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難波恭司の「XT1200ZE 本気でタイムアタック!」エディターズコラム | プレまぐ!
前回記事の続編!今回はXT1200ZE&難波氏に挑戦した高橋剛氏自身による、ヤングマシン誌8月号掲載記事「SUPER TEST2014/スーパーテネレ vs R1」の裏側に迫ります!
[TEXT:高橋 剛 :2014.6.30]
オラオラオラオラオラァ!異機種格闘アタァアァッック?!

相手は「遊びにかけては本気の男」

 とても静かだった、決戦当日朝……。スパ西浦モーターパークのピットにXT1200ZEスーパーテネレとYZF-R1が並ぶ様子を見て、「うーむ……」とオレは考え込んだ。軽量・スリム・コンパクトなR1に対して、スーパーテネレはいかにも巨大である。「コイツがサーキットを走るのかー」とその姿を想像した瞬間に、笑いが込み上げてくる。
 日差しは強く、蒸し暑い。対戦相手の難波恭司さんは汗をボタボタ垂らしながら、準備に余念がない。バイクに関してはお互いノーマル勝負なのでほとんどやることはないが、テキパキと動き回る姿からは、難波さんの本気度がにじみ出ている。
 ヤバイ……。この人マジになってる……。難波さんとオレの腕の差は、言うまでもなくひどく大きい。かつてGPにも出場経験がある人と、草レーサーとも呼べないオレなど、比較するのもおこがましい。そして、腕にも増して差が大きいのは、本気度なのだ。
 スーパーテネレのまわりをテキパキと動き回り、汗水垂らしながら準備に励む難波さん。ヘボなオレが走らせるのはR1、スゴイ難波さんはスーパーテネレ。サーキットという舞台ではR1が有利そうだが、腕前が違いすぎる。相手がどんなにか弱いウサギであろうとも、全力を尽くす獅子のような凄みが、そこにはあった。

 走り出してみると、すぐにこのコースでR1を走らせるのは難儀だと分かった。メインストレートから1コーナー、立体交差にかけての3コーナーまでは、それなりに速度が乗るので、R1のパワーが生きる。しかしその後、S字を経てインフィールドに入ってからは、極低速ヘアピンが3つ続いたうえにトリッキーな最終コーナーだ。
 R1自体は非常に乗りやすいが、さすがに極低速ヘアピンの連続は厳しい。R1で超迅速なUターンを左、右、左と強いられていると思ってもらえれば、何となく想像がつくだろうか。特に右の第2ヘアピンは奥でRがキツくなっており、バランスを崩しそうになる。
 R1だと完全に1速だ。しかもファイナルがロング気味なので、スロットルを開けても極低速ヘアピンで安定するだけのパワーが得られない。バランス感覚の勝負で、それは確実にオレに足りない。ヒーコラ言いながら走らせる。
 スパ西浦サーキットを走るのは2、3回目だが、スーパースポーツで思いっ切り走るのは初めて。うーむ、これはかなり手強い……。もしや勝負の舞台選びからして、難波さんの術中にハマッていたか……と思っていた瞬間、バックミラーにキラリと光るものが映った。ぎゃあああぁぁぁっ!!
左:インフィールドでみるみる後ろに迫る巨大な姿ッ! 右:後方カメラに映る、妙なスリップアングルでイン側に飛び込んでくるテネレ!怖えぇ!

パワーで勝ってテクニックで負ける

 後方から迫っているのは、難波恭司&スーパーテネレだ!!
 不得意なインフィールドで確実に間合いを詰められる。スキを見せれば絶対にインに飛び込まれるので、あいまいなラインを取る。あいまいなラインは自分の立ち上がりをキツくする。それでも抜かれるよりはいい。最終コーナーでさらにミラーの中の白い巨山が大映しになる……。
 が、見よ、400mのストレートを! 車速を稼ぐために1速、2速、3速、4速と素早くシフトアップし、速度計は瞬く間に200km/hに届こうとする。ミラーの中のスーパーテネレが、徐々に小さくなっていく。
 イェーイ! である。これをイェーイと言わずに何と言おう。170psオーバーのパワーはハンパない。いくら難波さんとはいえ、スロットルを開けるだけの勝負では、60psのパワー差を埋めようがない。当たり前の話だ。
 恐らくオレはこの後、どこかで難波さんに抜かれるだろう。スーパーテネレにはそれだけの勢いがある。
左:最終コーナー立ち上がりで抜かれかけるものの… 右:R1パワー炸裂!イェーイ!!ストレートエンドで突き放す!
 中速コーナーの1~3コーナー。キタキタ、難波さんキタ! 来ちゃうんだ。ここでもう来ちゃうんだ。要は、ブレーキング~コーナリングが発生した瞬間、つまりライダーにテクニックが求められた瞬間に、モーレツな勢いで難波さん&スーパーテネレが接近してくる。本来であれば中速コーナーならまだR1の方が有利なはずだが、オレ風情の腕前ではシオシオである。
 そして立体交差をすぎ、右の4コーナーに差しかかる。ここはS字のひとつめなので、結構減速するポイントだ。と、後方からギュリュリュリュリューーーッ! という凄まじいスキール音が聞こえてきた。
    やった。難波恭司ブッ飛んだな!!
 ミラーをチラ見すると、激しく車体を左右に揺らしながら、ものすごい勢いでスーパーテネレがオレのインを突こうとしている。すんげえブレーキングだ……などと思う間もなく、ズバリとインを突かれた。
 為す術もなくあっさり前に出られると、難波さんは立ち上がりでドリュリュリュリューーーッ! とスーパーテネレのリヤを滑らせ、それをやすやすとコントロールしながら、あっという間に小さくなっていった。
 あのね……。気持ち折れますよ、そりゃあ。エキスパートライダーのガチの走りを真ん前で見せつけられたら、こりゃもうダメだと思いますって……。あーあ、もう見えなくなっちゃったよ。行っちゃった行っちゃった。ハイハイ。
 ……とばかりも言っていられない。これは抜くか抜かれるかのレースではなく、タイムアタックだ。難波さんにバッサリ抜かれたことを刺激に、自分なりにタイムを詰めていく。スパ西浦モーターパークはメインストレートに電光掲示板があり、自分のタイムが見える。少しずつタイムが縮まっていく。楽しい。うれしい。頑張るオレ……。
左:いやあぁぁぁっ〜、どっち向いてんスか〜ッ! 右:インからあおりまくるテネレ、立ち上がりで勝負が〜!