![]() ダンパーも最弱にする。さて次はダンパーだ。減衰器とも呼ばれるダンパーは、その名の通りストロークするスプリングの動きを減衰させる。ダンパーが無いとスプリングは伸びたり縮んだりを繰り返し、車体はボヨンボヨンと躍ってしまうわけだ。
FZ1の場合、フロントにMotoGPマシンYZR-M1と同様の左右独立分担減衰力発生方式ダンパーを採用している。右が伸側、左が圧側で、イニシャルアジャスターの真ん中にあるダイヤルをマイナスドライバーで回して調整する。左に回すとダンパー効果が弱まる。時計回りに一番締め込んだ状態から、26ノッチ戻したところが最弱だ。
リアはダンパーユニット下部にあるアジャスターを、同じくマイナスドライバーで回して調整する。こちらも左回しだ。時計回りに一番締め込んだ状態から、12ノッチ戻したところが最弱となる。
スタートすると最初の路地の左折でちょっと妙な感じを覚えた。良く判らなかったが次の交差点の右折では、フロントがやや落ち着かなくなっているのに気づいた。変更前はスーッと一定に曲がったのが、曲がっている最中にも微妙に細かく変化している。ダンパーを最弱としたことで動きを抑えられていたフロントサスペンションがより動きやすくなり、チョコマカと姿勢の変化が起きている様だ。
街中を流して走ってみると、今度は衝撃吸収にある程度の効果が現れている事が分かった。舗装の段差を通過しても突き上げてくる感触が以前より少なくなっている。リアも轍や路面のうねりに追随して跳ね上がる感じが減った。当初の目的に近い感じだ。ギャップ通過後にお釣りが少し来るのは仕方があるまい。
もっともプリロードもダンパーも、最弱だともっとフワフワクニャクニャ、極端に変化が現れるのかと思っていたが、実際はそうでもなかった。調整幅は割と限定されていてその中を細かく調整する様にしている感じだ。ま、当たり前と云えば当たり前の話ですが。
![]() ![]() 左:フロントの調整。FZ1の場合右フォークは伸び側となる。 右:汚れててすいません、リアのアジャスターはここ。
都内の悪路アタック!最初に掲げた写真を改めてご覧頂けるだろうか。これは現在建設中の首都高速・中央環状線の工事現場、新宿にほど近い山手通りを撮影したものだ。工事の進行に伴って仮設の道路は右左にうねり、路面は掘ったり埋めたりの繰り返しで継ぎはぎ。大きな鋼板(覆工板)で蓋されている部分も、工事車両の出入りで土や砂が浮いている部分もあるという、はっきり云ってかなりの悪路となっている。どちらかと云えばWR250Fで走りたいくらいの道だ。
今回サスペンション設定を全て最弱にしたFZ1に課したテストコースは、このR254・池袋の熊野町交差点からR20・新宿の初台交差点までの山手通り。ゴトゴトの路面をどれだけ衝撃吸収をしつつ、ハンドリングの安定性を保てるかだ。
夜間の空いている時間を狙って走ってみると、まるで昔の正丸峠みたい(例えが古いな)なちょっとしたワインディングロードになっていて、ある意味逆に面白い。覆工板に覆われた区間、橋の架け替えで仮橋への進路変更があるシケインの様な区間、地上の工事部分の間を縫う様に右に左にと曲がりくねった仮設道、オフロードかよ、と思うほど舗装パッチが連なり路面がボッコボコの区間など、サーキットとは対極にあるこの道で、リセッティングされたFZ1はそこそこバランスを崩さず、快適かつ"楽しく"駆け抜けた。
特に印象に残ったのはJR東中野駅を過ぎるあたり。ここは
FZ1らしくスパッと通過するにはブレーキングしながら舗装の継ぎ目、路面のうねり、横断歩道のペイント、覆工板を越え、そのまま駅の先で右に切り返すことになり、μ変動や荷重の抜けなどによって標準設定の締まり気味の脚廻りではバタついてしまうので、カッコ良く駆け抜けるのはかなり怖い。
一方リセッティングされたFZ1では、柔らかめの脚廻りで前後の姿勢変動こそ大きいものの、サスがより動いてくれて段差通過時の衝撃を吸収し、うねりによる抜重にもタイヤが路面に追従してくれる感じになる。絶対的な限界値は低いが逆にふわつきがうまく不安要素を包んでくれている、とでも云えば良いだろうか。ゴツゴツ突き上げられる感覚がないだけでもストレスは相当違うのだ。
![]() ![]() 左:手前の路面が覆工板となっている。下では工事が続いているわけだ。 右:工事している場所を避けながら道がうねる。
![]() ![]() 左:反対側なのだがこれが東中野駅前の状況。 右:この信号の先が初台交差点。
もうちょっと調整は必要だけれどそういうわけでオール最弱設定は少なくともFZ1では都内を普通に走る限りそれほど極端に変ではなく、かえってそれなりに実用的で快適な乗り心地だと云って良いと思う。
ただそれなりの速度でカーブを曲がったりするとさすがにフロントの落ち着かなさが気になるので、例えばフロントの伸側のみもう少しダンピングを効かせるとか、さらに継続して試してみたい。
雑誌などでは1mm、1ノッチの微妙な変化を解説しているのにもかかわらず「いきなり全部最弱」というのは如何にも乱暴な話なのだが、おバカ企画のひとつとしてご容赦頂きたい。
いずれにしろ電子化された昨今のモーターサイクルでは、オーナーが自由にあれこれいじれるのはサスペンションくらいなのだから、調整できる部分を駆使して愛車の違う一面を探してみると楽しいはずだ。
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