2018.06.06

History of R1 – 2002 3rd GENERATION

YZF-R1



この記事は、モーターサイクルマガジン「ヤングマシン」の編集部より、当時の取材記事や写真が特別に提供され作成されています。

 

初代の思想を継承しつつ
FI化された第一世代の最終型

<コンセプト&アウトライン>
官能性能を突き詰めながら“美しさ”をも貪欲に追求

ミレニアムイヤーとなる2000年。ヤマハ、ホンダ、カワサキの三つ巴によるスーパースポーツ覇権争いを静観していたスズキは、我々はそれに参戦しないという意思を表すかのごとく、この年GSX-R750をフルモデルチェンジした。まだスーパーバイク世界選手権のレギュレーションが4気筒750ccまでだった時代であり、独自路線でそのジャンルを制覇するという選択もありだろうと周囲は納得した。

ところが翌2001年、このGSX-R750をベースに排気量を988ccに拡大したGSX-R1000が突如デビューする。スズキ初となるこのスーパースポーツは最高出力160ps、乾燥重量170kgを公称。パワーウエイトレシオで4メーカーのトップへと一気に躍り出たのだ。このときの衝撃は、1998年にYZF-R1がデビューした時と並ぶほど大きなものだった。

1998年から2000年末までにヨーロッパだけで約4万2000台を売り上げ、このカテゴリーの顔となっていたYZF-R1。ヤマハはこうしたスズキの動向を視野に入れつつも安直なパワー競争には乗ることなく、さらにコーナリング性能を高めるべく2002年にフルモデルチェンジを実施した。

結果的に第1世代ラストとなるこの2002年モデル。コンセプトは【ダイナミック・コーナリング・パフォーマー】で、「マン・マシンの一体感とコミュニケーションにより、コーナリングの陶酔感をライダーに与える」という狙いを具現化。一新されたスタイリングは既存のR1らしさを踏襲しつつも、それまでの国産車にはないシャープなラインで構成され、美しいスーパースポーツとして高く評価された。中でも特徴的だったのは、エアロダイナミクス重視のスーパースポーツでありながらサイドカウルを大胆にカットし、エンジンを露出させたこと。さらに、燃料タンクから社名ロゴを排除し、音叉マークのみとなったのも2002年から。以来、この伝統は最新のR1にも受け継がれている。

エンジンは従来型をベースに、量産2輪車初となるフリーピストン併用FI(フューエルインジェクション)を新採用。同時にエアクリーナーボックスやマフラーなどを新作とし、最高出力は2psアップの152psとなった。なお、この年、ライバルのCBR900RRも排気量を954ccに拡大するなどフルモデルチェンジを実施しているが、最高出力は1psダウンの151psとなっている。

車体に関しては、アルミ製のデルタボックスIIフレームが一新され、「III」へと進化。ねじれ剛性を30%高めたり、エンジンの懸架位置を変更するなど大幅に変更された。付け加えると、1395mmのホイールベース、24度のキャスター角以外、全てのディメンションが変更されていることからも、コンセプトを具現化するための気合いが伝わってくるだろう。

 

<エンジン>
時流に乗ってFI化を果たすも求めたのはキャブのリニアリティ

1998年デビューの初代から継承される、ボアφ74mm×ストローク58mmの水冷DOHC5バルブ並列4気筒エンジン。2002年モデルにおける最大のトピックは、燃料供給がキャブレターからインジェクションへと変更されたことだ。これはキャブよりも燃焼状態を緻密に制御することで、厳しさを増す排ガス規制に対処しやすくなるという一面もあり、このころから各メーカーでFI化が一気に加速する。

4輪の世界ではすでに一般化していたFIだが、その技術はそのままでは2輪には通用しなかった。特に問題となったのがスロットル開け始めの不自然さ、いわゆる「ドン突き」という症状が発生しやすく、各メーカーがその対策に頭を悩ませていた。先にFIを採用したスズキのGSX-R1000は、スロットルボディのバタフライバルブを2枚とし、ひとつをライダーが、もう一方を電子制御で動かすという新たな方法でドン突きをほぼ解消した。

後発となるヤマハは、キャブレターに近いレスポンスを追求するべく、ライダーが操作するバタフライバルブのほかに、負圧によって上下するスライドバルブを組み合わせたフリーピストン併用FIを新開発。各センサーからの情報を元にマイコンが演算し、最適なA/F値になるよう燃料供給を行う。なお、このFIの採用に伴い、シリンダーヘッドの吸気ポートは30mmショート化されている。

また、このFIに組み合わされるエアクリーナーボックスは、前方に新気取り入れダクトを設けた新型に。これによってエンジンの熱による吸気温度への影響が最小限に抑えられた。また、エアフィルターは丸型から板型となり、ジョイントのファンネルもショート化されている。

