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揃いも揃ったりYZF-R1 & YZF-R6

'07 YZF-R6

ニューカラーで登場した'07 YZF-R6。基本的には '06 model から大きな変化はないのだが、追加された「ダークレッド・メタリックK」は、'04 YZF-R1で採用されていたディープレッド・メタリックよりも若干明るく、ストリートでも派手さはないながら存在感を感じる。今回試乗した時期は紅葉シーズンでもあったことから、その背景にマッチするカラーリングはとても美しく見えた。

挑戦的な奴

昨年末に発表され、世界中のモーターサイクル・ファンに大きなインパクトを与えたこいつのデザインは、1年経った今でも挑戦的な顔つきで私に訴えかけてきた。「そろそろ乗りこなせるようになったか?」と。相変わらず前傾姿勢の強いライディングポジションは、シートに跨っただけでも「うへっ…」と感じるくらいレーシングマシン的であり、それに屈せずステップに足を乗せ、徐にスクリーンに伏せてみるとそのコンパクトさを痛感する。よく足着き性の不安を耳にするが、何を隠そう○○足気味の私は過去そういう不安を感じたことがなく、バランスを崩した時に支えきれないから…という前に、オフロードなどでバランスを崩さない乗り方の練習をしていたからかも知れない。

スターター・スイッチを押すと、非常に軽やかなこいつ独特のアイドリングが始まった。以前にも触れたが、「こもる」ような甲高いサウンドはスタート前から気分を盛り上げてくれる。スーパースポーツのエンジンは、”その気”になって高回転まで回した時に本領を発揮するのだが、こいつの場合もそれは同じ。大きく異なるのは、低回転域で大きくアクセルを捻っても、コンピューター制御されたヤマハ・チップ・コントロール・スロットル ( YCC-T) により一番効率の良いスロットル開度に制御されること。しかも何ら違和感なく…。どのようなエンジン回転域でも、そしてどんなギアを選択していてもエンジンの一番効率良い燃焼状態を引き出すようプログラミングされていることから、全く意識の中にないほど自分の意思に忠実な反応をしてくれる。これこそがmotoGPなど究極のレース現場で培われた技術のフィードバックであることは間違いない。

スタイル以上の魅力は

“その気”になってワインディングを楽しみながら、コーナーに合わせたクイックなシフトチェンジを繰り返しながら走ると、コーナーへのターンインの際YZF-R1に比較して更に反応の良さを感じることができる。これはリズミカルに切り返すなどのようなシュチエーションで一番強く感じ、こいつの「おぉっ!」というようなダイレクトな乗り味は…
☆R1から僅か10kg程度の軽さなのに、乗ると大きな違いを感じる
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軽さは運動性にとって最も大きく影響する
反応の良さはスポーツ・ライディングに余裕をもたらす
当たり前のことだが、走っている時は慣性力というものが大きく作用し、加速している時は加速し続けようと、そして常に直進しようとするエネルギーが発生している。重量が重ければそのエネルギーは増大してしまうが、逆に軽量であればその差以上に軽快に感じるのだ。これを利用したハンドリングこそが YZF-R6 が持つスポーツ・ライディングの醍醐味なのだ。

エンジンに関しては「使い切る」「回しきる」快感を味わいやすく、もちろんその真髄はサーキットで…となるが、ストリートでも一旦ワインディングに入るとスーパースポーツ・モデルの充分刺激に満ちたパフォーマンスを感じるはず。またその反面、9,000rpm以下の中速回転域まではスムーズで初心者にも扱いやすく、スタイルだけに惹かれた女性でも恐怖感はないはず。ただしそれ以上の回転数は…だが、焦らずジックリと乗り慣れていくことでR6の魅力は尽きることがないだろう。

サーキットでは

私は先日、富士スピードウェイで開催された走行会に参加した。あいにくの雨だったのだが、そこに訪れたYZFジャンキー (失礼) 達とのバイク談義は楽しかった。富士スピードウェイはメインストレートが1,500m という超ロングストレートを持つサーキット。これだけ長いストレートでスロットルを開け続けられる場所はそんなにない。日頃からある意味「我慢」しているYZFジャンキー (失礼) も、存分にワイドオープンできたのではないだろうか?
こんな風にサーキットへR6を持ち込むと、ストリートでは味わえない領域のパフォーマンスを味わうことが出来る。その筆頭がスリッパークラッチ。これはハード・ブレーキングと同時にシフトダウンすることで発生する強力なエンジンブレーキを、機械的にクラッチを滑らせることでリアタイヤの安定性を確保しやすくするアイテム。もちろん現在のレースでは必需品となっているが、R6の場合はR1に対し「より利かせてある」。軽く吹け上がるエンジンは、同時に「回転落ち」も素早い。実はこれがクランク・マスというものの影響で、スポーティーなエンジンは軽いピックアップとともにエンジンブレーキも増大してしまう。これを緩和させ、ブレーキングからコーナーへ安定したターンインを可能とするために装備されているのだ。もちろん使いこなすにはテクニックも必要だが、シフトダウン時の操作を「マシン側がスムーズに補助」してくれ、ライダーはそれだけ本来のメイン操作である「ブレーキングに集中できる」ということになる。結果的にスポーツ・ライディングのレベルをワンランク上げてくれ、巧くコントロール出来たときの充実感をもたらしてくれるのだ。

こいつを手に入れたなら

決して「物怖じ」しないで欲しい。確かにリッター200psを超えるパワーは半端じゃない。しかし始めに触れたとおり、こいつは時と場合を「わきまえた」奴であり、通常は良く調教されたサラブレッドみたいなもの。もちろん使い方を誤れば牙を剥くが…。それ以上にこいつとジックリ付き合うためには、是非装備されている前後サスペンションのプリロードや減衰力調整などを試して欲しい。別に速く走る必要もないが、いつものワインディングが自分のテストコースと化し、ギャプの乗り越え具合など自分の乗り味を求めるのも面白いはず。少しずつ自分なりの好みに仕上げ、それをサーキット走行会などで確認する。これもひとつの楽しみ方だろう。
実は私も何度か「こいつ」でサーキットを走り、サスペンションをいじってみている。セッティングなんて完成形もなければ完了もない。場合によっては失敗して乗りにくくなることもあるが、その場合は元に戻せば良い。「こいつ」とたくさん付き合うことで色々な特性も理解できて来るから、それこそが乗りこなす自信に繋がるはず。私もそろそろ「こいつ」と仲良くなれそうだ…。

難波恭司プロフィール

1963年3月8日生まれ
'81 18才で草レースを始める/'83 ノービスライセンス取得/'85 鈴鹿4h耐久レース 3位/'86 国際A級昇格 ヤマハ契約/'87 TZ250の開発テストに携わりながらレース参戦始まる/'92 ファクトリーマシン TZM250開発テストに携わる、全日本選手権 初優勝 250cc/'96 GP500マシン開発テスト携わる/'98 代役としてWGPのGP500へ年間 5戦参戦 鈴鹿では予選2位 決勝5位/'02 現在はモータースポーツ普及活動など、モーターサイクルの「伝道師」として活動中。特に今年は'07YZF-R1でレース参戦を計画中。