ホームプレストマガジン > 難波恭司のおでかけ★YZP&PRESTO Racing report
スタート!マシンに駆け寄り、行っけぇっ!!!

いよいよ決勝レース

迎えた日曜日。転倒で首を痛めていた吉川選手は、トレーナーの先生による賢明な処置を繰り返していましたが、何故かリラックス・ムード。午前11時30分のスタートへ向けて刻一刻と時間が流れており、とにかくライダー、メカニックともに与えられた自分の仕事を「キッチリこなす」事だけを考え、それをサポートする大勢のスタッフ。この団結力がチームを支える原動力になるのです。 そしてスタートライダーは中冨選手。基本的に予選で速いタイムをマークした方がスタート・ライダーとして登録されるので、ここはレギュレーション通り。
私は始めに触れたように、スタートの瞬間を「特等席」で見守る事としていたのですが、そこへ…ヘルメットを被ってスタートを待っているはずの「岡田選手」が訪れ、何と「〇〇ション」をしているではありませんか!すると今度は「ヘイデン選手」も現われ、2人揃って「〇〇ション」…○×△□★※
まぁこれは毎年の恒例ですね♪緊張の為もありますが、その昔、ある有名ライダーが同じ行為をし、優勝してしまった事からの「げん担ぎ」もあるのでしょう。
秒読みからレーススタート!中冨選手はやや遅れながらも順調なスタートをきりましたが、トップ集団が戻ってきた2周目の1コーナー…例のスタート直後に撒かれたオイルにより、大きな惨劇による観客の悲鳴が…。そう優勝候補の一角を占めるファクトリー系、そしてグリッド上位であったライダーが転倒で舞い上がった砂埃の中から、次々と現れてきました。
当然心配なのは中冨選手。場内放送でも壊れたマシンでゼッケンの確認が進まず、モニターに映るライダーの姿で判断するしかなかったのですが、ややスタートで出遅れ気味だった事が幸いして無事に通過していた中冨選手を確認できた時には、今年の「運」みたいなものを感じましたね。
スタート前の「〇〇ション」の2人が、揃ってアクシデントに巻き込まれたのは何か運命があったのかもしれませんが、あれほどの高速で起こった多重アクシデントで負傷者がいなかったのが不幸中の幸いでした…。他車が撒いたオイルに乗って1周でレースを終了しなくてはならないなんて、自分が遭遇したら決して納得行かなかったと思いますが、レースはレース。何が起こるか最後まで分かりませんし、何年に一度か?こういった事故やアクシデントは発生しています。8耐はこういった事も想定しなければならない、とても過酷なレースだと言えるでしょう。

ルーティーン・ストップは、ほぼ1時間程度。YSP & PRESTOのYZF-R1は順調に周回を重ねていきました。給油も順調で、ここまで準備をしてきたスタッフの努力が、全て良い方向へ導いていたと言っても良い状況でした。そしてここまでのポジションも4番手で、チャンスがあれば更に上位も狙える勢いではあるものの、そこは耐久レース。ラップタイムで追い上げるリスクは、遅いマシンと遭遇する度に増えてしまいます。自分達のペースを守り、自らのミスを無くす事。これをまず第一に考えて行動する必要があるのです。
序盤はピットインのタイミングで大きく順位が入れ替わっていましたが、2時間目、3時間目と進むに連れ、転倒やトラブル、ミスなどで脱落していくチームが多数現れていました。と、そこへ「#21 YSP & PRESTO Racing」へもピットストップ、ペナルティーの宣告が舞い込んだのです!理由はピット作業の人員オーバー…??ピット・オフィシャルによると、タイヤ交換終了後の「ブレーキ・チェックが駄目」だと。整備の経験がある人は分かると思いますが、ホイールの脱着を行なった際、ブレーキ・レバーやペタルを数回ストロークさせないと、ブレーキ・キャリパーのピストンが戻っている為、始めのブレーキが利かないのですね。この作業が作業定員オーバーとみなされ、一度ピットへ戻って停止しなくてはならないペナルティー勧告を受けたのです。例年ならば、一度は警告だけだったのですが…。
基本的にピット作業中にマシンに触れる人は4名まで。これはライダーの数も含むので、ライダーがマシンに跨っていれば、実質作業できるのは3名と言う事になるのです。また給油中は一切の作業が禁止されます。どうです?意外とレギュレーションが厳しいでしょ? とにかくペナルティーによるピット・ストップを余儀なくされてタイムロスとなってしまいましたが、これでリズムを狂わすチームではなく、あくまでも冷静に淡々とチェッカーを目差す事だけに集中し、予定された通り耐久スタイルを貫き続ける事に…。
このレース、スタート直後のアクシデントでリタイアに追い込まれたファクトリー系チームには申し訳ないけれど、レースそのものは大変面白い展開が「そこら中」で繰り広げられ、ある時はトラブルで遅れながらも挽回するチームや、良いポジションをキープしていたのにピット作業のミスで一気にタイムロスし、あっという間にポジション・ダウンなど、結局スタートから全く気が抜けない状況として続いた事でハラハラの連続でした。同時にプライベーター・チームにも上位入賞のチャンスが湧いてきており、それが逆にミスを誘発する結果になっていたのかも知れないですね。
廻りのペースに惑わされず、終始安定したペースを刻む「YSP & PRESTO」。そして迎えた最後のピットイン。スタート・ライダーを勤め、最後のピットインで吉川選手にバトンタッチし、この時点で自分のパートは全てやり遂げたので、後は吉川選手が7時30分に振られるチェッカーを受けるだけ…と、ほっとしたのも「つかの間」、今度はトップを走るゼッケン8番にアクシデントが発生し、まだまだレースは分からない状況になり、サーキットの緊張は更に続く事となりました。

