2019.11.25

15年間、100レース以上をR1で戦った中須賀克行が語る
そのポテンシャル

YZF-R1



今年、1998年の発売から21周年を迎えたYZF-R1。
中須賀克行選手は21年というR1の歴史のうち15年間もの長きに渡って、このR1とともに戦ってきた。
そんな彼が、2015年の発表された第8世代を中心に、過去のモデル、そして今年7月に発表された最新型R1について、レースを視点に語ってもらった。

 
 

― R1はただのバイクでしかなかった ―

 

 
「本格的にR1に乗り出したのは2005年、JSB1000にステップアップしてからでした。正直に言いますが、当時は特に思い入れはありませんでした。2006年にYSP Racing Team sponsored by PRESTO Corporationのライダーとして契約し、この時はR1でのし上がっていこうと思ったものの、これはプロとしての意識変化で、R1に対しての意識変化ではなかったですね。」
インタビューはこんな素っ気ないやりとりからはじまった。
 
それでも、少しずつその口調は熱を帯びてくる。
「当時のR1のコンセプトはワインディングロード最速。レースを走っていてもわかりましたがまさにコンセプト通りで、フロントがどっしりして高い接地感があり、ワインディングでは安心して速く走れるバイクだということはよくわかりました。でも、レースを重ね僕自身が成長を遂げていく中、レーサーとしての限界が見えてきました」
 

 
当時を知るYAMAHA FACTORY RACING TEAMの吉川和多留監督も「中須賀選手は苦労していました」と言うが、「当時のR1の特徴を受け入れ、勝つためにはそれをどう生かしていくのかを常に考えながら走ることで、ライディングの技術を身につけていった」という監督の言葉通り、2007年には第5世代にアップデートされたYZF-R1で2勝をあげ、2008年には初タイトルを獲得。
2009年には、クロスプレーン型クランクシャフトを採用した第6世代で連覇を果たし、2012年からは第7世代で3連覇とトップライダーへの階段を駆け上っていったのである。
 

 
 
 

― 第8世代R1は、例えるなら市販型のYZR-M1だった ―

 

 
2014年の時点で5度のチャンピオンに輝き、絶頂期に辿り着いたかに見えた中須賀選手だったが、2015年、第8世代のYZF-R1がさらなる可能性を与えた。
「はじめて乗った瞬間は、“これこそレースをするためのバイク、全勝できる”と思えたほどの衝撃を受けました。それまでのR1は、ワインディングで楽しむためのキャラクターがあらかじめインプットされていて、それに僕が合わせていく感じでしたが、このR1は真っさら。ニュートラルで、ライダーのどんな入力にも応えられる幅というか懐の深さがあり、操作しやすく楽しさがありました。それはサーキットだけでなく、一般道だって同じだと思いますが、速く走らせることも、ゆっくりと安定して走ることもできる万能性が備わったバイクだと思ったんです」
 
こう話し終わると、付け加えるように再び語り出した。
「僕はM1の開発をしているのでわかったのですが… あえてそのキャラクターを例えるならMotoGPマシンであるYZR-M1です。クロスプレーンとか、いろいろリレーションしていますが、特に電子制御テクノロジーはそのDNAがしっかりと受け継がれていたのです。ヤマハはこのR1を市販型のM1として作ったのだと受け取りました」
 

 
実際、2015年以降の中須賀選手の強さは異次元だった。
2015年は7勝で4連覇、2016年は6勝で5連覇、2017年はチャンピオンこそ逃したものの最多勝となる5勝、2018年は8勝で通算8度目のチャンピオンを獲得。
そして2019年には、第7戦オートポリスのレース1で通算50勝目を達成するなど6勝で9度目のチャンピオンに輝き、全日本では2015〜2019年の5シーズンで32勝をあげ、4度のタイトルを獲得したのである。
 

 
そして鈴鹿8耐4連覇も忘れてはならない。
「現在のR1はすでに全日本、8耐を走るバイクでは最も古いバイクです。それでも勝ち続けているのは僕の成長やレース仕様のR1が進化し続けていることもありますが、やはりベースにポテンシャルがあったから。特に8耐は、ファクトリーで参戦するようになりメンバーも強化されましたが、性能、燃費、信頼性など、4連覇できた1番の理由がこのR1だと僕は思っています。そしてこの成績こそがR1のすごさを物語っているのではないでしょうか」
 

 
 

― R1は僕にとってレーサー以外の何ものでもない ―

 

 
今年7月に発表された新型R1に話が及ぶと、「もちろん新型に乗ったわけではないので、わかりませんが…」と前置きした上で「フルモデルチェンジではないものの、新しい排ガス基準に適応しながら、一部を見直しサーキット性能をさらに進化・熟成させているので、より速くなっていくのだろうと期待しています。デザインも大きな変化はありませんが、新型もM1のようにシルエットが美しく滑らかで、今回もやっぱりレーサーにしか見えません」とうれしそうに話してくれた。
 

 
中須賀選手がYZF-R1に乗りはじめた2005年から今年で15年がたった。
この間、YZF-R1は大きく変わったが、中須賀選手もまた日本を代表するライダーとなり、史上最強のR1ライダーとなった。
「相棒です。これ以外に表現する言葉が見つかりません。今の成績は、ヤマハやチームのおかげもあるけれど、このR1のおかげでもある。R1は僕の人生そのものと言えるかもしれません」
 
新型R1は10月末、東京モーターショーで、初めて一般公開が行われたが、いよいよ2020年、中須賀克行という偉大なライダーを作り上げ、その中須賀選手が絶大なる信頼を寄せる新型YZF-R1の発売が予定されている。
 

 
 
 


 


〈PROFILE〉
中須賀克行選手(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)

1981年生まれ、38歳。GP250からステップアップし2005年からJSB1000に参戦。
2006年からはヤマハ契約ライダーとして同クラスに参戦すると頭角を現し、2019年までの15年間で通算52勝をあげ、2012〜16年までの5連覇を含む9度のチャンピオンを獲得。
さらに鈴鹿8耐で4連覇、MotoGPでは2012年のバレンシアGPで2位表彰台など、日本を代表するロードレースライダー。