従性の高さである。
短いスイングアームよりもリヤタイヤの接地点の移動量が少なく、結果的にスリップしにくい。加えてショートホイールベースなので、優れた旋回力と高いトラクション性能を誰もが楽しめるのだ。
 
R6がわざわざブランニューエンジンを設計したのは、R1で培ったこのディメンションを踏襲するためでもある。
アルミツインスパーフレームは自由曲面と肉厚徐変という設計手法を用いた“デルタボックスⅡ”であり、この名称こそR1と共通であるが、R6はヘッドパイプからスイングアームピボットまでの距離を徹底的に詰めた進化形であり、形状だけでなく肉厚でも剛性をコントロールしている。
ヘッドパイプからエンジンハンガーまでとピボット部分を鋳造パーツとするなど、部材を極力減らすことで軽量化とコスト削減も追求している。シートレールはボルトオン式で、スイングアームはアルミトラス構造。ヘッドベアリングはローフリクションタイプだ。
 
フロントフォークは正立式ながらインナーチューブ径はR1よりも太いφ43mm。リヤショックはピギーバック式のリザーバータンクを持ち、前後ともフルアジャスタブルとなっている。
フロントブレーキはR1と同サイズのφ298mmフローティングディスクと、モノブロック式対向4ピストンキャリパーという強力な組み合わせ。一方のリヤはコントロール性を重視し、φ220mmディスクと2ピストンキャリパーのセットとなっている。
 
ホイールベースはR1よりもさらに15mm短い1380mmであり、最大バンク角は56度を公称。1年遅れてデビューしたこともあり、旗艦であるR1よりも進化している部分も多く、ミドルクラスという枠を超越したヒット作となった。
 

 
 

主要諸元 ヤマハYZF-R6(1999年式)
全長(mm) 2025
全幅(mm) 690
全高(mm) 1105
軸間距離(mm) 1380
キャスター角 24°
トレール(mm) 81
シート高(mm) 820
車両重量(kg) 169(乾燥)
燃料タンク容量(ℓ) 17
エンジン種類 水冷並列4気筒
弁形式 DOHC4バルブ
排気量(cc) 599cc
内径×行程(mm) 65.6×44.5
圧縮費 12.4
最高出力 120ps/13000rpm
最大トルク 6.94kg-m/11500rpm
変速機形式 6段リターン
変速比・1速 2.846
変速比・2速 1.947
変速比・3速 1.556
変速比・4速 1.333
変速比・5速 1.190
変速比・6速 1.083
1次減速比 1.955
2次減速比 3.000
前ホイールトラベル 130
後ホイールトラベル 120
タイヤサイズ前 120/60ZR17
タイヤサイズ後 180/55ZR17

 

 
 


 

〈文責〉
ヤングマシン編集部

大屋雄一(おおや・ゆういち)

 

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