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presto_logo.jpgYZF-R1 / YZF-R1M Special HomePage 2017

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High tech armed Pure Sport
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 YZF-R1/ YZF-R1Mの持つ、さまざまな機能とポテンシャルを紹介します。

第1回 YZF-R1 / YZF-R1Mに搭載される電子デバイスについて(その1)

YZF-R1/YZF-R1Mに搭載された電子デバイスは多岐にわたります。今回はまず市販二輪車では世界初となる3次元的な車両の動きを検出する6軸「IMU」と、連携してさらに高度な制御を行なう要である「ECU」について紹介します。


technology_photo01.jpg古くは点火系のイグニッションシステムから始まり、電子制御燃料噴射システム(FI)、アンチロックブレーキシステム(ABS)、デジタル化されたメーターなど、今やモーターサイクルは電子制御技術の固まりとなりつつあります。特に近年のモーターサイクルにおけるレーシングシーン、MotoGPの世界で急激な進歩を遂げているのが、車体の姿勢や速度から最適な推進力を導き出すトラクションコントロールシステムなど包括的な制御系で、それがついに市販車にまで搭載されました。それが2015年モデルYZF-R1 / YZF-R1Mです。
 先にも述べた通り、機能を個々に制御したり一部の機能での連携はこれまでも見られましたが、2015年モデルYZF-R1 / YZF-R1Mのそれはまさに統合された制御系…もはやマシンの全身に張り巡らされた「神経」となっている感があります。
 そしてその制御系を、スマートフォンやタブレットを用いてより積極的に触れられる様になったことも、大きなエポックと言うべき点です。レーシングマシンを除き従来の電子制御系は、基本的に閉じた仕組みでありライダーの介入は予め定められたモードの選択のみが殆どだったからです。

 今回取り上げる「IMU」とは「Inertial Measurement Unit」、慣性計測装置と訳されるこの装置は、角速度センサーと加速度センサーにより構成された3次元的な車両の動きを検出する装置です。
 内蔵されるセンサーは2種類で、1つ目の角速度センサー(ジャイロセンサー)は、走行中の車両のマシンの左右を軸として上下に回転する「ピッチ」、前後を回転軸として左右に回転(傾斜)する「ロール」、上下を回転軸として地面に対し水平に回転する「ヨー」の各方向の動きを検出し、2つ目の加速度センサー(Gセンサー)は「前後」「上下」「左右」3方向の加速度を検出、それぞれ3つの軸、合計6軸に対する変位を捉えることができます。

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technology_photo02.jpg3つ並んだ四角いパーツがムラタのセンサーユニット この2種類のセンサーは、センサー技術で著名な村田製作所製の最新ジャイロセンサー一体型加速度センサーで、小型化と高信頼性を実現しているセンサーのようです。右の写真はセンサーを載せた基板で、3つ並んだ四角い部品がセンサーです。拡大してみるとレーザーマーキングで「SCC2130-DXX(XXは読めず)」と刻まれており、「SCC2130」でネット検索してみたところ村田製作所のリリースとデータシートに辿り着きました。XX部分のサフィックスが異なるようなので同じ物ではなく同系のカスタム品かも知れませんが、性能の一端を知ることができるかと思います。

ニュースリリース
「第二世代超高安定性MEMSジャイロコンボセンサ(ジャイロセンサ一体型加速度センサ) の量産開始」
http://www.murata.com/ja-jp/about/newsroom/news/product/sensor/2014/1110
Data Sheet SCC2130-D08
http://www.murata.com/~/media/webrenewal/products/sensor/gyro/scc2000/scc2130-d08%20datasheet%2082177500b0.ashx?la=en


 こうして得られた信号は、さらに車速センサーからの信号とともにIMUに内蔵される32bit浮動小数点演算機能搭載のCPUに送られ演算されます。演算速度は毎秒125回、1演算あたりにかかる時間は8ミリ秒と高速であり、逆に云えばこれだけのスピードがなければ間に合わないほどの情報処理が行なわれているということになります。
 その計算ロジックは、ヤマハ発動機が独自に開発した二輪車運動モデルに基づいたセンサハイブリッド推定技術によって、高精度なバンク角検出、さらには後輪の横滑り検出を可能としており、後述のSCS(スライドコントロールシステム)によるコーナリングコントロールを実現しています。ちなみにこの技術は2012年のMotoGPでYZR-M1に導入された技術を源流としており、もちろん市販二輪車で初の搭載となるものです。
 さらにIMUの演算で得られた走行中の情報は、各電子デバイスを結ぶCAN通信(Controller Area Network)により、エンジン、ブレーキ、サスペンションなどに設定されたセンサーからの情報とともにECU(エンジンコントロールユニット)に送られます。
 ECUにはこれらの情報を元にレース実戦における競争力を高めるため、以下の5種の制御システムを搭載し、相互に運動してハイポテンシャルを効率よく引き出し、ライダーの運転操作集中力を支援するものとなっています。

  • 新型TCS(トラクションコントロールシステム)
    加速時に後輪タイヤの駆動力を効率よく引き出し、IMUで推定したバンク角の情報から走行状況に応じてTCS介入度を最適に補正します。
  • SCS(スライドコントロールシステム)
    IMUで推定するリヤタイヤの横滑り情報を燃料噴射量(INJ)と点火時期(IGN)、さらにはスロットルバルブ開度(ETV)の各マップを補正することでエンジン出力に反映して出力を最適に補正しライダーのレースへの集中を支援。TCSとも連携しより滑らかな走行性に貢献します。2012年のMotoGPから導入され、市販二輪車では初搭載です。
  • LIF(リフトコントロールシステム)
    IMUの車両姿勢情報などから加速時の前輪リフト傾向を推定し最適エンジン出力に補正、発進・加速時のウィリー等によるタイムロスを抑止し、ライダーの運転操作を支援します。
  • LCS(ローンチコントロールシステム)
    レース時のグリッドスタートでの、滑らかで機敏なスタートを支援するシステムです。LCSによってアクセル全開でもエンジン回転数は約1万回転以下に抑えられ、TCS・LIFとの連携で最適エンジン出力に補正されるので、ライダーはクラッチミート操作と車体コントロールに集中でき、スタート時のストレスが低減されます。
  • QSS(クイックシフトシステム)
    アクセル全開でも滑らかでスピーディなシフトアップ操作を支援します。シフトレバーの動きをロッドに設けたスイッチが検知、ECU演算によりエンジン出力を補正してドッグクラッチに噛合っているギアの駆動トルクを瞬間的にキャンセル、変速を促進するシステムです。走行環境やライダーの好みにあわせてモードの選択が可能です。

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