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寄り道してシラス丼を食べにいく

自問自答しながら現車確認に向かう

翌日出品者に連絡を取った。落札出来て喜んでいるものの、出品自体に気がついたのが終了10分前で質問する間がなかったこと、落札後で申し訳ないが一度実物を見たいことなどを伝えると、では一度お越し下さい、との返信があった。ダメならダメでキャンセル料を払って許してもらおう、それにせっかくなのでこの出品者に取材させて貰ってネタにしよう、などと考えながら、数日後出品場所の横浜に向かった。

湘南新宿ラインで一路横浜へ。
地図を頼りにお宅に伺うと、かわいい奥さんと二人、ガレージで待っていてくれた出品者のKさんは、福山雅治と押尾学を足して2で割った様なかなりなイケメンだった。しかも割と最近まで僕の家のご近所に住まわれていたのが判明。自宅前に路駐していたバイクを盗まれてしまうなどのことがあって、ガレージ付きのここに引っ越してきたそうだ。このガレージが最初「ショップか?」と思ったほどの充実ぶりで、FZ750そっちのけであちこち眺め回してしまったほどだ。羨ましいったらない。

脱線してばかりではしょうがないのでようやくFZ750を見せて頂く。樹脂パーツの経年劣化はかなり来ているし、各部の動きの微妙。ブレーキやマフラーなどノンオリジナルな部分もある。しかし年式を考えれば。う〜ん…まぁこんなもんだよね、という状態。もとより保証付きのバイクを買う訳ではないし、どちらにしても一通り整備はするつもりなので、基幹部分に致命的な損傷がないことだけ確認してお譲り頂くことが決定した。
Kさんのご厚意で支払い前に書類一式を頂いて帰る。その点はこちらも誠実に、保険加入や登録などの手続きは支払い完了まで待ってナンバーを取得することとした。予備検付きだから書類のみで手続きが済むのだ。

せっかくなのでKさんに色々質問してみる。オークションへの出品は現在ガレージの整理をしているために一部のバイクを処分しているからだそうだ。「でもスペースが出来るとまた別のバイクを買い込んじゃったりするんですよね。」とKさん。それは良く分かる気がします。
また知り合いのバイクを預かったり代理で出品したりすることも多い。設備があるのをいいことに、友人たちが手に入れたバイクを直接Kさんのガレージに配達指定してくることもあるそうだ。それはちょっと…羨ましいですね、Kさんの友人が(笑)。

ところで以前から気になっていたことを1つ質問してみた。
オークションの出品には「代理出品です」と書かれているものが多い。僕はあれは自分が直接の出品者でないとすることで、何かトラブルが出た際に「知らなかった」と責任を回避するための言い訳だ、と解釈しているのだが、実際友人の代理で出品しているKさんはその点どう考えているのだろうか?
尋ねてみると、う〜ん、としばらく考え、特に意味はないんじゃないですかねぇ、との答えが。僕の考えを述べると、なるほど確かにそういう人もいるかもしれませんが、それより意外にこういった手続きを面倒に思う人が多いんですよ。だから慣れている人がいると頼むっていうことがあるんじゃないでしょうか、実際私の友人にもそういう人がいますし、とのこと。 逆に言いがかりをつけるクレーマー落札者もいるそうなので、結局はお互い人柄と信頼関係ってことなんでしょうけどね。

