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「難波恭司のズバッとインプレッション2014 / XT1200ZE」
2010年に登場したXT1200Zは、そのスタイリングやコンセプト、そして実用的な装備により多くのファンの心に火をつけた。長年待ち続けた「アドベンチャー」というカテゴリーに心躍らし、仲間や相方との特別な時間を提供してきた。そいつが今回バージョンアップしてリリースされた。発売以来多くのユーザーに支持されたことにより、更なる快適性や利便性、ユーザーサイドに立った目線で正常進化しての登場である。
[難波 恭司:2014.2.28]
さぁどこ行こう
 今回試乗したのはZE。前後サスペンションが電動調整式となり、リヤ・バネのプリロード、そして前後の減衰力調整が簡単に変更できるシステムが追加されている。操作方法も、マルチファクションディスプレイと呼ばれるメーターパネルを見ながら、ハンドル左側のスイッチにて行う。スイッチ系やモニターは、定評のあるFJR1300シリーズに共通し、操作性、信頼性も申し分なく、全て使いこなすには「少しずつ仲良くなっていく必要がある」が、その多機能さは日常で使えるアイテムばかりである。

”ZE”のメリット

 「ZE」最大の「ウリ」は、もちろん電動調整式のサスペンションだ。
こんな目新しいアイテムが装備されたことを知れば、ついついそのポテンシャルを確認したくなる性分の私が、真っ先に目指したのはもちろんダートである。あ…確か前回の試乗テストでも同様だった気がするが…まぁ固いことを言わず、この先のレポートを読んでもらいたい♪
 こいつが得意とするシチュエーションのひとつであるフラットダートは相変わらず心強い。小石がゴロゴロ転がっている河川敷のような路面状況でも、しっかりとした直進安定性を保ち続けるだけでなく、TCS(トラクション・コントロール・システム)とABS(アンチロック・ブレーキ・システム)のおかげで、タイヤグリップの限界特性が非常に穏やかで、極端に挙動を乱すようなことは起きにくい。少しでもオフロード経験のある人からすれば、車重が重いことによる不安感よりも、ドッシリした安定性が強調されていることに気付くだろう。安定しているからこそ、終始冷静なライディングが可能となる。これは普段ロードモデルにしか乗ったことがない人にはとても不思議な感覚ではないだろうか? リッタークラスのロードモデルでは、間違っても「自ら」ダートに足を踏み入れるなんてことはないだろう。私だって御免だ。そういえば、過去に結構な盛り土の斜面をR1で登っていた人を「サーキット」で見かけたことがあるのだが、その時は本人が望んでいなかった「出来事」だから例外だろう…。
左:アドベンチャーな奴 右:ボリューム感は充分過ぎるほどある
 話が逸れたが、この電動調整は減衰力のみ走行中でもアジャストできる。標準セッティングのSTDに加え、SOFT、HARDと双方へ変更できる。またそれぞれプラス、マイナスへ各3段階の微調整も可能だが、微調整は停車時に設定変更しておく必要がある。(停車時エンジン始動中のみ変更可能)
 またプリロード(バネに対する初期荷重)も同様で、停車時にエンジンが掛かっている状態でアジャストが可能である。これは油圧ポンプを駆動させるのに電力を必要とするからだと考えられるが、もう一つはプリロード変更によるハンドリングの変化が想定され、走行中の変化は安全上好ましくないというメーカーの判断ではないか?と思われる。この操作全般に対する理解は難しくない。全ては安全を優先していると理解すれば良いだけである♪ひとつ追記としては、プリロード・アジャストの途中で発進した場合、アジャストは途中で中断され、電動操作はキャンセルされる。これも先と同様、ライディング中の安全性を最優先しているためと考えられる。
左:減衰力も細かく設定可能 右:プリロード最強表示
 なんだか前振りが長くなってしまった。
サスペンションのセッティングなんて、「買ってから今まで触ったことない」とか、「よくわからないからイジッてない」ということをよく聞く。とてもよく理解できるが、個人的には「分からないからこそイジッてみては??」 と思う。せっかく装備されているのだから、使わなきゃ「もったいな~い」(Byきゃりーぱみゅぱみゅ)
 市販化されているバイクの場合、メーカーは色々な条件を想定し、厳しい環境を含めて安全性と耐久性など多岐にわたってテストし、メーカーの考える基準を満たしたものだけがリリースされている。特に日本車メーカーはその基準が厳しいのが知られており、それこそが日本製品の優位性でもあると考える。何が言いたいかといえば、アジャスターを最大、もしくは最少にしたところで壊れることも不安定になることもないということ。だが確実に変化はするわけで、理論だって考えていけば自分の使用環境に合わせて「適切で快適な乗り心地を探り当てる」ことも可能だということ。それが電動調整式になったことにより、走行中に変化 (ここでは減衰力のみ) させることができるので、良くも悪しくも体感上でもわかりやすいのだ♪
左:フロントフォークのTOPに電脳システムが宿る 右:そしてリヤの電動調整ユニット

衝撃吸収性の良いサスペンションとは

 なが~いホイールトラベル(サスペンション・ストローク)を誇るXT1200ZEは、悪路をものともしないのはご存知の通り、ただし何で? なが~いサスペンション・ストロークだと悪路に強いの?というところから説明したほうが良いだろう。
 路面の凸凹に対して、前後のホイールはスムーズに追従してしっかり路面を捉える。そのホイールと全く同じように車体全体が上下動してしまっては、とてもじゃないけど乗っていられない。その間を取り持つのがサスペンション(懸架装置)である。
 路面の大きな凸を通過する場合、サスペンションは縮むことで衝撃を吸収するが、その直後には漏れなく同じく大きな凹もやってくる。縮み側で大きくストロークした後、今度は伸び側にもホイールは動くのだが、ここで簡単に伸びきってしまった場合、車体は瞬間的にジャンプ状態になる。その直後、次にタイヤが着地した時には大きな衝撃を伴う可能性がある。これら路面の起伏に沿って、ホイールが上下動を非常に速いスピードで繰り返されているのが悪路走行である。これをスムーズに通過するには、伸び側のストロークを多く確保できるようなセットアップとし、ホイールが常に路面の起伏に合わせて上下動できるよう、サスペンションが準備しておくことで車体本体へは上下動を緩衝しスムーズな走行が可能となる。
 具体的にはロードモデルよりも柔らかいバネを用い、多めのプリロードにより充分な耐荷重を実現する。付帯してライダーが跨った状態でのストローク位置を深く取り、リバウンド・ストローク(伸び側)に多めのストロークを確保しておくということ。そうすることにより大きな凸凹に対して穏やかに、スムーズに衝撃を吸収できるのだ。
 結果的に、ダートでの走破性や安心感は「異常なし」。要するに今までのモデル同様、とても安心感のある乗り味は、旅先で意図せずしてダートに遭遇したとしても、決して焦ることなくクリアできる頼もしさがあるということだ。
左:個性的な顔 右:頼もしさを感じさせる