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街でFZ1に乗ってみる
九州でのYZF-R6の印象があまりにインパクトがあり、全く定まらなくなってしまった取材車選び。悩んでいたのだったが別件での取材で広報車両を借りることとなり、その伴走車として同じく広報車でストリートならこれだろう、と思えるFZ1を貸して頂けることとなった。
「それならばR6を」と実は喉元まで出かかったが、今の精神状態では多分どこで乗ったって楽しいに決まっている、そこまで自分を追い込んでどうする?と自重したのであった。
(弓削 時保:2007.5.25)
慌てて撮ったので背景がゴチャゴチャしているのはご容赦。

流麗さとゴツさが融合したフォルム

そういう訳で届いた広報用のFZ1、カラーリングは赤メタ(正式にはディープレッドメタリックK)で、これは2006年モデルである。ブラックと紺メタの今年モデルのカラーリングも渋くて良いが、個人的にはR1やMT-01、そしてR6…などにも使われているこの赤メタは好きだ(なお以降'06モデルの広報車に対する話で、'07モデルでは微妙に違いがある様だ。改めて確認するつもりなのでその点ご留意頂きたい)。
さっそく練習がてら周辺をそろそろと走ってみることにする。エンジンを掛けるとさすがリッタースポーツ、かなり迫力のあるアイドリング音だ。走行距離は2,000km足らずとまだまだ慣らし運転に近いレベルであるのも影響しているのだと思うが、むき出しのエンジンブロックからの「ヒュルヒュルヒュル…」という唸りは凄みがあって、ストリートバイクとしてはかえって好ましいと思う。
足付き性の印象は変わらずだが、つま先ツンツン状態ほどではないので、バイクに跨がりミラーを調整したりとあれこれ試しているうちに慣れてしまった。深呼吸を1つしていよいよ発進する。

走り出してみるとくねくね曲がったり止まったりの一般道では、先日のサーキット以上にリラックスしたポジションである事が好ましく感じられる。前傾姿勢ではなく普通に身体が起きた状態なので、視界も良い。
ハンドルは幅があって絞り角が少ないタイプ。ちょっとオフロード車っぽくもあるが割と上からバーンと押さえた感じにもできるので、交差点を曲がる際にややリーンアウト気味な操作が可能でなかなか新鮮な感じである。
眼前に広がるステアリング廻りの景色は、R1の様なクリップオンハンドルのそれと比べるとちょっと間延びした感じだ。個人的にはバーを左右3cmくらい切り詰めたら格好良いと思う。それでもR1より押さえは遥かに利くはずだし…まぁ見た目重視か使い勝手重視か、くらいのレベル差なのだけれども。
幅と云えばステーが長くてかなり張り出した様に感じるバックミラーも同様で、信号待ちのすり抜けなどで引っ掛けそうで躊躇する。ま、そういう大人げない走りはするなってことかも。
左:落ち着きのある雰囲気を醸し出す赤。いい色だ。右:割とこう、幅広な感じがあるステアリング廻り。

