2018.05.11

History of R1 – 2004 4th GENERATION

YZF-R1



この記事は、モーターサイクルマガジン「ヤングマシン」の編集部より、当時の取材記事や写真が特別に提供され作成されています。

 

リッターSS界の変革に沿い
レースでの戦闘力を大幅強化

<コンセプト&アウトライン>
1992年のCBR900RRのデビューをきっかけに誕生した“スーパースポーツ”というカテゴリー。

10年後の2001年にスズキが参入したことで国内4メーカーが出揃い、世界的にもさらに注目度が増していた。

2004年は、カテゴリー初の大変革の年だったと言っても過言ではない。スーパーバイク世界選手権の車両規則が2003年の過渡期ルールを経て、2004年から気筒数を問わず一律1000ccとなったのだ。これはつまり、公道を舞台としてきたスーパースポーツが、今後はレースベース車としても活躍することを意味している。

最初に動いたのはスズキだった。2003年にデビュー間もないGSX-R1000をフルモデルチェンジし、前年までGSX-R750のレースキットパーツとして設定していた技術を惜しみなく投入する。そして、翌2004年。カワサキは“サーキット性能ナンバー1”という明快なコンセプトを掲げ、ニンジャZX-9Rをフルモデルチェンジし、ZX-10Rをデビューさせる。さらにホンダも、CBR900RRという伝統的なネーミングに別れを告げ、ニューモデルCBR1000RRをリリースする。発表会においてレースキットパーツを同時に公開したことからも、スーパーバイク世界選手権の規則改定が、このカテゴリーのマシン開発に大きな影響を及ぼしたであろうことは想像に難くない。

2年毎にステップアップを続けてきたヤマハのYZF-R1もこの年、第2世代となるフルモデルチェンジを実施する。プロダクトコンセプトは「最もエキサイティングで美しいスーパースポーツ」で、超ショートストローク設定となった新型エンジンの最高出力は、先代から一気に20ps(!)も増えて172psへ。しかも注目すべきはその発生回転数で、従来の10500rpmから12500rpmとなり、さらに高回転型となったのだ。これは完全にサーキットでの戦闘力を視野に入れたものであり、こうしたスペックからも軸足がレース寄りになったことがうかがい知れるだろう。

車体も全面的に刷新された。2002年からモトGPクラスがスタートし、そこに参戦していたワークスマシンYZR-M1で培われたノウハウが色濃く反映されており、アルミデルタボックスフレームは「III」からIVを飛ばして「V(ヴィクトリーの意)」へと2世代分も進化した。これまでシリンダーヘッドを抱きかかえるようにレイアウトされていたツインスパー部が、ヘッドの真上を通るという非常にスリムな設計に。さらに別体式のシートレールやスイングアームにはCFアルミダイキャスト製法を用いるなど、最新技術が惜しみなく投入された。乾燥重量は先代の174kgから2kgマイナスの172kgへ。これはR1シリーズにおいて歴代最軽量であり、パワーウエイトレシオは1.0kg/psを達成した。同年にデビューしたZX-10Rが最高出力175ps、乾燥重量170kgを公称していることから、残念ながらパワーウエイトレシオにおいて新型R1はナンバー1ではないが、この数値が世界中を驚かせたことは間違いない。

 

<エンジン>
ショートストローク&ラムエア採用。しかし公道の楽しさも忘れない

エンジンは、伝統のDOHC5バルブを踏襲しつつも全面的に刷新された。

ボア径はφ74mmからφ77mmへと拡大され、ストロークは58mmから53.6mmへ。一般的にショートストローク化は高回転型を狙ったものであり、先にも触れたように最高出力の発生回転数は先代比で2000rpmも上がっている。主要3軸の三角形レイアウトこそ従来から受け継ぐが、バンク角を稼ぐべく全幅をスリムにするために背面ジェネレーターを新採用。これによりクランクシャフトの幅が23.7mm狭くなっている。付け加えるとクランク自体も16%軽くなっており、これはスロットルレスポンスの向上に寄与している。

シリンダーはこれまでアッパークランクケースと一体式だったが、2004年型ではクローズドデッキを採用するために別体式へ。ボアを3mm拡大しながらもボアピッチを4mm狭めるという大胆な設計ができたのは、シリンダー壁が薄くても強度を保てるこのクローズドデッキのおかげだ。ちなみにエンジン全体では56mmもスリムになっている。

ボア径をφ40mmからφ45mmへと拡大したスロットルボディは、負圧を利用したフリーピストン併用タイプから、サーボモーターによって可動するバルブを併用する方式へ。なお、このスロットルボディ自体も従来比で27.4mmスリムになっている。そして、吸気系で注目すべきはラムエアシステムの採用だ。先代の2002年モデルで新気取り入れダクトが追加されたが、2004年型ではヘッドライト下部という大胆な場所に吸気口を新設。速度の上昇に比例して吸気が加圧される仕組みで、マックスで最高出力は180psまで上がるという。

