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難波恭司のズバッとインプレッション2008 / YZF-R6

スーパースポーツの真骨頂

挑戦的な顔
日常的な乗り味を堪能したら、もちろんサーキットで「解き放たれた野獣」パワーを確認しなきゃダメだね。まだ寒い時期でもあり、今回はタイヤウォーマーを持ち込んでテストした。
空気圧は、冷感時に2.0hPa。標準より低めだが、タイヤウォーマーで暖めると標準値に近くなる。逆に標準値のまま走り始めると、タイヤ内の空気が温度上昇により膨張し、場合によっては高くなりすぎてタイヤの接地性が悪くなることがある。もちろんコースや気象条件にもよるので、適正値を探す必要があるのだが…。
コースインして始めに感じたのは、リーンアングルに対してステアリング舵角が強く付く傾向だったこと。これは空気圧が大きく影響するので、フロントの空気圧を標準値まで上げた。すると幾らか良くなったが、もうちょっと足りない気もしたので、更に追加。最終的に温まった状態で2.8hPaだった。
採用されているOEMタイヤの特性もあるが、ストリートでの軽快な回頭性はタイヤの恩恵が大きいようだ。そしてその特性は空気圧で変化しやすいので、R6のハンドリングを楽しむならば、面倒がらずに定期的なチェックをするべきだね。そして好みを探る。重要事項のひとつだ。
さて肝心のエンジン。YCC-Iの効果は如何に?'07 YZF-R1では、10,500rpmで吸気系から奏でられるエンジン音が切り替わり、YCC-Iが作動したことを体感できるが、R6は?
やや高めのギアでコーナーを立ち上がりスロットル全開♪高まる回転数に応じてパワーが盛り上がってくる…エンジン音も徐々に高揚し、タコメーターの針はトルクピークの10,500rpmを過ぎて生き生きとしてきたが、R1のようにYCC-Iが切り替わる急激な音の変化は感じられない。ただし、明らかに中速回転域での加速力は高まっており、ストリートで感じていたスロットルの反応は、サーキットでの力強さとして体感できる。これこそがYCC-Iの最大の特徴なのだが…はて?いつ切り替わっている?
今度はキチンとコーナーに合わせたギアで走ってみる。ひときわ高いエキゾーストサウンドは「その気」を誘う。そしてタイヤのグリップが安定してきたところでワイドオープン。甲高くもショートエキゾースト独特の篭るようなサウンドがピークパワー付近に達したときだった!タコメーターの針が14000rpm付近に差し掛かったとき、更に暴力的なサウンドに切り替わり一気にレブリミットに達してしまった。「うへっ…こいつこんなに回るの。」
中速域からピークへ向けて二次曲線的な盛り上がりを見せるのはR6の特徴。しかも慣れてくれば先に触れたクイックなハンドリングの効果で、サーキットならば使い切れそうな気にもなる。これが600クラスであるメリットだろう。R1じゃ使いこなせる人は限られるからね。しかし切り替わりがピークパワー付近というのには驚いた。本当にサーキットじゃないと入れない領域だ…。
サーキットが似合うシェイプ

そういうことか !

レーシングエンジンでも求められるのは加速力。限られた距離の中で効率良く加速させることが要求されるが、これはエンジンのピークパワーではない。エンジン回転が上昇していく過程で、どれだけのトルクを発揮できているか?が、実際の加速力となる。
これで分かったと思うが、加速性能はピークパワーだけじゃなく中速域でのトルクが重要であるということ。'08 YZF-R6が求めたのは、高回転型ハイパワーを求めたときに不足する中速域でのトルクをYCC-Iで補い、全域でのパワー特性を最大限引き出しすことに成功しているということなのだ。
未来的なデザインはどのアクグルでも素敵

弱点を幾つか…

以前から思っていたが、こいつの場合苦手とする部分が幾つかある。市街地で体感したが、Uターンは困難を極める。これはプロライダーとして感じたので、ライディングに自信のない人は充分注意するように…理由はハンドルを左右どちらかに一杯切ってみると分かるが、手首の余裕が殆どなくなってしまい、コントロールが難しいのだ。郊外のワインディングなど、もっと狭い道路でUターンする際には特に注意するべきだ。
そしてもうひとつ、クラッチレバーの半クラッチ領域が少なく、唐突に繋がりやすい。これはサーキットでは逆に嬉しいのだが、低速で細かい操作を使用とするには向かない。この2点だけでもUターンは難しいことが理解できるだろう。無理をする必要はない、また無理をして「ゴロン」といってしまうリスクを回避するには、素直に降りてターンさせるべきだろう。的確な状況判断でカッコよくターンすれば良いだけ。全然恥ずかしくないはずだから。
最後にひとつ、決して足付き性は良くない。ストリートでの扱いやすいエンジン特性やハンドリングは加わってはいるものの、ここだけはこれはスタイル、そしてサーキットで最高のパフォーマンスを約束している代償だと思うしかない。弱点を知りつつ、こいつのポテンシャルを堪能してもらいたい。