多分普通は書かないであろう街中インプレ

たとえば幹線道路をクルマの流れに乗って走らせようとしたとする。FZ1はリッターバイクらしく普通に流れに先行できるのだが、エンジンが本来の鋭さを現すのは6,000rpmを越えてから。しかしシグナルスタートしてローギアのままですらこの回転で70km/hに達してしまう。そして「ここからが本番!」とばかりアクセルのピックアップは良くなっていくのだが、その誘惑に負けて更にアクセルを開けると速度は3ケタに届いてしまう。気持ちはそりゃあいいけれど、すぐに白いオートバイに「もしもし?」と呼び止められたり(笑)しそうで、これでは免許がいくらあっても足りやしない。
そういうわけで現実的に市街地を安全に「ジェントルに」流そうとすると、3〜4速で2,000〜5,000rpmの回転域という、もったいないけれども本当にオイシくなる手前の部分を多用することになるわけだ。こんなところのインプレは誰も書かないでしょ?でも僕を含め殆どの普通のユーザは結局「この部分」を常用域として使い続けるはず。だからコネタ的周辺情報を主軸に扱うつもりの「プレまぐ」として紹介してみたい。
で、この回転域でのFZ1は想像している以上に紳士的だ。試しにアクセルを一気にゴバッと開けてみても、キャブの様にドカンと唐突にパワーは出てくるわけではなく、スルスルと回転が上がっていってスムーズに力が盛り上がってくる感じだ。これはインジェクションにより燃料マネジメントの成果なのではなかろうか。
だから街中では4,000rpmくらいでポーンポーンと高めのギアにつないでいくと、穏やかなまんま、スルスルとまるでモーターの様なフラットな加速でクルマの流れにラク〜に先行できる。何と言うかその…凄い力を持っているのにそれを努めて抑え、ひけらかさない感じ、かな?それがまた気持ち良いのだ。
抑え気味でもそこから先にある凄さはマシン全体から予感でき、しかもラフなアクセルワークにも従順に対応してくれるので扱いやすく充分速い。普段使いと非日常性が程良くバランスして「行っちゃう?やめとく?」とイタズラ心をくすぐられる様な、そんな楽しさを感じさせてくれたのだった。
云うまでもなく、街中でそのイタズラ心をくすぐられ過ぎると、白いオートバイとお友達になる可能性大なので、くれぐれも控えめに…(->自分)。

細かいところにこだわって眺めてみる。

1時間ほど近所を流して駐輪場に戻り、バイクを停めてもう一度細部をじっくり眺める。自分のFZ1ではないけれどバイクに見惚れるナルシスティックなこの感じも、久々で楽しい。
独断と偏見で各部を論評してみると…
  1. ラバーマウントされ振動吸収が図られたステップ廻りは、ペダル類がクロムメッキ仕上げのスチール製で、機能的にはむろん必要十分なのだけれどももうちょっと頑張って欲しい数少ない部分だ。
  2. テール廻りの造形。保安基準やフェンダー機能としての制約はあるのだろうが、レーサーに無理して保安部品つけましたが何か?みたいな潔さ満点のYZF-R6と比べると、ややデザイン的に未消化な気がする。ごく普通の造作だった先代のFZS1000からしてこれは新しいトライなのだと思うのだが…。例えばフェンダーはスイングアームに配して、リアカウル直下にウインカーとナンバーを持ってくるとかしたらどうだろう?
    ※と思ったら考える事は同じみたいで、マジカルレーシングからまさにそういうフェンダーレスキットが出ているのを発見した。これは良いなぁ(^^)。
  3. マフラーは茶筒型サイレンサーではない独特の形。エンドの処理などやや凝り過ぎている気がしなくもないが仕上げはとても綺麗で、ストリートバイクらしさが出ていると思う。
  4. メインスタンドがある。軽量化を突き進めるR1とかでは考えられない装備だが、これがあるとないとでは全然違う!さっすがストリートバイク。
  5. グラブバーの存在もやはりあると重宝する。荷物を載せるにしろタンデム乗車するにしろ、安心できるのだ何かと。
 僕個人の趣味的な不満はあるものの、アフターパーツに交換するなど自分で改善できる範囲の事だし、逆にそういう「いじる」楽しみが残っているとも云えよう。あれこれやってみたい事が見えてくるかの様だ。
試乗会以来R6に取り憑かれた様になっていたが、一目惚れしてしまうタイプのYZF-R6と違って、FZ1は付き合っていくうちにゆっくり好きになっていくタイプなんじゃないだろうか、乗っているうちに「やっぱこれイイわ!」と思う様になってきている気がする。
 という訳でもうしばらく試乗させて頂き、また気づいた事を書いていこうと思います。
左:ラバーマウントされたプレートとシフトペダル。右:グッと飛び出したナンバーとウインカー。
左:凝った造形、キツネの尻尾みたい。右:メインスタンドは重宝。