マフラーは、2000年モデルのサイレンサーに続いてエキパイもチタン材となり、約1kgの軽量化を達成。また、エキパイのレイアウトは4-1から4-2-1集合となり、FIとの最適化が図られている。注目すべきは排気デバイスのEXUPで、集合方式が変更されたことから1軸→2軸となり、さらにバルブも従来のギロチン型からバタフライタイプへと変更されている。これらは軽量化とドライバビリティの向上に貢献しているのだ。

このほか、メッキシリンダーのスリーブがハイ・シリコン材に変更されたほか、鍛造ピストンのピストンリングを新作としたり、コンロッドに塑性大端締め付けボルトを新採用するなど、直接パワーアップには寄与しないものの、信頼性向上に貢献するための対策がいくつも実施されている。最高出力の2psアップはあくまでも結果であり、ハニカム式三元触媒を装着して欧州の排ガス規制ユーロ2をクリアしながら、それを達成できたことは非常に立派だと言えるだろう。

 

<シャシー>
ねじり剛性を高めた新フレーム Fホイールトラベルは一般的な数値に

エンジンを左右から抱きかかえるようにレイアウトされる、ツインスパーのアルミ製デルタボックスフレーム。前作の「II」から、2002年モデルでは「III」へと大胆に進化した。アウターパネルの肉厚が3.0mmから3.5mmへと厚くなったのをはじめ、ヘッド周りの板厚最適化、従来型にあったハンドルの逃げを廃するなどデザインの変更、ピボット周りのクロスチューブ部の剛性アップ、シートレールの別体化などを実施し、従来とは完全に別物となっている。結果、ねじれ剛性は30%も高められた。

また、フレームに対するエンジンの搭載位置は従来よりも20mm上へと移動。これにより素早いバンキングとリニアなハンドリング応答性を実現している。また、細部の見直しにより、ホイールベース1395mm、キャスター角24度以外、全てのディメンションの数値が最適化されているのも注目に値しよう。

ライバルよりもやや細かったφ41mm倒立式フロントフォークは、2002年モデルでφ43mmへと大径化された。同時にインナーチューブの肉薄化、アウターチューブの部分的な肉薄化を実施して、軽さと剛性のバランスを最適化している。また、135mmという長めのストロークは一般的な120mmとなり、バネレートを最適化することで車体のピッチング時のロスを低減。さらに、フォークのオフセット量を35mmから25mmへと短縮し、ステアリングモーメントを理想的なものへとしている。

スイングアームは左側をデルタ形状、右側をアーチ形状とした左右非対称の新デザインに。これにより各パーツの最適位置を犠牲にすることなく、ロングリヤアームの特性をさらに引き出すことに成功した。なお、エンジンの搭載位置変更に伴い、スイングアームの傾斜角も9.7度から11.8度となり、よりクイックな操縦性となっているのも見逃せない。これに組み合わされるリヤショックはバネレートを変更。ダンピングの調整幅を拡大しつつアジャスト段数を増やすなど、さらに細かなセッティングが可能となっている。

そのほか、ライディングポジションの変更をはじめ、フロントのMOSキャリパーのアルミピストン化(パッドの材質とホースのレイアウトも変更)、リヤディスクの小径化(φ245mm→220mmへ。合わせてキャリパーも新型に)、プレート部の小型化により約200g軽くなった新型ドライブチェーン、一体肉抜き加工アルミ鍛造ハンドル(従来は接着式)の採用など、さまざまな仕様変更を実施。乾燥重量は1kgダウンの174kgとなっている。

 

主要諸元 ヤマハYZF-R1(2002年型)
全長(mm) 2035
全幅(mm) 705
全高(mm) 1105
軸間距離(mm) 1395
キャスター角 24°00′
トレール(mm) 103
シート高(mm) 820
車両重量(kg) 174(乾燥)
燃料タンク容量(ℓ) 17
エンジン種類 水冷並列4気筒
弁形式 DOHC5バルブ
排気量(cc) 998cc
内径×行程(mm) 74×58
圧縮費 11.8
最高出力 152ps/10000rpm
最大トルク 10.7kg-m/8500rpm
変速機形式 6段リターン
変速比・1速 2.500
変速比・2速 1.842
変速比・3速 1.500
変速比・4速 1.333
変速比・5速 1.200
変速比・6速 1.115
1次減速比 1.581
2次減速比 2.688
前ホイールトラベル 120
後ホイールトラベル 130
タイヤサイズ前 120/70ZR17
タイヤサイズ後 190/50ZR17

 


 

〈文責〉
ヤングマシン編集部

大屋雄一(おおや・ゆういち)

 

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