排気系も大胆に刷新された。右1本出しだったサイレンサーはセンターアップの2本出しに。これはエアロダイナミクスの面で有利なのと、必要な管長を稼ぐために都合のいいレイアウトだという。ちなみに、同年デビューしたCBR1000RRもセンターアップマフラーを採用している。新型R1の排気デバイスEXUPは、バタフライバルブが2軸から1軸のシンプルなタイプとなり、軽量化とバンク角の増大に貢献している。

シリンダーを40度前傾させた状態でフレームに搭載される新型エンジン。デュアルクーリングファンを備えたラウンドタイプのラジエーターや水冷式のアルミオイルクーラー、クローズドレシオ化された6速トランスミッションなど、先代から進化した部分は数多い。結果的に172psという強大なパワーを手に入れたが、新しいFIシステムによって低中回転域での扱いやすさにも磨きが掛かっており、公道での楽しさも疎かにしていない点にR1らしさが感じられるだろう。

 

<シャシー>
全幅を狭めた新フレームは、全方位で剛性を大幅向上

初代から不変のホイールベース1395mm、キャスター角24度という数値。これを受け継ぎながら、2004年型は車体に関する全てが刷新された。

注目すべきは骨格を成すデルタボックスVフレームだ。前傾シリンダーのエンジンとスリムなスロットルボディによって可能となったツインスパーの直線的なレイアウトは、全幅が464mmから395.6mmへと大胆に狭められた。一方、このフレームデザインはエンジンをストレスメンバーとして積極的に活用しづらいため、垂直方向に200%、横方向に50%、曲げ方向に30%も単体での剛性が高められている。なお、このスリムなフレームの採用によってニーグリップ部分が狭くなり、ライダーとマシンとの一体感がより高まっているのも見逃せないポイントだ。

トラスタイプの新型スイングアームは、ヤマハ独自のCFアルミダイキャスト製法によって生み出されている。従来の鋳造よりも軽量かつ強く作れるのが特徴で、さらに仕上がりが美しいのも大きな違いだ。なお、スイングアーム長は582mmから577mmへとわずかに短くなっている。

ブレーキは、2003年にモデルチェンジしたGSX-R1000を皮切りに、2004年はヤマハ、ホンダ、カワサキが一斉にラジアルマウントのフロントキャリパーを採用した。R1はヤマハ独自の一体成型MOSタイプの異径4ピストンで、ブレーキディスクはリリース時の応答性を優先してφ298mmからφ320mmへと大径化された。さらに、マスターシリンダーはブレンボ製のラジアルポンプ式となるなど、サーキット走行を意識した仕様変更となっている。

アルミキャストホイールは、従来の3本スポークから5本スポークとなり、フロント3.50×17、リア6.00×17というサイズはそのままに軽量化を達成している。特にリアについてはサイレンサーがセンターアップになったことでよく見えるようになり、美しい仕上げのスイングアームも含めて新しいR1のアイコンのひとつにもなっている。

デザインとエンジニアリングの融合をテーマとするスタイリングは、R1らしさを継承しつつもライディングポジションに至るまで全面的に見直された。なお、ヤマハは翌2005年からこのR1でスーパーバイク世界選手権に参戦し、2007年にメーカータイトルを獲得している。

 

主要諸元 ヤマハYZF-R1(2004年型)
全長(mm) 2065
全幅(mm) 720
全高(mm) 1105
軸間距離(mm) 1395
キャスター角 24°00′
トレール(mm) 97
シート高(mm) 835
車両重量(kg) 172(乾燥)
燃料タンク容量(ℓ) 18
エンジン種類 水冷並列4気筒
弁形式 DOHC5バルブ
排気量(cc) 998cc
内径×行程(mm) 77×53.6
圧縮費 12.3
最高出力 172ps/10000rpm(※1)
最大トルク 10.6kg-m/8500rpm(※2)
変速機形式 6段リターン
変速比・1速 2.533
変速比・2速 2.063
変速比・3速 1.762
変速比・4速 1.522
変速比・5速 1.364
変速比・6速 1.269
1次減速比 1.512
2次減速比 2.647
前ホイールトラベル 120
後ホイールトラベル 130
タイヤサイズ前 120/70ZR17
タイヤサイズ後 190/50ZR17

※1:ラムエア作動時は180ps/12500rpm
※2:ラムエア作動時は10.9kg-m/8500rpm

 


 

〈文責〉
ヤングマシン編集部

大屋雄一(おおや・ゆういち)

 

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