決勝レースの佳境

リーダーボードのトップから、どんどん順位を下げる事となった#8の「北川・藤原」組を尻目に、順調に周回を続けるアンカー吉川選手。そのペースは決して遅くなく、薄暗くなり始めてライトで照らされる#21・YZF-R1の前には、何とトップに躍り出た「#71・生見&鎌田」組。この展開により、YSP & PRESTOチームはトップから1ラップ遅れの2位となり、場内に映し出される映像はレースの残り全て釘付け状態。この後、吉川選手がどう動くか?抜いてトップと同一周回数にするか?はたして…。
これが1周遅れでなければ…本当にとんでもない事になっていたと思われますが、とにかくピットにいるスタッフだけでなく、応援に駆けつけて下さったファンの方、そしてサーキット中が最後のベテラン同士の駆け引きを、固唾を飲んで見守っていました。
レースも午後7時を過ぎて暗くなると、ラップ遅れの処理が大変な頃。そして一瞬のミスが命取りになる事はどちらのライダーも痛いほど分かっているはず。だからこそ真剣に、じっと見届けるしかなかったのですがレースはレース。どちらも勝利を目差している状態だったので、通常のスプリント・レースであれば一気に前に出て勝負をしたり、周回遅れを利用して相手の走行ラインを塞いだりするはず。しかしここはあくまでもフェアな戦略を取った吉川選手。ジッと我慢して先行するマシンにライトを浴びせ、見えるプレッシャーを与え続ける作戦に出ました。
周回遅れが多く、暗くなってからの追い上げはリスクが高くなり、ましてや残り30分から1周遅れをラップタイムで追い上げるのは理論上不可能。そして前に出てしまった場合、周回遅れとラインが交錯して接触してしまう可能性も出てきます。前方に同じようなペースのライダーがいれば、それが先に遅いライダーを処理するので、後続の方が楽にパスする事にも繋がります。これらを瞬時に判断し、一番適切でフェアな戦法を取った吉川選手は、伊達に13回目の8耐ではありませんでしたね♪本当に最後の最後まで緊迫したレースとなり、サーキット中がこの2人を映し出すモニターにドップリ見入っていました。

そして7時30分過ぎ、波乱だらけで長かった8時間にチェッカーが振られ、終盤フェアに最後まで争った吉川選手が、#21・YSP & PRESTO Racingのアンカーとして無事2位をゲット。廻りに降りかかる数々のトラブルが#21には襲い掛からず、211周という長いレースを2位で終われたのは、ただ単に「運」が良かっただけでなく、運を掴もうとする努力が実ったものと感じました。これはスタッフの徹夜によるマシン確認整備、それを支えたスポンサーさんやテクニカル・サポート。そしてヘルパー的なチーム・サポートの方達など、ひとつの結果を求めて全員が努力した事が今回の結果に結びついたのですね。そして何より、チームの応援に遠くから駆けつけて下さったファンの皆さんの声、これがチームの活力を高めてくれた事は間違いない事でしょう。ここで御礼を云わせて頂きます…本当にありがとうございました!そして皆「おめでとう」…。
こういった感動は、本当に人の心を震わせてくれますよね♪
スポーツから受ける興奮や感動は本当に良いものだし、オートバイが身近にある事で得られる感動を、皆さんと一緒にたくさん浴び続けたい!と思いますので今後もヨロシク♪

後記

レポーターという立場ながら、せっかく上がった表彰台の写真を撮る事が出来ませんでした…残念なのですが。と、いうのは御存知のように8耐チェッカー後、観客をメインストレートから表彰台下へ入れるので、とんでもなく危険な状態となってしまうのです。たぶんプロカメラマンも決死の覚悟で挑んで?いるか、反対にメインスタンド方面から大きな望遠で捕らえているか?ではないでしょうか…。ちなみにチーム・ガレージはセキュリティーの為一斉に閉じられます。そのような関係上、表彰台の撮影は不可能でした事をお許し下さい。

プレストリポート・8耐特別編(前編)にもどる

[update:2003/08/08]

写真
グリッドでは…
写真
その後ろに目をやると…
写真
さあ、スタンバイ!
写真
ここから給油します
写真
ストップ位置とジャッキ位置
写真
マシンはok!
写真
笑ってる…
写真
もしやのスペアパーツ
写真
夜のピット作業
写真
後は吉川選手に任せた…

難波恭司プロフィール

1963年3月8日生まれ
'81 18才で草レースを始める/'83 ノービスライセンス取得/'85 鈴鹿4h耐久レース 3位/'86 国際A級昇格 ヤマハ契約/'87 TZ250の開発テストに携わりながらレース参戦始まる/'92 ファクトリーマシン TZM250開発テストに携わる、全日本選手権 初優勝 250cc/'96 GP500マシン開発テスト携わる/'98 代役としてWGPのGP500へ年間 5戦参戦 鈴鹿では予選2位 決勝5位/'02 現在はモータースポーツ普及活動など、モーターサイクルの「伝道師」として活動中。特に今年は'07YZF-R1でレース参戦を計画中。
ライダープロフィール

中冨伸一 (なかとみ しんいち)

1978年 10月 30日(24歳)血液型 A 型
'96年: 九州選手権GP250ccチャンピオン/'97年: 全日本選手権国際A級GP250ccランキング15位/'98年: 全日本選手権国際A級GP250ccランキング11位、西日本エリア選手権GP250ccチャンピオン/'99年: 全日本選手権国際A級GP250ccランキング4位/'00年: 全日本選手権国際A級GP250ccチャンピオン/'01年: 全日本選手権国際A級GP250ccランキング11位/'02年: 全日本選手権国際A級GP250ccランキング8位