2018.04.30

History of R1 – 2000 2nd GENERATION

YZF-R1



この記事は、モーターサイクルマガジン「ヤングマシン」の編集部より、当時の取材記事や写真が特別に提供され作成されています。

 

外観の印象を変えずに超熟成
250点以上の部品を新作する

<コンセプト&アウトライン>
優れたバランスをさらに磨いた第一世代R1の完成形

1998年シーズン、2輪業界における話題の全てをさらっていったと断言できるほど、初代YZF-R1の登場は衝撃的だった。それは販売台数にも如実に現れており、この年、ヨーロッパにおいて600cc以上で最も売れたスーパースポーツがR1だった。加えて、各国の2輪専門誌が主催するバイク・オブ・ザ・イヤーにおいてもほぼ総ナメ状態であり、当時のフィーバーぶりがおよそ想像できるだろう。最高出力150ps、乾燥重量177kg、ホイールベース1395mm。この3つの数字だけで走りがイメージできるバイクはそうあるものではない。

一方で、歴史に「たられば」は禁物だが、もしR1のデビューがもう少し先、仮に1年でも遅れていたら、この年の主役はカワサキのニンジャZX-9Rだったに違いない。1994年にデビューした同車は1998年にフルモデルチェンジし、32kg(!)ものダイエットに成功。乾燥重量183kgと最高出力143psによる走りは、先代までのツアラー然としたものから一転、スーパースポーツらしい切れ味となり、ホンダCBR900RRの牙城を崩しにかかってきたのだ。

もちろん、このジャンルの祖であるホンダがライバルたちの動向を傍観していたわけではない。デビュー以来、CBR900RRは2年毎にモデルチェンジを繰り返しており、1998年型では大がかりな改良を実施している。スペック上では2psアップの130ps、3kgダウンの180kgと動きは小さいが、人気は衰えることがなく、それは売り上げ台数が前年からほとんど変わらなかったことからもうかがい知れる。

ヤマハはR1をデビューさせた翌1999年、シフトとクラッチの操作性向上や、燃料タンクの予備容量の変更(5.5→4lへ。ただし総容量18lは変わらず)、グラフィックの刷新などマイナーチェンジを実施。販売台数は初代の1998年型を上回った。そして、ここで紹介する2000年型では、早くも初のモデルチェンジを実施する。

外観こそ1998年型から大きく変わらず、サイレンサーのスリーブがカーボンからチタンになった程度の違いしか見つけられないだろう。だが、変更箇所は150か所、変更されたパーツは250点以上にも及ぶのだ。その狙いは、これまでよりもスロットルを開けられるようにすること。初代の優れたバランスを崩すことなく、空力およびハンドリング特性を向上。さらにエンジンの過渡特性も見直している。これらの改良によって総合性能の底上げを図ってきたのだ。

ウインドスクリーンは防風効果を高めるためにわずかに大型化され、合わせて外装を一新。これには燃料タンクも含まれており、スタイリングに対するヤマハの思い入れの強さが伝わってくるだろう。

 

<エンジン>
戦闘力を底上げする地道なアップデート ユーロ1にも適合させる

排気量998ccから最高出力150psを発揮する、水冷DOHC5バルブ並列4気筒エンジン。シャシーの剛性部材とするため、シリンダーヘッドとアッパークランクケースを一体成型しているのをはじめ、前後長を短縮するための主要3軸の三角形レイアウト、特許を取得したメッキシリンダーボア、軽量鍛造ピストン、浸炭コンロッド、排気デバイスのEXUPなど、当時の最先端技術を惜しみなく導入していた。

デビューから3シーズン目を迎えるにあたり、ヤマハはこのエンジンをしっかりと熟成してきた。まず内部では、カムシャフトのジャーナル部への潤滑システムを改良し、タペットクリアランスを減らすことでメカノイズを軽減。6段トランスミッションはベアリングを追加するとともに軽量化を促進。シフトリンケージおよびレバーの変更と合わせて変速操作をよりスムーズにした。また、1速のギヤ比を2.600から2.500へと2速側に近づけ、加速性能を向上させたのも見逃せない。

補機類では、キャブレターのセッティングとEXUPの制御マップが見直されたのと、サイレンサーがカーボンからエレクトリックブルー仕上げのチタン製に。さらに、スターターモーターが12mm短いものに変更されたのと、これまでヘッドだけだったマグネシム合金製カバーが、ピックアップコイルローラーおよびシフトシャフトカバーも同素材に置き換えられ、地道に軽量化を図ってきた。

そして、2000年モデルにおいて必要に迫られた対策は、追いすがるライバルたちをさらに突き放すためのパワーアップではなく、欧州の排ガス規制ユーロ1への適合だった。

排ガス規制は徐々に厳しくなるのが常であり、設定された数値をクリアするために触媒を大型化するなど何かしらの対策を施すと、どうしてもパワーダウンしがちだ。そう考えると、2000年型のR1が初代と同じ150psを維持しながら、2次エア導入装置を追加してユーロ1をクリアしたのは立派だと言えるだろう。

