2018.04.27

R1マニアの心得「遊び… だけど真剣勝負!」

YZF-R1



「YSP富士吉田」は、山梨県は富士山の懐、富士吉田市にある。スーパースポーツを軸にビジネスを展開し、中でもR1やR6の販売量は日本でも有数のショップだ。ただ、冬季は積雪や路面凍結によりバイク乗りたちにとっては冬眠の時期。取材は3月末だったが、店中にはお客様から預かったピカピカのR1やR6がズラリと並び、その時を待っていた。
 
その中に異彩を放つR1が置かれていた。フロントカウルにゼッケン「81」が輝くレースマシンだ。これこそが「YSP富士吉田」の店長、小沢淳一さんが所有するR1。実は小沢さん、お客様も一目置く「R1」ベビーユーザーなのだ。

 

 

ー R1は何度も衝撃を与えてくれるバイク ー

 

小沢さんとR1の出会いは初代が発売された1998年。「外国人のお客様が持っていた雑誌で見たスクープ記事がキッカケでした。海の物とも山の物ともわからない状態でしたが、スーパースポーツということで迷うことなく『自分』のために注文を入れました(笑)」
 
待ちに待ったファーストランに選んだ舞台は箱根、そこでの体験が小沢さんを虜にした。「個人的な意見ですが、ヤマハを含め各社のスポーツバイクと比較すると2歩先に進んだバイクでした。感動しまし、メロメロになってしまいました」と当時を振り返る。

 

 

こうして、歴代のR1を乗りつぐこととなったわけだが、再び大きな衝撃を与えたのが現行R1だった。「レース用にバッキバキにモディファイしたR1のラップタイムにほぼストック状態で近づいてしまって… エンジンパワー、足回り、ブレーキ、各種デバイス… そのどれもがとんでもない進化を遂げていたのです。僕だけでなく草レース界全体がザワつく衝撃でしたね。今ではスポーツ走行に20台が走っていれば15台はR1という状態ですが、アマチュアの中ではR1『一択』と言われています。ともかく、バイクという乗り物に対するイメージをぶっ壊してくれるのはいつもR1でした」

 

ー 40歳の決意「俺はレーサーになる!」 ー

 

そもそも小沢さんがR1の虜になるには十分な素地があった。20歳の頃、プロライダーを目指すも、両親の反対に遭い断念した過去があったからだ。「当時は反対を押切ってまでやる根性がなかった」と言うが、「R1と出会ったことで、いやR1だったからこそ、ワインディングや峠を走りながらもレースへの想いは日に日に高まっていきました」。そしてある知人の「やってみようよ」という些細な一言で、抑え込んできた思いが爆発した。20年という年月を経て、ついにR1とともにレースの世界へと一歩を踏み出すこととなったのだ。
 
「当時は40歳でしたし、店長として仕事にも責任があったので、いい感じで肩の力が抜けていました。プロになるわけでもなくお金のためでもない。純粋にレースを楽しもうという心境でした。『R1でレースだ!』と、小学生みたいにワクワクしたことを覚えています」

 

 

3〜6月が小沢さんにとってのシーズンになる。レースは年に1回、サーキット走行は月3回を行う。幸い、店舗から富士スピードウェイまでは片道30分という最高の環境にある。午前中のスポーツ走行であれば、午後には店舗に戻ってくることができた。「2本走って戻ると身体はボロボロなんですけどね」と弱音を吐きながらも、その顔は満面の笑みで溢れ、充実した日々が容易に想像できた。

 

ー 大人を本気にするバイク ー

 

とはいえ、相手は1000ccのスーパースポーツR1。遊ぶにも腹を括り真剣に向き合った。例えば、練習の前は必ず3日前から、レース前は20日前から節制を課した。セッティングのための事前テストを繰り返し、マシンを担当する工場長の昌路さん(弟)と入念にマシンを仕上げた。

 

 

レーサーとしてスイッチを入れるのは、ゲートをくぐった瞬間だそうだ。20分前にエンジンをかけ、15分前にストレッチをしてからスーツを纏う。ブーツは右足、グローブは左手から。「プロじゃないんですけどね」と照れながらも自ら作り上げたルーティンで集中を高めR1に跨るのだ。
 
「ここ3年は、年も年だし冬場はモタードを中心にダートラ、トライアルなどで身体を作っています。気分はバレンティーノ・ロッシですよ。えっ、ストイックすぎますか? とんでもない。ここまできるのはR1のおかげ。R1こそが僕を駆り立て、本気にさせてくれる。全部が全部、楽しくてしょうがないですよ」

 

 

3月中旬、憧れのロッシ選手が、ヤマハと2年間の契約更新を行った。「僕自身は50歳を超え、本来なら引退も考える時期ですが…」と前置きして、「ロッシには負けてられないですね。今年も遊ぶぞ!」とモチベーションをあげている。
 
そして春が来た。R1が呼んでいる。小沢さんのエンジンも高鳴っていく。

 

 


 


〈PROFILE〉
小沢 淳一(おざわ じゅんいち)さん

1966年生まれ。17歳でバイクの免許取得。20歳から現店舗に勤務。R1とは1998年の初期型以来の付き合いで、現在のレースベース車で6台を乗り継いできた。40歳からレース参戦をスタート。現在は富士スピードウェイの講師も務める。こうした経験を生かし、「遊べるバイクの販売」をテーマに、スーパースポーツを軸としたビジネスを展開。お客様の相談役、またリーダーとなってバイクを使った「遊び」を伝え、広め、お客様のバイクライフを牽引している。