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難波恭司のズバッとインプレッション20 / XT1200Z Super Ténéré
ソレノイド式バルブを採用したデュアルヘツドライト

気になるパフォーマンス・・・

さぁエンジンスタート♪ 位相クランク角度は、TDM900や、少し前のモデルTRX850などと同じく270°であり、これは現行YZF-R1 を半分の2気筒にしたもの。んんん、いや、もっと言えば? この系統のエンジンの方が先に存在したはずだから、バレンティーノ・ロッシか乗るYZR-M1 のルーツに近い ! と言っても良いのではないか? とも思える。いや、でもここでは誇大表現は慎んでおこう・・・。
ツイン特有の鼓動感は気持ちが良い。個人的には最も好きなエンジンだ。アイドリングからアクセルを捻ると間髪無くエンジンは爆ぜ、右手の操作が一発一発の爆発をダイレクトに操っている感覚は心躍る。このエンジンの吸気系には、YZF-R1やR6で採用されているYCC-T (ヤマハ チップ コントロール スロットル)電子制御スロットルを備えていている。これに加え’09 YZF-R1で採用されたD-MODE(※1)を備えているばかりではなく、何とTCS(トラクションコントロール・システム)(※2)までも追加装備となった!! TCSといえば、レースの分野で最先端の技術・・・これは期待しない訳が無いじゃん。
加速側がTCSならば、減速側は定番となりつつあるABS(アンチロック・ブレーキシステム) に加え、新たにユニファイド・ブレーキコントロール・システム(※3)と、これまた最先端の技術で構成されている。
     ↓
※ これらは例に漏れず、試乗の後から知ったのだが・・・
  • アクセル操作に対し、スポーティーな反応(S)と、穏やかな反応の(T)がある
  • トラクションコントロール・システム = リアタイヤがスピンした時にエンジンパワーを制御し、スピンを最小限に抑えることで安定走行を可能にする
  • ユニファイド・ブレーキコントロール・システム = 前後ブレーキ液圧を連動コントロール
説明はこのくらいにして・・・早速試乗へと繰り出そう。試乗は撮影の関係から無謀にも? フラットダートからだった。が、それが逆に良かった。というのも、コイツの最も得意とするシチュエーションだからだ。そんな無謀な場所で散々走り回った中、最も驚いたのがブレーキ系の制御技術だった。
決して軽くは無い重量級のマシン。そしてサスペンションはオフロード寄りだが、タイヤはロード系タイヤであることを考えると、完全なオフロードバイクのような運動性は期待できないはず。いやプロライダーであっても過信すると危険な目に遭う事は簡単に予想が付く。だがコイツは硬いダートコースでハードなブレーキングをしても、何の不安感も無く止まる事が出来たのだ。 
左:ダートでのブレーキは感動的 右:駆動系は高耐久なシャフトドライブ

止まること

通常のオフロード走行ではフロントタイヤがロックする事を避けるため、ややリアブレーキを強めに使う。当然なのだが、リアが若干ロック気味になるのを右足で微調整しながらステアリングでマシンの安定を保つ。同時にフロントブレーキも優しくタッチして、タイヤの回転を失わないよう神経を使う。この一連の操作は熟練したライダーで無ければ冷静且つ適切な操作は出来ない。それは何より恐怖感とともにドキドキしてしまう精神状態では正しい操作は望めないからだ。ところがこいつは止まれる!! 重量が重ければ慣性力も比例して大きくなるため、走行スピードには注意が必要だが、プロライダー並みに必要とされるライダーのスキルをコイツ自身が補ってくれる。操作が「超」簡単なんだ。リアブレーキを思いっきり踏むことでアンチロック・ブレーキシステムが最適な減速を促し挙動は安定したまま。挙動が乱れないからフロントブレーキに集中でき、走行ライン修正が自在に出来るほど安定した制動が可能。もちろんアンチロックが介入するので不安定な挙動が最小限にとどめられるから、とにかく楽。今までライダー自身がしていたマシンコントロール作業を「10」としたら、コイツの場合ライダーの感覚的負荷は「5」くらいので、残りの「5」をバイクが勝手に制御してくれる。「ダートでのブレーキング」という、普通ならば一番コントロールが困難で、ライディング技術も必要とするシチュエーションが、あっけなく完了してしまう・・・怖くない。これだけハードに攻められる、もしくは攻める事は日常では滅多にないが、それだけのポテンシャルを持っている安心は心強い。
たとえば北海道など、地図やナビゲーションを頼りに入り込んだ道が未舗装だった場合、コイツは何の不安も抱く事は無いという事だ。通常のダート走行であればフロントブレーキに頼るだけで良い。フロントブレーキレバーに入力するだけで、前後ホイール回転スピードを感知し、入力に見合った適切な前後ブレーキ配分をマシンが行う。もちろんホイールロックも挙動の乱れも無く・・・素晴らしい!!

