2018.07.06

History of R1 – 2012 7th GENERATION

YZF-R1



この記事は、モーターサイクルマガジン「ヤングマシン」の編集部より、当時の取材記事や写真が特別に提供され作成されています。

 

R1初のトラコン採用
細部リファインで熟成度を高める

<コンセプト&アウトライン>
SBKでの盛衰を踏まえ、電子デバイスを投入へ

量産2輪車初となるクロスプレーン型クランクシャフトを採用した2009年。YZF-R1はスーパーバイク世界選手権においてヤマハとして初めてライダーズチャンピオンを獲得したのをはじめ、FIM世界耐久選手権、全日本ロードレース選手権の3タイトルを制覇した。付け加えると、ロードレース世界選手権のモトGPクラスにおいても、バレンティーノ・ロッシ選手がワークスマシンのYZR-M1(YZF-R1と同じくクロスプレーン型クランクシャフト採用の水冷並列4気筒エンジンを搭載)で年間王者に輝いており、この年はまさにヤマハ無双イヤーだった。

だが、翌2010年と2011年は、YZF-R1にとって不遇の時代だったと言わざるを得ない。スーパーバイク世界選手権において、2010年にライダーズ、マニュファクチャラーズの両方でタイトルを獲得したのはアプリリア、2011年はドゥカティであり、ヤマハを含む日本の4社は欧州メーカーの後塵を拝していたのだ。その原因を分析してみると、ひとつは電子デバイスの差が挙げられるだろう。2009年にデビューしたBMWのS1000RRに代表されるように、海外勢は早い段階からトラクションやウイリーコントロールなどを積極的に採用。これに対し国内メーカーのスーパースポーツが最初にトラコンを採用したのは、2011年にフルモデルチェンジしたZX-10Rであることから、単純に2シーズン以上の遅れが生じていたことになる。このカテゴリーは最高出力がほぼ横並びであることから、有り余るパワーをどう扱いきれるかが戦績に直結する。レースでは量産市販車のシステムがそのまま使われるわけではないが、電子デバイスに長けているか否かは決して小さくはない問題であろう。

2012年、ヤマハはついにYZF-R1にTCS(トラクションコントロールシステム)を導入。合わせてフロントカウルとサイレンサーまわりのデザインを変更した。また、この2012年モデルでも最高出力145psの国内仕様が141万7500円で継続販売されたほか、ヤマハのロードレース世界選手権参戦50周年を記念した特別カラーの「WGP50th Anniversary Edition」が120台限定(147万円)で販売されたのも大きなトピックと言えるだろう。

 

<エンジン>
D-MODE+TCSで21通りの走りを得る

2004年モデルで全面刷新され、2007年にシリンダーヘッドを5バルブから4バルブへ、2009年にはクロスプレーン型クランクシャフトを採用したYZF-R1のパワーユニット。2012年モデルで新たに採用されたTCSは、モトGPマシンYZR-M1の設計思想を反映したもので、好みや路面状況に応じて介入度を7段階(オフを含む)から選択できるというものだ。前輪と後輪の車速差からリヤタイヤの空転状態を察知し、点火時期や燃料噴射量、スロットル開度などを統合制御する。加えて、このTCSは2009年モデルから導入された3種類の走行モードが任意に選べる「ヤマハD-MODE」とも連携しており、合計で21通りもの走行モードが選択できるようになったのだ。

合わせて、電子制御スロットルYCC-T(ヤマハ・チップ・コントロール・スロットル)の制御マップやFIの噴射マップ、点火時期マップの最適化も図られており、発進特性や低中回転域でのコントロール性、燃費が向上しているのも見逃せない。

なお、シートカウルの真下にレイアウトされたサイレンサーは、エンドキャップの形状を三角形から六角形とし、さらにプロテクターをコンパクト化。よりシャープなイメージと凝縮感の獲得に成功している。

この年、ドゥカティは1199パニガーレを発表。1198ccの水冷90度V型2気筒は195psをマークした。また、前年にフルモデルチェンジしたカワサキのZX-10Rはついに200psの大台へ。これらライバルに対し、YZF-R1のフルパワー仕様は2012年モデルも引き続き182psを公称したが、この年に全日本ロードレース選手権の年間タイトルを再び奪うと、2014年まで同一モデルでの3連覇を達成。さらに2014年には再びFIM世界耐久選手権のチャンピオンに返り咲くなど、パワーだけがレースでの勝利条件でないことを証明してみせた。

 

<シャシー>
外観/機能面ともに高められた完成度

2009年モデルで全面的に刷新されたYZF-R1のシャシー。それもあって2012年モデルは小変更に留まっている。外観ではフロントカウルの変更が大きなポイントで、エアインテーク一体型ヘッドライトの基本デザインを受け継ぎながら、エアロダイナミクスをより向上させるシャープなスタイリングに。さらに、ヘッドライトにはLEDのポジションランプを追加。グリル下側にリフレクターを配することで、R1らしい印象的なアイラインが強調されるようになった。

そのほか、アルミ製のトップブリッジは裏面のリブ形状が見直され、YZR-M1を彷彿させるデザインに。これは見た目の変化を目的としたものではなく、剛性バランスの最適化を狙ったものだ。また、アルミ製のステップバー(フットレスト)は上面の突起形状を変更。フットウエアのソールとの接触面積を増やし、フィット感を高めている。

変更点が少ないのは、それだけ2009年モデルの完成度が高かったからに他ならない。デザインについて付け加えると、2012年にドゥカティのフラッグシップが1199パニガーレに代替わりしたことで、シートカウル下にサイレンサーをレイアウトするスーパースポーツがYZF-R1のみになったのも興味深い。

 

主要諸元 ヤマハYZF-R1(2012年型・欧州仕様)
全長(mm) 2070
全幅(mm) 715
全高(mm) 1130
軸間距離(mm) 1415
キャスター角 24°
トレール(mm) 102
シート高(mm) 835
車両重量(kg) 206(装備)
燃料タンク容量(ℓ) 18
エンジン種類 水冷並列4気筒
弁形式 DOHC4バルブ
排気量(cc) 998cc
内径×行程(mm) 78×52.2
圧縮費 12.7
最高出力 182ps/12500rpm
最大トルク 11.8kg-m/10000rpm
変速機形式 6段リターン
変速比・1速 2.533
変速比・2速 2.062
変速比・3速 1.761
変速比・4速 1.521
変速比・5速 1.363
変速比・6速 1.269
1次減速比 1.511
2次減速比 2.765
前ホイールトラベル 120
後ホイールトラベル 120
タイヤサイズ前 120/70ZR17
タイヤサイズ後 190/55ZR17

 


 

〈文責〉
ヤングマシン編集部

大屋雄一(おおや・ゆういち)

 

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