ある意味ネタ満載な取材車となった

こうして何のご縁かやってきたFZ750だったが、案の定大小色々なトラブルを抱えていた。
まずはステアリング。これは受け取って走り出した瞬間に転びそうになったのだが、ステアリングを支持するベアリングのボールレースに傷か段付き摩耗が出来ていて、スムーズにハンドルが動かない。とどうなるかと云うと極端な話真っ直ぐ走らないのだ。何とか無事に帰り着いてからハンドルを動かして調べてみると、カクンと止まってしまうところがある。しかもトップブリッジを固定するナットが異常にきつく締められていて、なおさら動きを阻害していた模様。
小手先の対応でしかないがステムナットを緩めてトップブリッジ下のロックナットを少しだけ緩めることで取り敢えず引っかかりを無くした。但しこれだとブレーキング時にフロント回りがガタガタいう有り様なので、早い時期にボールレースの打ち替えを行なう予定だ。
次がブレーキ回り。ブレーキはノーマルの対向2ポットキャリパーではなく、4ポットの物に換えられていた。Kさんに尋ねると入手した時からこれがついていたので何用か分からないとのこと。色々調べてみるとどうやらTZR250やR1-Zなどと同サイズの様だ。ヤマハはこの辺りの寸法が統一されていて互換性がかなりあると昔聞いた事がある。
換えられていても正常ならば良いが、問題は走っているとフロントブレーキレバーの握り代が変化することだった。これは今まで経験が無く原因不明。ブレーキフルードの劣化、ピストンの戻りが悪く引き摺りが生じていて熱膨張している、マスターシリンダーとのマッチングの悪さ等々が考えられる。パッドももう限界なので、どちらにしてもオーバーホール必至だ。
リアブレーキはオリジナルだったがこちらは鳴きがひどい。鳴き止めのプレートが入っていないかも知れないのでこれも要確認。
サスペンションはスポーツバイクとしては当然「終わっている」レベル。フロントは分解・清掃してオイルを交換すれば、現在のスカスカな状態はある程度解消出来るだろう。問題はリアでこれは交換する以外にない。しかし相当高そうな気が…。
フューエルタンクは中を覗くと全体に薄く錆が出ている。多分空のまま長らく放置されていたのだろう、一度クリーナーで錆び取りをする必要がありそうだ。
タイヤはフロントが新品でリアが4分山。角減りしていてハンドリングを悪さに輪をかけている。これも交換だろう。
エンジンはさほど問題がない様だ。但しスタータークラッチが滑り気味なのはどうやら有名な弱点らしい。
マフラーも非オリジナルで、KERKERの4in1がついている。そしてこれがどうやら最悪。アクセルを開けて行くと3,000rpmくらいで露骨な回転の引っかかりがある。それを過ぎると綺麗に回るのだが、どうもFZ750は4in1マフラーだと低速域に問題が出るらしい。ノーマルに戻したいのだが手に入るかどうか。差し当たってはキャブレターの同調などで対処することになるだろう。
なお排気音は割と低音寄りで思ったよりはうるさくない。それよりエンジンのメカノイズが意外にゴリゴリと大きく驚いた。GENESISエンジンは当時の他メーカーと比較してずっと繊細なイメージがあったからだ。これからしたら現代のFZ1なんか、比喩でも何でもなく本当にモーターの様に緻密で綺麗な回り方なんだもの。それだけ工作精度がアップしていると云うことなのだろう。
その他では各部のゴムパーツが劣化し痩せているので、カウルがガタガタうるさかったり外れそうになってポロさを醸し出している。こうした消耗パーツはすこしずつ交換して行くしか手がない。
予想通りの状態だが、そう考えると改めて驚くのがこれでこのまま予備検査を通っている、ということだ。ちょっと信じられない気はするが、法定点検ポイントと実際の整備の重要ポイントは違うということだ。Kさんが「各部点検整備・各油脂類の交換等は必ず行ってください。」という意味が誠に良くわかる。

しかしこうした多くのトラブルによる好調/不調の差以上に感じたのは、22年の歳月の間に飛躍的に進歩したテクノロジーだった。ああ、今のバイクってあんなにまで進化していたんだ、とかつての憧れのマシンに乗りながらその末裔、FZ1の乗り易さを思い『頭の中の「冷静に判断」するリミッター』の機能が一部戻ってくるのを感じたが、このあたりの続きはまたいずれ書くかも知れない。

最後に今回の貴重な経験より、これからもう一度バイクに乗ってみようと考えているリターンライダーの方々、及び某氏にご注進。
『頭の中の「冷静に判断」するリミッター』の機能が最初からちゃんと稼働しているのならば、一時のノスタルジーにかられて古いバイクを買ったりせず、頑張って現代の新車を買ってみて下さい。技術の進歩は素晴らしい。それは乗ってみればホント良くわかることで、全く別次元の楽しさを知ることができると思いますよ。
格好はいいんだけどな!