左:安定感抜群のオフロード 右:リアサスペンションは簡単調整

走る事

TCSの恩恵で、・・・最初はビッグオフロードマシンとしての楽しみが奪われた気分だった。それは安定したリアタイヤのグリップ力が生み出すトラクション。アクセル全開でも殆ど挙動が乱れず何の不安も無く加速していってしまうので、神経をすり減らすようなコントロールをライダーに要求しない。本当は思いっきり振り回して楽しもうとしたのだが・・・要するにかなりの悪条件であってもライダーの疲れを軽減してくれる懐の広いオーラを持ち合わせているということ。何せ、0発進でフル加速しようとエンジン回転を上げ、一気にクラッチミーとしても一瞬のホイールスピンだけで、後はバイク側が適切なエンジンパワーに制御してスムーズに加速していってしまう。路面のギャップや轍、穴など、ダートに良くあるアンジュレーションも不安なく往なしてしまうほど完璧制御に近い。
ライダーの疲労軽減を目的とした制御は、充分なパフォーマンスとして実感できた。レース現場で要求された技術をストリートへ転用することで、こんなにも恩恵を受けられるとは恐れ入った。が、その反面個人的には物足りなさも感じたのも事実。そんなとき何度かメインスイッチをON、OFFしていると、液晶パネルメーターが全点灯となる一瞬、「TCS-OFF」の文字が。ん? きっと何処かに隠れキャラがあるはず・・・。見つけた♪停車中、メーターパネル横にあるスイッチを長押しすると、見事TCS-OFF モードに ! まるでゲームの「隠れアイテム」を見つけたような瞬間だった。YAMAHAの開発陣は、こんな「お楽しみ」も忘れちゃいないんだ♪と、嬉しくなった。しかししかし、良い子は手を出さないように・・・コイツのフルパワーをオフロードで制御するには、それなりのスキルを必要とするのは間違いない事実だから。

左:Fast Editionの証 右:TopケースもOK

そして行きたくなるのは北海道

コイツと過ごしていると、何度も浮かんでくるのは北海道。行く先々で見つけたダートに踏み入れ、ちょっとした冒険気分を味わってみたい! そう感じさせる。普通のロードバイクじゃあり得ないが、わざとダートに足を踏み入れたくなる。事実、80km~100km/h 程度で走るフラットダートは快適そのもの♪だったし、ダートで快適ならば、少々荒れ気味のアスファルトなんて全くものともしない頼もしさ。ガソリンタンク容量も充分(23L)なので、安心の航続距離が期待できる。レプリカ、スーパースポーツ、ネイキッド、オフロード、いろいろモーターサイクルを渡り歩いた末に行き着くカテゴリー「アドベンチャー」。コイツと10代の頃に描いた冒険の旅に出てみたいと真剣に思った。

注目ポイント

  • 思ったより足付き性は良い。オプションのシートにも期待。
  • ブレーキの制御は感動的。(過信は禁物だが)
  • サスペンション ストロークが大きく、どんなスピード域でも快適性◎
  • タフな駆動系 ◎
  • パイプハンドルなので、ハンドルポジション調整が可能◎ 
  • ヨーロッパで販売されているオプションパーツが Y’s GEAR から発売予定
  • 2人乗りでの安定性はGood ! 特にタンデムライダーのシートは高評価
  • Fast Edition は、サイドボックス標準装備◎ 防水性&クオリティ◎