この年、ホンダのCBR900RRは新設計のエンジンを投入。排気量を918ccから929ccへと拡大しつつ、シリーズ初の燃料噴射を採用。最高出力を130psから152psへと一気に引き上げ、R1を上回ってきた。また、カワサキのニンジャZX-9Rもモデルチェンジし、圧縮比を11.5:1から12.2:1へと高め、最高出力を1ps増の144psとしてきた。こうして20世紀最後の年、スーパースポーツは完全にパワーウォーズの様相を呈してきたのだ。

 

<シャシー>
衝撃の「177kg」から執念でさらに2kgを削り取る

GPレーサーYZR500のディメンションを参考にして設計されたYZF-R1のシャシー。1400mmを下回るホイールベース、やや細めのφ41mm倒立式フロントフォーク、長めのホイールトラベル量など、随所にR1らしい特徴が見え隠れする。2000年型においては、ディメンションをはじめさまざまな変更が検討されたが、結果的に初代を踏襲することとなった。

デルタボックスⅡと名付けられたアルミツインスパーフレームは、加速Gに耐えやすいようにシートレールの角度を変更。フロントフォークは、スプリングの直径をφ4.5mmからφ4.4mmとして軽量化しつつ、オイルシールにアルミ製のワッシャーを使用して摺動抵抗を減らしている。さらに、これを支持するアンダーブラケットの剛性を高めているのもポイントだ。このフロントフォークと対になって仕事をするリヤショックユニットは、アルミ鍛造ボディを新採用。加えて伸縮両減衰力アジャスターにクリック機構を導入し、調整をしやすくもしている。

フロントブレーキは、φ298mmディスクのフローティングピンを10本から8本に減らしつつ、ディスクの厚みを5.0mmから5.5mmに増やして熱容量をアップ。さらに、コントロール性を高めるため新作のブレーキパッドを採用している。マスターシリンダーのリザーバータンクが小型化されるなど、ブレーキ関連の変更は多岐にわたっているのだ。

外装は、1998年モデルのイメージを踏襲しつつ、全面的に変更された。その目的は防風効果の向上で、スクリーンを高くしつつ、フロントカウルの幅もわずかに広がっている。燃料タンクは上面を5mm低くし、さらにハンドルをフルロックしたときのクリアランスを増やして操作性を高めている。ミラーは後方の視認性を向上させるため、25mm高い位置に鏡面が来る新作に。これは従来品より軽量でもある。

このほか、新採用の鍛造フットレストや、よりコンパクトになったメーターパネルなど、多くのパーツが軽いものへ置き換えられたことで、乾燥重量は2kgマイナスの175kgへ。1000ccのバイクがこれだけ軽いというのは驚き以外の何ものでもない。

だが、一方でライバルのCBR900RRは血のにじむようなダイエットを実施し、2000年型でR1より5kgも軽い170kgを達成してきた。これにより、ヤマハはパワーと車重の両面でホンダの後塵を拝することとなってしまった。付け加えると、ホンダはそれまでこだわってきたフロント16インチや正立フォークを捨て、17インチと倒立フォークを新採用。こうしたなりふり構わずトレンドを投入してきた背景には、やはり打倒R1という絶対的な指命があったに違いない。

なお、世界グランプリの最高峰クラスで4ストローク990cc以下というレギュレーションが採用されたのは2002年から。また、スーパーバイク世界選手権で4気筒の上限が750ccから1000ccに引き上げられたのは翌2003年からで、つまりそれより前、2000年シーズンのスーパースポーツはレースを一切意識しなくてもいい、純粋かつ究極的なストリートマシンだったのだ。

 

主要諸元 ヤマハYZF-R1(2000年型)
全長(mm) 2035
全幅(mm) 695
全高(mm) 1095
軸間距離(mm) 1395
キャスター角 24°00′
トレール(mm) 92
シート高(mm) 815
車両重量(kg) 175(乾燥)
燃料タンク容量(ℓ) 18
エンジン種類 水冷並列4気筒
弁形式 DOHC5バルブ
排気量(cc) 998cc
内径×行程(mm) 74×58
圧縮費 11.8
最高出力 150ps/10000rpm
最大トルク 11.0kg-m/8500rpm
変速機形式 6段リターン
変速比・1速 2.500
変速比・2速 1.842
変速比・3速 1.500
変速比・4速 1.333
変速比・5速 1.200
変速比・6速 1.115
1次減速比 1.581
2次減速比 2.688
前ホイールトラベル 135
後ホイールトラベル 130
タイヤサイズ前 120/70ZR17
タイヤサイズ後 190/50ZR17

 


 

〈文責〉
ヤングマシン編集部

大屋雄一(おおや・ゆういち)

 

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